ニュースレター

2020-10-22
PTOとLeaveのお話
新型コロナウィルスの感染拡大により、連邦・州・市レベルでのSick Leave関連の法律への改正が頻発しています。このニュースレターをご覧頂いている皆様もFFCRA(The Families First Coronavirus Response Act)についてはお聞きになったことがあると思いますし、従業員への通知をされた雇用主側の方も、従業員として通知を受け取られた側の方もいらっしゃると思います。

過去のニュースレター記事でも何度かお伝えしましたが、アメリカでは連邦と地方政府で法律の異なる例が多々あります。つい先日も、NY市でEarned Safe and Sick Time Act(通称:NYC ESSTA)を改正する法律が制定し、9月30日に施行しました。詳しくは弊社NY地域担当の成瀬がYouTube動画(https://www.youtube.com/user/Actusconsulting/videos)で解説しておりますので、ここでは詳しい説明を省きますが、同法は今年4月に施行されたNY州の有給病欠法との整合性を図るために、NY市でも、急遽、施行される運びになりました。既にご対応されている企業様もあるかと思いますが、同法について雇用主として注意すべき点を簡単にご紹介させて頂きます。

1. 従業員に対して改定内容の通知を10月30日までに行うこと
2. 雇用主は従業員へ給与を支給する度に
A. Pay Period期間中に獲得したSick Leave時間
B. Pay Period期間中に使用したSick Leave時間
C. Sick Leave時間累計の残高
を給与明細または別紙で通知すること

です。従業員数や前年度の純利益によってルールが異なりますし、不履行の場合の罰則規定も設けられております。押さえておくべき法律ですので、詳しくは弊社YouTube動画をご確認下さい。

さて、今もSick Leaveの話をさせて頂きましたが、このようにLeaveという言葉を聞くと、雇用主・従業員など立場を問わず誰もがSick Leaveを一番に思い浮かべるかと思います。新型コロナウィルス感染状況が拡大している昨今の状況から、従業員を守るためにも法律遵守の為にも特に注意が必要なLeaveであることに間違いはありませんが、Leaveの種類はSick Leaveのみではありません。また、PTOとLeaveが混同されてしまうこともありますので、今回はPTO(有給休暇)とLeaveについて少しご紹介をさせて頂きたいと思います。

「PTOは従業員に与えなければならない?」

という質問をよく頂きます。日本では付与が義務付けられており、しかも取得日数まで国からの指示があるようですが、アメリカではPTOを従業員に「与えなければならない」というルールはありません。ですが、事実としてPTOを従業員に与えている企業はたくさん存在します。何故かというと、雇用主が従業員に対して与えている各種ベネフィットの中でも広く認知され、関心が高い内容の一つだからです。PTOを提供している企業が多いことから、PTOを従業員に与えなければならないという認識になっているのかもしれません。

PTO制度は雇用主にとっても従業員にとっても非常に重要で、この制度が充実していない企業では従業員の採用も維持も難しくなってしまうという統計も出ています。アメリカで従業員が雇用主に対して一番に求めるものはお給与というイメージがあるかもしれませんし、確かにお給与は大事な部分ではあるのですが、給与額よりもフレキシブルな勤務形態が選べる方法、つまりはPTO制度の充実を望む従業員もいます。

近年は企業側も他社との差別化を図る目的、あるいは企業カルチャーを従業員に示す目的で取得日数無制限のPTO制度を採用している企業もあります。このような取り組みからもわかるように、PTO制度の充実は従業員の採用・維持には必要なものです。その意味では、PTOは従業員に対して「与えなければならない」という認識は正解なのかもしれません。

一方でLeaveはどうでしょうか?冒頭にもご紹介させて頂いた通り、Leaveは法的拘束力も伴うものが大半です。例えば、

Voting Leave

アメリカ大統領選挙の投票が始まっていますが、従業員が選挙の為に早退したり、遅めの出社をされたりという状況があると思いますが、どのように対応されているでしょうか?勤務時間の都合から投票を行うことが出来ないという方に対して、このVoting Leaveが認められている州があります。内容も様々で最高で2時間まで許可されるとする州もあれReasonable/Sufficient Timeのように色々な解釈ができる表現の州もあります。Paid, Unpaidも州の規定により異なります。

Jury Duty Leave

陪審員として召喚された時に利用できるLeave制度です。陪審員としての義務を果たす期間中の最初の数日間のみ固定金額がpaidされたりunpaidだったり、従業員の給与がその間支払われるなど州により様々です。また、州内でも従業員数によってルールが異なることもあります。このLeaveを使用する際には雇用主が従業員に対して、陪審員として召喚されていることの証明の提出を求めることもできます。当然ではありますが、Leaveの申請や取得に対して会社が従業員に対して取得の妨害を行ったり、報復行為を行ってはいけません。

Bone Marrow and Organ Donor Leave

骨髄や臓器提供の為に必要な期間のLeaveを認める制度です。取得する場合には、就業開始から90日以上の勤務をしていることを条件にする州や、取得日数が7日だったり20日だったりとこれもまた州によって異なります。従業員数によってこの法律が適用されるか否かが異なる場合もあります。

その他にも
Bereavement Leave
Crime Victim Leave
Military Leave

など様々なLeaveが制定されています。「場合もある」「Paidだったり、Unpaidだったりする」のような表現でお気づきかと思いますが、ビジネスを行っている州の法律、従業員数、従業員の勤務年数、従業員の勤務時間数、Exempt / Non-Exempt ステータスの違いによってルールが異なります。上記のLeaveはNY州、CA州、IL州、TX州など皆様のお住まいの州でも適用対象となっているものが多くあります。何かとLeaveについての注目が集まっている時期です。従業員の健康・安全・働きやすさを守るためにも各州の法律を押さえておくことは重要なことです。この機会にハンドブック・ポリシーの見直しをされてはいかがでしょうか?

Actus Consulting Group, Inc.
Midwest-South Regional Sales Manager
Akihiro Yamada, SHRM-SCP