ニュースレター

2021-03-22
子供の習い事と大人の研修
「一年生になったら~♪ 一年生になったら~♪ ともだち100人できるかな♪」

  2021年も始まったばかりと思っていたら、早いものであと1週間で4月です。日本では毎年この時期になると、この懐かしい曲に触れる機会があります。桜が満開になる季節は、新しい生活やチャレンジに心を躍らせる方も多いのではないでしょうか?幼稚園児が小学生に、小学生が中学生に、中学生が高校生に、高校生が大学生に、大学生が社会人に、と変化の多い4月は新たな習い事や勉強に取り組む方が多いという調査結果も出ています。時期的に新しいことを始めるのに丁度良いという現実的な理由はもちろんあると思うのですが、桜の綺麗な花を眺めていると、色々な挑戦をしたくなる気持ちはとてもよくわかります。一方、アメリカでは、桜の木を目にする機会も少なく、季節感を感じないという方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり在米日系企業の中には4月に新年度となる企業があり、新たに駐在員の方が赴任される時期でもあります。と同時に、従業員研修の為の予算が新たに確保され、実際に研修を行う企業もあります。
習い事や研修を始められるだけでも素晴らしいことなのですが、それを実際に継続していくというのは本当に大変なことです。特に、子供の習い事。送り迎えも必要ですし、子供が習いたいと言い始めたのに、すぐに興味を失ってしまうこともあります。ですが、大人であれば、自分で受講すると決めた勉強や研修なので、自主性を持って、最後まで興味を失わずに、目的を達成するまでモチベーションを維持して、学び続けることができますよね。。。。。

と、言いたいところですが、本当にそうでしょうか?

従業員研修のプランニングを行っている雇用主やHR担当者からすると、「従業員の自主性」に任せたくなるかもしれませんが、従業員の勉強や研修に対してのモチベーションを保つことは大変な事です。考え方によっては、子供よりも難しいかもしれません。子供の「習い事あるある」でよく聞く、習い事中に寝てしまうというのは大人には流石にないと思いますが、、、大人であるからこそ注意すべき点もあります。そこで本日は、大人の学習過程においての注意点を大きく3つ、ご紹介させて頂きます。

➀学んだ内容を現実の世界でどう活かせるかを考えてしまう
子供の時は「楽しい」という感情で学習を継続することができますが、大人になると、学習/研修が現実の世界、つまりは社内での業務やキャリア形成において、どのように役立っていくのだろう?という疑問が自然に湧いてきます。楽しい学習であっても、あまりにも業務や今後のキャリアパスからかけ離れた勉強や研修内容であると興味を失ってしまうことがあります。「どう生かせるかを考えてしまう」と述べましたが、これはこの思考回路をどう使うかによってメリットにもデメリットにもなるということです。デメリットの面から述べましたが、間違いなくメリットもあり、勉強した内容が現実の世界で活かせると納得できれば、モチベーションの維持に繋がるという面もあります。例え、学習の過程が多少、きつくても勉強を乗り越えた後にどのような結果を望めるか、どのようなスキルや知識を得ることができるのか。この点を従業員が研修前によく理解しておくというこが非常に大事です。当たり前と思われるかもしれませんが、実はできてないことが多い点でもあります。

➁学んだ内容を他の従業員と共有する環境作り
せっかく学んだ内容も使わなければ、すぐに忘れてしまいます。子供時代は学んだことの振り返りを先生がテストのような形でしてくれる機会が頻繁にありましたが、社会人になり、同じ会社で長く勤務しているとこういった機会も少なくなっていき、結果、学んだ情報が活かされないというケースも出てきます。このような状況を防ぐために、学んだ内容を他の従業員と共有できる環境があると、学習意欲の維持にも繋がりますし、チームメンバーのレベルアップや組織全体のレベルアップにも繋がるWin-Winの関係が構築されていきます。従業員のこれまでの人生経験やキャリアは一人一人違い、過去の経験や学んだ知識をベースに新しい情報を認識したり、記憶したりするため、全く同じ研修を受講したとしても、従業員によって、研修内容が物足りないと感じたり、反対に難し過ぎると感じるということが起きます。理解度が異なること自体は避けることはできませんが、この理解度のギャップを埋めていく作業は勉強や研修情報の共有作業を従業員同士で行うことでできますし、そのような行動が結果、チーム力を向上させていきます。また、他のメリットとしては社内でイノベーションが生まれやすくなることも挙げられます。知識が共有されない組織では、経験レベルの違いはミスコミュニケーションに繋がることもありますが、知識が共有される企業文化が醸成されていくと、共有された知識から従業員同士の情報交換が生まれ、そこから新たなアイデアや商品が生み出されることが多々あります。

➂得意な学習方法は人それぞれ
大人になるとそれぞれの学習経験が違うため、読書やPDF教材などの視覚を通じた学習が好きな方、オーディオブックや講師からの講義を通じて学ぶことが好きな方、実際に手を動かして学んでいくことを好む方など、学習方法は人それぞれです。従業員の学びやすい方法で研修を組み立てていくというのは大事なことです。ですが、一般的な研究結果によると、体を動かしたり、得た情報が実際の業務にすぐに活かされると、得た情報の記憶維持率が80%~90%になるのに対し、聞くだけ、読むだけというPassiveな受講方法のみの場合は10%~20%程の情報の維持率になってしまうという調査結果もあります。Active Learningとも呼ばれますが、知識をすぐに業務に活かしたり、業務を通しての研修を行うことが記憶の定着率を高めます。反対にPassive listeningと表現される、話を聞き続けるだけの研修は、研修の効果が薄くなってしまいます。研修内容の難易度については様々な議論もあるようですが、一般的には受講者の理解できる内容よりも少しだけ難易度が高いレベルの研修が効果が高いそうです。

これらの注意点を良い形で社内での勉強会や研修に反映させるために、勉強や研修の内容自体を改善することももちろん大事なのですが、労力も時間も掛かることですので、全てのケースで対応するということは現実問題として難しいと思います。ですが、雇用主やHR担当者からの発信方法や情報共有の仕組み作りの方法に少しの手間を加えるだけでも、従業員の学習への意欲、継続力、効果に良い影響を与えていきます。弊社が以前に行ったアンケートでも、コロナ禍で在宅勤務の方が増えたことや、新しいことを学ぶ必要性を感じたというような理由で、個人で様々な内容を学習する方が増えています。昨年の3月から何かと気苦労の多い1年ではありましたが、同時に研修方法のオプションが増え、研修内容や方法の見直しを行うには良い時期なのかもしれません。弊社でも様々な研修を行っておりますので、お役に立てることがございましたら、各営業担当までお気軽にご相談下さい。


山田 明宏 
Akihiro Yamada, SHRM-SCP