ニュースレター

2021-05-25
コロナ禍における労災保険の注意すべき点
みなさんワクチンはもう打たれましたでしょうか。

アメリカではテキサスなど多くの州でワクチンを居住地に関係なく打てることから、最近ではメキシコなど近隣諸国からアメリカに入国し、ワクチンを打って帰国する【ワクチンツーリズム】と呼ばれるツアーが人気のようです。

日本も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を決定、延長していますが、一刻も早くコロナが終息し、自由に行き来ができるようになることを切に願います。

さて、本日はそんなコロナ禍における労災保険の注意すべき点について触れていきたいと思います。

【コロナの対策事例と在宅勤務による注意すべき点】

在宅勤務になってから、通勤時間がなくなったかわりに従業員の労働時間が増えていると言われています。また従来のオフィスワークと比べ、直接的なコミュニケーションが減ることにより、メールなどの間接的なコミュニケーションによる精神的な負担が増えることにより引き起こされる病気や、過労などによる病気もこれから増えてくるかもしれません。そんなコロナ禍における対策の実例として、

・マスクやFace shield 、Sanitizing lotionなどのPPE(Personal Protective Equipment)の従業員への提供

・罹患した場合のリカバリープログラムの構築

・システムなどへのログインを時間によって管理

・在宅勤務の方へ疲れにくい椅子や作業机、キーボード、マウスなどを貸与する

このような対策は実際に多くの企業で取り組まれています。在宅勤務をされている従業員の多くは事務職の方だと思いますが、在宅で起きる事故もオフィスワークと似ているところがあり、勤務中に長時間座っていることで腰や背中を痛めたり、同じ動きをする事で起きる腱鞘炎などの事故報告も保険会社に出てきているようです。

そのような労災事故があった際は自己判断をせず、人事総務に相談をしてほしいと従業員へ事前通知しておくことも、すぐにできる有効な対策です。テレワークの場で起こりうる事故について、その時は従業員が自分の不注意だったと遠慮して会社に報告をしなかったり、相談を受けた直属の上司がよくわからずに労災ではないと判断しまうことによって、

「労災の事案を隠していた」と後から訴えられる可能性があります。

「本当に仕事中に転んだのか。私的な用事じゃないのか」と労災を否定する言動にも気をつけるように注意をすることが大切です。

また、テレワークにおける事故を予防するという観点から、会社が勤務場所として認める場所を指定する。ということも有効な対策です。

カフェや外出先で作業をする場合、特に会社に断りをいれないことが多いかもしれませんが、これから雇用側として、従業員の様々な働き方を容認する時代となっていくことも考えられますので、会社が定める勤務場所を明確にして業務との関連性を明確にすることが求められるかもしれません。

上記の他にテレワークで気をつけたいこととして、在宅勤務になってから州をまたいで働くケースが増えています。

そのため、労災保険に事務所のある州、従業員が働いている州や出張でいくことのある州を、ポリシーに追加をして労災事故に備える必要があります。多くの保険会社の場合、他州もカバー出来るようにポリシーを提供していることがほとんどですが、州法によって労災保険は管理されていることから、

・GA州は3人以上は労災保険の加入義務あり

・TX州は労災保険の加入を任意で選択できる

・WAやOH、WY、NDの4州は州政府が労災保険を提供 など

州によっては民間の保険会社で提供できない州もあり、その場合、政府や州のファンドから直接労災保険に加入します。政府や州のファンドから労災保険を購入する場合については、Employers Liabilityと呼ばれる使用者賠償責任保険※1の内容が州労災保険には付保されていないため、Stop Gap Coverageと呼ばれるEmployers Liabilityの内容をカバーする保険を別途購入する必要があります。

※1:労災保険の対象とならない業務関連の怪我や病気における従業員の訴えをカバーする保険です。

今回はEmployers LiabilityとStop Gap Coverageの詳細な説明を割愛させていただきますが、保険のプロへご確認いただくことをお勧めいたします。

【労災事故で大切なこと】

そんな労災事故を未然に防ぐ方法として一番大切とされているのが、雇用主と従業員のコミュニケーションです。雇用側が各従業員の在宅・オフィスの労働環境を把握し、労災事故を引き起こしてしまうような問題点を事前に見つけ出すことができるコミュニケーションの構築をすることが、労災事故の一番の対策です。

在宅勤務が1年以上続き、従業員間のコミュニケーションも取りにくくなってしまっていますが、そのような時だからこそ、従業員への配慮を雇用側から意識的に行い、コミュニケーションを高めていき、コロナ後においても将来的な労災事故を未然に防ぐ理想的な職場環境を構築していきましょう。

※この記事は複雑な法規制や保険の仕組みをできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。

実際には多くの例外がありますので、事前に法律や保険など各分野の専門家に相談をされてください。

Yusuke"Yu"Sakurai (櫻井 優祐)
Nakazawa Insurance Services
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