ニュースレター

2014-01-01
Newsletter 2014年1月号 従業員 v. Independent Contractor
1.それぞれのメリットとデメリット

米国に進出した日本企業はビジネスが軌道に乗ると、まもなく人(以下、ワーカー)の採用を検討し始めることになる。そういったとき、従業員あるいはIndependent Contractorのどちらを雇ったほうがよいのか、といった相談を受けることがよくある。まず、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみよう。

まず従業員を雇うことのメリットには次のようなものがある。従業員はIndependent Contractorと 比べて会社へのロイヤルティを 持つだろうことが期待できる。会社の成長のことも考えて一所 懸命に働いてくれるはずだ。ま た会社のオペレーションが小さくければ一人の従業員に複数の タスクをアサインしてもよいだろう。例えば実際に私のクライアント企業のケースでも、経理担当者が法務担当者も兼ねていてわれわれ弁護士とのやりとり の窓口になっていることも多い。

次に従業員を雇うことのデメリットには次のようなものがある。従業員を雇うことになれば当然そ の従業員に給与を支払い、また健康保険等のベネフィットを提供しないといけなくなる。また従業員のためのオフィススペースを借りたり、オフィス家具や備品等を購入したりするのにも お金はかかる。また、常に従業 員がいれば従業員に指示を与えたり管理監督をしたり時間が増え、つまり管理職としての仕事 に費やす時間が増え、本業にとって大切な時間、例えばビジ ネスプランを作成したり顧客と 接したりする時間が減ることになる。

一方Independent contractorを雇うことのメリットには次のようなものがある。Independent ContractorにはそのIndependent Contractorが行った業務の対価を支払えばよく、雇用者として給与を支払うわけではないので雇用税を支払う必要がなく、また健康保険等のベネフィットを負担する必要もない。また必要な業務が発生したときにフレキシブルにすでに業務を行う能力のあるIndependent Contractorを雇うことができるので、従業員の教育にかかるコストやスローシーズンに余剰人員を抱えることによるコストが発生しない。

またIndependent contractorを雇うことのデメリットには次のようなものがある。
会社はIndependent Contractorに対して人事権を持たないので、Independent Contractorが頼んだ仕事に100%コミットしてくれるか分からず、例えばIndependent Contractorが他社のプロジェクトを優先してしまうこともある。また固定の給与支払いが発生しない一方で、業務が発生するごとにIndependent Contractorへの業務の対価の支払いが発生するので会社のコストが安定しない。

2.自分が雇うワーカーが従業員なのか、あるいはIndependent Contractorなのかについての判断基準

会社は、雇うワーカーを従業員とするかあるいはindependent contractorとするかを自社の都合によって恣意的に決めることは出来ない。

<判断基準>
ワーカーがどのようにアサインされた業務を進めるか、業務にどれくらいの時間をかけるか、業務を行うにあたりどのような出費をするかといったことについて、会社側が指示したりコントロールしたりすることができるか、といったことを踏まえてその判断をしなくてはいけない。例えばIRSは、行動のコントロールの有無、金銭上のコントロールの有無、会社とワーカーの関係の3つを判断基準とするとしている。

つまり会社側がこれらについて指示したりコントロールしたりすることができる関係であれば従業員として扱わなくてはならず、independent contractorとして扱ってはいけないということ。逆に、会社がワーカーに仕事の成果や結果だけを求め、その成果を出すための手法やプロセスなどがワーカーに任されていて、会社がワーカーに成果の対価を支払っているような場合はindependent contractorとして扱ってよいことになる。なお会社側あるいはワーカー側どちらからも連邦雇用税および所得税上の目的からForm SS-8をIRSにファイルし、対象ワーカーが従業員なのかあるいはindependent contractorなのか判断を求めることが出来る。ただしその判断結果が出るのには数か月かかることがあるのであまり実用的ではないかもしれない。

3.間違った扱い(misclassification)をしたらどうなるのか

一般的には、会社がワーカーを本来従業員として扱うべきなのにindependent contractorとして扱ってしまっていることが多い。やはり、コスト負担を抑えたい、従業員の採用をなるべく控えて会社を身軽にしておきたいということのようだ。しかし、本来従業員として扱うべきワーカーをindependent contractorとして扱っていると、後日IRSから雇用税の支払い義務や罰金、ペナルティが課されることになる。とくに最近、各州の税務当局はこの調査に力を入れている。立場の弱いワーカーの権利を守ることに加えて、税収を増やしたいということもその目的にあろう。また注意しなくてはいけないのは、会社がワーカーとの間で、Independent Contractor Agreementを取り交わしていても、業務の実態が従業員としてのものであれば、misclassificationをしていたとして、雇用税やペナルティが課されうるということ。ワーカーがIndependent Contractorとして扱われることに契約書にて同意していたから、という言い訳は成立しないのだ。
 
(注)上記は一般的な情報提供のみを目的とするものであり、宣伝・広告、顧客の獲得、リーガルアドバイスの提供を目的としたものではないことにご留意ください。

大橋&ホーン法律事務所
大橋 弘昌/ パートナー