2017-03-15
最近住んでいるアパートのすぐ裏で、新しいアパートの建設のため、今まであった平屋建ての古い工場が
壊された。
朝の7時から重機を使っての作業で、100歳近い私の住んでいるアパートは、地震があったかのように
重機の動きに合わせて揺れ、この建物も一緒に倒れてしまうのではないかと思うほどで、昼間は会社に出かけているためそんな不安は忘れていたが、どうなってしまうのだろうと思っていた数日後に工場の建物はなくなり、
さらに数日を使って瓦礫などの撤去をして、あっという間に何もない空間だけになってしまった。工場と隣の建物の隙間に20年来住んでいたというリスの家族も、彼らにとっては何の前触れもなく、住むところを失ってしまうこととなった。
外壁などがレンガでできていた工場の次第に形を失っていく様子やレンガの山に、教科書には載らないけれど、
たしかにNYという街の小さな歴史のひとつだったものが消えていくのを目にして、なんだか淋しい。
けれどもかつてはその工場も、そこにあった何かを破壊して作られたもののはず。そう考えると、移り行く景色も受け入れやすくなった。
グランドセントラル駅のすぐそばに、近い将来高層のビルが建設される予定の場所がある。
今は地面に大きな口をあけたような穴が開いている。
敷地の周りは高い壁で囲われているが、窓が所々あり、覗き込んだ通りすがりの人々の興味を満たしている。
出来上がりの高さを考えると、ほとんど作業が進んでいないかのように、毎日同じように地面を掘り返して
基礎工事に時間が掛かるのも分かるが、穴の中で働く人達やショベルカーをその覗き窓から眺めると、
どれだけ深い穴かとさすがに驚嘆させられる。 昨日の大雪で、除雪だけでも大変そうだ。
ここにもかつて、レンガ塀の建物が建っていた。
毎日その前を通り過ぎながら気がつかなかったが、重ねた建物のリノベーションなどで、レンガ塀は
すっかり覆われていたらしい。何十年ぶりかで日の目を見た、かすかに残った壁の広告の絵や字もレンガ塀と一緒にただの瓦礫になり、あっという間に持ち去られてしまった。
自分が住んでいる建物よりもはるかに高くなるだろう新しい建物によって、窓から毎日の天気を伺うように
眺めた空も、近いうちに見えなくなり、隣の窓からの視線を避けるように分厚いカーテンが必要になるに
違いない。
裏にポカリと空間ができた数日後、2匹のリスが裏の木の間を移動しているのを見かけた。どこかに新居を見つけて、いつもの忙しい日常業務にもどったようだ。
神長