今月に入り、イベントの中止や外出の制限が相次ぎ、お家で過ごす時間が格段にふえましたね。映画を見たり、本を読まれたりして過ごされる方も多いのではないでしょうか。
今回は私が今年に入って読んだ本“When Breath Becomes Air”についてご紹介します。
Paul Kalanithiという方によって書かれたノンフィクションの自叙伝です。
もともとは文学研究を希望していた著者は、脳神経外科医を天職と決め、研修に励みます。長時間労働、精神的苦悩をのりこえ、妻ルーシーともども、輝ける未来が約束されていました。
ところが、突然の体重の減少と腰痛に苦しめられ、精密検査を受けたところ、末期がんと診断されます。まだ36歳でした。
医師として道を歩み始めるまで、研修期間、さらには、がんと診断された後の治療の葛藤などについて、書かれたものです。
医者になるまで、多くのことを犠牲にして、やっと思い描いた未来が現実になろうとしたとき、がんと宣告されます。職業上、常に向き合っていた死、自身のがんが発覚したあとも、いくつかの治療の結果、一度は脳神経外科医として復帰しますが、病気から逃れることはできませんでした。
私が筆者だったら、なんで私が、という気持ちになると思います。ここまでこんなに努力をしてきて、まじめに生きてきたのになぜ、自分がこんな目に合わなければいけないのか。そんな状況でも、筆者は病気を含め、人生そのものから逃げることなく、うまれたばかりの娘を含めた家族に囲まれ、日々を悔いなく生きていきます。
私にはきっとそんな強さはないだろうなと思いつつ、いま健康で、日々当たり前のことが当たり前にできることがいかにすばらしいことか、考え直すきっかけになった本です。
成瀬