2020-07-01
推理小説家のロナルド・ノックスが、 1928年に“The Best of Detective Stories of the Year 1928”で推理小説の基本ルールとして発表した、“ノックスの十戒”。
以下は、Wikipediaから“ノックスの十戒”について。
1. 犯人は、物語の当初に登場していなければならない
2. 探偵方法に、超自然能力を用いてはならない
3. 犯行現場に、秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない
4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5. 中国人を登場させてはならない
6. 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7. 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8. 探偵は、読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9. サイドキックは、自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10. 双子・一人二役は、予め読者に知らされなければならない
9番の”サイドキック“は、ヒーローと行動を共にする相棒のことで、シャーロックホームズでいえば、ワトソン博士のような存在。
5番は下手をすると誤解を与えそうですが、当時の西洋人からすると、中国人は自分たちとは価値観を共有しない、ある意味2番で掲げているような”超自然能力“を持っているようなイメージがあったから、とか、当時唐突に中国人を登場させる三文小説が多かったから、という理由のようです。”中国人“を比喩的に使ったのだと思いますがすが、“今どき”には、微妙な表現ではあります。
大正から昭和期の推理小説家として有名な江戸川乱歩も、推理小説評論集の「幻影城」でこのノックスの十戒を紹介していますが、「初等文法であり、力量のある作家はとらわれずに優れた作品を書いている」としていて、ノックス自身もこの掟を破った「密室の行者」という小説を発表しているので、十戒を守らなければ推理小説ではない、ということではありません。
ノックスと同じ時期の推理小説家、S.S.ヴァン=ダインによる、“ヴァン・ダイン二十則”という、同様の推理小説の基本ルールなるものもあるそうですが、小説の最後の思わぬ展開が、実は事前に施されたいくつもの伏線によっての結果だったり、意外なトリックに驚かされるのが、推理小説のだいご味ではありますが、“この設定、初等文法通り”、などと考えながら読む推理小説も、また違った角度から味わう2度おいしい(?)楽しみ方かもしれません。
神長