2008-11-24
先日コンサルティング会社のアドバイザーとして
長年M&Aに取り組んでいらっしゃる、とある方にお話を聞く機会がありました。
そこで、今回はM&Aのお話をしたいと思います。
そもそもM&Aとは、
“Mergers and Acquisitions”の略で、日本語では合併・買収の総称。
米国では1970年代から行われていますが、
日本では馴染みが薄く、この方がM&Aに携わり始めた頃でさえ、
「チョコレートのこと(M&M)?」と聞き返されるくらい、
知名度が低かったそう。
駄菓子屋さんじゃないんだから、と突っ込みたくなりますね。笑
日本では企業文化を尊重する風潮があり、
他の企業を買収するという考え方が、全く無かったようです。
そこに転機が訪れたのが、90年代初めのバブルの崩壊。
日本の企業はメインバンク制を取っていますが、
銀行が不良債権を抱え、自分の経営が大変な中、
価値が低くなった企業の株式を売却し始めたのが、
そもそものきっかけだそうです。
銀行は恥じも外聞も無く、他の企業に構っている余裕が無くなったようです。
そして日本の景気が落ち込んだ失われた10年といわれる時代に、
安くなった株を海外、特に米国のファンドが
これはバーゲン!と大量に買いだし始めました。
2000年にリップルウッド・ホールディングスが長銀を買収したのが
象徴的な例ではないでしょうか。
それにしても、では、なぜM&Aを行うのか?
かなりの時間と労力とお金をかける割に、
成功とみなされるケースは、たったの3,4割程度だそう。
“株式の値段×株式発行数”が社会が評価している企業の価値で、
買収後にその値段が上がっていれば成功とみなされます。
そして、答えは“時間を買うため”
お金をかければ新しい技術開発も可能ですが、
スピードが命となっている現代の世の中で、
他社が時間をかけて開発した技術などを、
一瞬にして買うことができる事が、企業がM&Aを繰り返す理由のようです。
なるほどなぁという感じです。
お話くださった方は、
「時間をかけて準備しても、最後の最後で、やっぱり買収はやめます、
という話も結構あるので、なかなか大変な仕事ですよ。」
と言われていました。
ただしコンサルティング会社としては、買収規模にもよるようですが、
億単位(!)で報酬が入ってくる事もあるそうです。
現在日本の企業は、計画的なM&Aを始めてきているようです。
円高という要素や、日本国内でのマーケットの限界も理由ですが、
金融系ファンドが世界的な不景気で元気が無いため、
昔は指をくわえてみているだけだった案件に、
積極的に取り組めるのも大きな理由と言われていました。
追伸:
将来的にM&Aに携わりたい!とお考えの新卒者の皆さま。
この方のアドバイスによれば、まずは会社の財政状況を把握できることが
アドバイザーとして必須となるため、会計事務所で監査などの経験を
積まれる事を勧めていらっしゃいました。ご参考までに。
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そして、最後にちょっと話は変わりますが、
このアドバイザーの方が、ぽろっと言われたことが印象的でした。
この方は、日本の大手自動車メーカーを経て、
米国のトップMBAを取得。日本の投資銀行、米国大手公認会計事務所、
そして現在のコンサルティング会社にて勤務されている、
どこからどう見てもすばらしい経歴の持ち主。
その方が
「未だに自分のキャリアはこれでよかったのかと悩む時がある」
と言われていました。
なりたくてなったのではなく、結果こうなったので、
何か他のキャリアがあったのではないかと。
私はこの話を聞いて、かなりびっくりしました。
傍から見ると成功を手にしている方でも、悩みが尽きないのだなと。
逆に悩みがあることは人として自然で、
そして次の”何か”のためにもがき、苦しんで努力をするので、
人は成長できるのかもしれない、と思ったのでした。
LA支店 松浦恵子