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2010-11-23
ニューヨーク流"Hornor System"
私はマンハッタンに住むようになってからバスを愛用するようになりました。流石に通勤にはバスを使うことはできませんが、週末にうろうろする時は時間に余裕があれば迷うことなくバスを利用します。

先日、西海岸から遊びに来た友人とUpper East Side(=UES)にある我が家からPenn Stationまでの移動をどうするか、という相談事になった時(マンハッタンの地理関係及び交通事情にお詳しくない方のために。。。UESとは文字通りマンハッタン島の北東部のエリアのことで、セントラルパークをはさんで反対側はUpper West Sideと呼ばれているエリアです。マンハッタンには地下鉄もバスもたくさん24/7で走っており、非常に便利ですが、以外に不便なのが、東西を横切らなければならない場合。クロスタウン、と呼ばれるルートになりますが、地下鉄はクロスタウンのサービスがないので、直線で東西を横切りたい場合は徒歩ないしはタクシーないしはバスしか手段がありません。上述のペンステーションというのは、西側にあり、さらにアップタウンからはかなり南下しなければいけない場所にあるため、UESからの公共の交通機関を使ってのアクセスはちょっと面倒、というわけです。)、私は迷わず、クロスタウンのバスに乗ってUWSに移動し地下鉄に乗る、と提案をしたところ、車社会から遊びに来ている友人には、バス、という移動に難色を示し、結局、難色を示した友人が払ってくれる、というので、リッチにタクシーで移動をすることになりました。

友人がバスに難色を示したのは以下の理由。
*バスは乗り降りに時間がかかりすぎる。
*たった一人が乗車したい、たった一人が下車したい、という状況でもバスに乗っている全員がその行為にかかる時間を我慢しなければならず、その一人の乗車、または下車があったがために、せっかくの青信号を逃すことにもなりかねず、どうも我慢がならない。

マンハッタンでは裕福な人も裕福ではない人達もバスはよく使います。
よく映画やテレビでご覧になる、マンハッタンの車渋滞のシーンは作り物ではないので、バスにのって、スタックすることは当然よくあること。しかも、2ブロックごとくらいにバス停があり、そのたびに乗り降りをする人もいることも事実。そして、体の動きが敏捷ではない人がバスを利用している確立も高い。といった事実もあり、ショートフューズなニューヨーカーがよくのろのろなバスを我慢するものだ、と上述の友人の語りを笑いながら聞きつつ改めて感心した次第。

さて、標題のHonor Systemってご存知ですか。

マンハッタンの交通事情も手伝って、私の行動範囲はなんとなく東側で南北移動をすることが多いのですが、私の住んでいるファーストアベニューとセカンドアベニューは、こののろのろバスオペレーションを解消する初の試みとして2つのことが行われています。ひとつはバス専用レーンの導入。タクシーが乗客を乗せたり降ろしたりする際や一般車が右折する場合などの特別に許可されているケースを除いてはバスしか走ってはいけないはずのレーン。このマンハッタンでこのルールが守られていると思いますか???ご想像にお任せします。

そしてもうひとつは標題のHonor System。バスの運賃の支払いは通常乗車時に運転手の横にある機械にコイン又はクレジットカードやメトロカードを使って支払うことになっていますが、このファーストとセカンドアベニューを走るセレクトM15バスは、乗る前にバス停に設置されている機械で先に支払いを済ませ、そのレシートを持って乗車をするシステムが導入されており、乗車時に手間がかかることもないはずですし、どのバスのドアからでも乗車が可能、というもの。Honor System,つまりは皆さんの誠実さを信用しますよ、ちゃんと支払ってからバスに乗ってくださいね。というものです。

何年も前ですが、ウィーンに旅行をした時のこと。ウィーンは小さな街で、路面電車が縦横に走っており、これが非常に便利。チケットは確か使用する期間などによって色々と種類があって、駅の自動販売機やタバコ屋さんで買えることになっているのですが、チケットをチェックされることがまったくないのです。チケットを見せろと言われることもなく、自動改札機があった記憶もありません。これはただ乗りをしても誰もわからないよね、と一緒に旅行をしていた母に言ったところ、そういう恥ずかしいことを考えるのはやめなさい、と叱られてしまいました。あはは。ニューヨークに戻ってきて、ヨーロッパに住んだこともあってヨーロッパの事情に詳しいこの友人にその話をしたところ、ヨーロッパはそういう街が多いとのこと。そして、ただ乗りをしようなんて住民は考えないものだよ、と言っておりました。

話が横にそれましたが、つまりセレクトM15バスが目指しているのはこのHonor Systemです。ところが、ところが、です。流石にニューヨーク。新しいシステムが導入されてもう2ヶ月以上になると思いますが、まだこのシステムに慣れていない人がいるから、ということでしょうか。あなたを信用しますよ、というシステムにもかかわらず、外の清算機で運賃を支払いをした証拠のレシートを手にしていない人は乗車を拒否されていますし(ただし、後ろのドアから乗れば乗車時にただ乗りは発覚しない。)、時々MTAの職員が乗り込んで来て、レシートのチェックをすることもあり、ただ乗りをしているとタイミングが悪ければつかまってしまうわけです。メトロカードを握って乗り込んでくる乗客にそんな説明をしたり、その説明を聞いて外の清算機で支払いを済ませる乗客を待ったり、今のところ、そんなにスムーズなオペレーションとは言えず、またメトロカードを握って乗車してきて乗車を拒否された乗客がドライバーにくってかかったり、途中で乗り込んできてレシートをチェックするMTAの職員にどんなわけでか喧嘩を売ったりする乗客もおり、お互いにHonorも何もあったものではないなぁ、とニューヨーク流のHonor Systemの行方を私は楽しんで観察しているところです。

ところで、バス専用レーンですが、ファーストとセカンドアベニューのバス専用レーン沿いには専用カメラが設置され、違反車はばっちりとわかるようになっており、罰金が155ドルだったでしょうか、そのくらいなんだそうです。これもニューヨーク流のHonor Systemです。

なんでも新しいことを導入するのは大変なこと。それまでのやり方に満足をしているわけではない大衆も新しいやり方に拒否反応を示すものだと思います。ですが、本当に必要な改革はその拒否反応に負けてはいけないものだと思います。

ニューヨークは古い街です。古い街に新しい風が吹く街です。きっと、いつか、本当のHonor Systemが広がって根付いていくに違いないと私は信じています。頑張るBloomberg市長のポジティブエネルギーはすごい。

I "heart" NY!

((大矢))