2011-01-18
最近はじめてDavid Sedarisの本、Me Talk Pretty One Dayを読みました。
著者はNPR(アメリカの公共ラジオ局)でその作品が紹介されて有名になり、その後何冊もエッセイを出しています。
計700万冊以上も売り上げるベストセラー作家なので、本屋で見かけたりその名前を耳にすることも多いのではないでしょうか。
HumoristともComedianとも呼ばれる彼の著作は、ほぼ自伝に基づいたショートストーリーのエッセイで、本当に面白いものばかり。電車で読むと一人で吹き出すことが多々あります。
ノースカロライナの小さな田舎町で自分がゲイであることをひたすら隠しながら育ち、ギリシャ系の濃いキャラクターの家族に囲まれ、ドラッグにはまり、いろんな職を転々とし、フランスで彼氏と生活する自分を自嘲的に面白おかしく文章にするセダリスですが、今回読んだエッセイは面白いだけでなく、彼のフランス滞在の話が自分がアメリカに来た頃の感じを鮮明に思い出させてますます面白かったです。
フランス語の全く話せない彼が、フランスの語学学校に行きながらフランスに長期滞在している間の話。ご存知のようにフランス語には、男性名詞と女性名詞があり、セダリスはその習得にすごくすごく苦労するんです。フランス人にとって男性・女性名詞をミスをすることは、幼児でもありえいらしく、大人がゆっくりと話しかけてくれる、そして男性・女性名詞を難なく駆使するフランス人幼稚園児に、セダリスはすごく嫉妬するんです。
バカらし~!と思うような話ですが、私この気持ちすごくわかります!
アメリカに来たばかりの頃、周りの人が何を言っているかさっぱりわからず、しかも聞き返してもぜんぜんゆっくり復唱してくれない環境で、スラスラと英語を話している子供を見ると、わけの分からない嫉妬をしたのは私だけではないはず・・・。
どこに言ってもこの男性・女性名詞で恥をかくことにうんざりしたセダリスは、女性・男性名詞か考える必要もなく、ミスもしなくて良いように、レストランでもお店でも複数形のみを使い始めるんです。(フランス語で複数名詞の場合、男性・女性名詞の区切りはなくなるそうです)
どこに行っても複数形を使い、必要以上にものを注文してしまうので、自宅キッチンには食べ物が溢れていたとか・・・。
笑えるけど、外国に住んで第二言語習得の経験のある人にはなんとも切ない話です。
彼の「なんでも自動販売機で売ってったらどれだけいいのに・・・」というつぶやきは、本当はprovolone チーズが欲しいけど、何度発音してもデリにいるおばちゃんには伝わらないので、結局cheddarチーズで妥協したり、本当はキャラメルマキアートが欲しいんだけど、何度キャラメルって言っても通じないからいつもコーヒーしか頼めなかったりした何年か前の自分にとても共感するものが・・・。
そして自国に帰ると、自分がスラスラ言いたいことが言えることのありがたみを
非常に痛感するというのも、「わかる~~!」と叫びそうでした。
今まで、日本人同士でこのような経験を共有することはあっても、アメリカ人の他国での言語に関する苦労談(「○○人はぜんぜん英語話せなくて苦労したよ~!」以外)をあまり耳にする機会がなかったので、言語、所変われど、語学習得の苦労ってみんな同じ道を辿るんだなぁ~と実感したのでした。
フランス滞在記以外にも本当に抱腹絶倒のエッセイなので、是非おすすめです。
(武田)