2011-04-21
4月。日本は来週からもうゴールデンウィークですね。ニューヨークも長かった今年の冬がやっと終わり、春の気配です。
冬とともに私のロングブーツの季節も終了しました。。。寂しい限り。ファッションは自己表現のステートメントですから、何も時期や季節を限定することはないとは思うのですが、私の中ではロングブーツは冬のもの、という決まりがあり、10月後半(25日くらいからでしょうか)から3月31日までのみの着用が許されるものなのです。カレンダーで衣替えをするのは札幌出身なことに原因があるかもしれません。北海道はご存知のとおり冬の長いところですから4月でもまだ寒く、私の実家は札幌の郊外にありますが高台なせいもあって線路沿いの防風林の足元はなかなか日があたらないことも手伝い残雪が4月中旬でも見られることがあるくらいです。とは言え、世の中は4月になれば春のニュース。テレビでは全国の桜の開花ニュースが毎朝のように流れ、ファッションも当然のことながら明るい色の薄手のものに変わるのを見ると、札幌の人間は寒さを我慢して世の中についていこうと頑張るわけです。長い冬から早く開放されたい、という気持ちの表れなのかもしれません。というわけで、外の気温とは関係なく冬と春の境目は3月31日、これが私のルールです。
ロングブーツとのお付き合いは子供の頃からですからもう何十年になります。小学校の3年生まではゴム長靴でしたが、4年生のお誕生日に赤い皮の編み上げのロングブーツを買ってもらったのが最初、それ以来、冬の寒さにはゲンナリなものの、実は冬が訪れブーツを履くことができるのを毎年心待ちにしている私です。ハワイはいいなぁ、カリブ海もいいなぁ、とは思うものの、私にはこのロングブーツを手放した人生は考えられず、ハワイに住むことは不可能です。
この私のロングブーツ好きはどこに由来をしているのか、最近ハタ!と思いあたる大矢家の歴史にたどりつきました。
私のおじいちゃんのお父さん、つまり私の曽祖父、大矢政次郎という人ですが、この政次郎さんは大正時代に富山県から北海道に移民をし、道東の置戸町(おけとちょう)というところで大成功をするに至ったそうです。明治政府が始めた北海道開拓政策で日本全国から移民が集まり、大いなる自然と厳しい冬の天候と闘い続け、血のにじむような苦労を重ねた開墾移民の努力があって今の北海道ができあがったのは周知の事実ですが、政次郎さんは木々を一本ずつ切り倒し不毛の土地を耕す、といったタイプではなかったようで、どちらかというとビジネスマンだったようです。確か政次郎さんは足袋職人かなにかだったらしいのですが、足袋を作るにとどまらず新しい靴を考案して商品化し、その商品が大ヒットして一財産をなし、その資金を元手に札幌に進出をしゴム製造会社を興し、そのビジネスがまたまた大ヒット。かなりの資産を築き札幌の豊平区はほとんどが大矢ゴムの持ち物だったというお話しです。アメリカンドリームみたいなお話しです。
その政次郎さんが考案した大ヒット商品というのが写真の「大矢ボッコ靴」。ズック靴にゴム底を張った防寒靴で「開墾靴」として東北から樺太まで広く、なんと通販され、使いやすいと大変人気があったそうなのです。ボッコという言葉は北海道弁で棒のことを言うのですが、棒のようにまっすぐ長い靴なのでボッコ靴、と呼ばれることになったのではないかと私は推測しています。つまりロングブーツという意味でしょう。この靴のことは小さな頃からおじいちゃんによく聞かされていて、確か北海道開拓記念館という博物館にも展示されていたように思うのですがどんなものだったのかイメージが全く私の中に残っておりませんでした。先日、おじいちゃんのことをなんとなく考えていて(もう10年前に他界してしまいました。)なんとなくグーグルしてみました。何かでてきたらすごいなぁ、と思って、です。残念ながら特に結果はなし。その時にどういうわけか政次郎さんのこともグーグルしてみたくなって「大矢政次郎」でグーグルしてみたところ、なんと出てくるじゃないですか!置戸町のウェブサイトに昨年掲載されていた記事で、置戸町の文化財にこの大矢ボッコ靴が指定される、というニュースです。このウェブサイトによりますと、大矢ボッコ靴とは。。。
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大矢ボッコ靴は大正8年ごろ、防寒ボッコ靴及び開墾靴にゴム底を張り、実用新案として認定された。
道内の林産工業がさかんな町村をはじめ同外の豪雪地などからも注文が殺到。12年には現在の役場庁舎前に製造工場が建ち、全道に存在が知れ渡った
大正時代の置戸町の歴史を語る上で欠かすことのできない貴重なもので、現有するのが1足のため、町の文化財に指定する予定。
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とのこと。改めて、へ~え~~~~、と感心し、写真を眺めてみたのですが、これ、結構可愛いじゃないですか。UGGブーツによく似てません?やるなぁ、政次郎さん!UGGブーツの原点をここに見た、なんて勝手にひとり悦に入った私です。というわけで、私のロングブーツ=ボッコ靴への愛情はDNAに組み込まれているのではないかしら、というのが本日お伝えしたかったお話しです。
大矢足袋工場という名前でかなりの成功を置戸町で収めた政次郎さんはその資産を持って札幌に進出。ゴム会社を立ち上げてこれがまたまた大成功をし、かなりのお金持ちになったらしいのですが、後を次いだうちのおじいちゃんがビジネスの拡張を図って東京に進出したところ戦争が始まり東京の大空襲で全部焼けてしまったらしく、その後召集されて軍人としての道をあゆんだおじいちゃんと共に大矢ゴムの歴史は幕を閉じることになった模様です。
戦争がなくて、うちのおじいちゃんがもう少しビジネスセンスのある人だったら、私は今頃、セントラルパークサウスあたりのコンドでトイプードルなんかを撫ぜながらハイソな生活をしていたかもしれないのになぁ。。。
*ブログの頁にまだ写真がダウンロードできないことに今気がつきました。この大矢ボッコ靴の写真をご覧になって見たい方は http://turiyamafumi.kitaguni.tv/e480387.html
にアクセスをしてみてください!
((大矢))