2006-07-05
結果は1次面接で敗退、当然である。アナウンサーになるのは何千倍もの倍率を突破した選りすぐりの人たちである。そんな人々と比べたら、私は月とスッポン、いやミドリムシぐらいなもんである。面接で、原稿を読まされ、苦笑いをするアナウンサーの方々を前に大恥をかいて、そそくさと帰って来た。関係者の方々、お忙しいのに本当に済みませんでした。
全く期待もしていなかったし、ましてや受かるとも思っていなかったけれども、不合格と言われるとやはり相当に落ち込む。何だか自分の全てを否定されたような気持ちになってきた。これは精神的に良くないと思いその他に入っていたテレビ局の面接は全部辞退した。時すでに5月、未だに本命のCM制作会社からは何の知らせもない。
じっとしているのも落ち着かないので、何となく他の企業に履歴書を送っては、何となく面接を受けに行ったりしていた。面接官に「どうしてうちの会社で働きたいの?」と聞かれる度に困ってしまった。無理もない。本当にやりたい事への志望動機なら1時間でも2時間でも喋れるが、全く興味のない業界への志望動機なんて明らかに嘘っぽい。当然結果も振るわない。
そんな事をくり返している内にだんだん疲れて来てしまった。あんなに張り切って始めた就職活動なのに、本命が始まる前に精神的にどっぷりとくたびれて、それ以上続けるのがいやになってしまった。季節は丁度梅雨、気分もジメジメとしていた私は、思い切って就職活動を一時期お休みした。ちょうど教育実習にも行かなければいけない時期でもあったので、約半月間就職活動のことは一切忘れ、全く別の事に没頭した。
就職活動を始めて9ヶ月、どこからも内定をもらわないまま7月を迎えた。あれだけ何の反応もなかったCM制作会社からポツポツ面接の知らせが届くようになった。休んだおかげでやる気もまた戻って来た私は事務員のようなリクルートスーツは止め、真っ白なスーツに身を包み汗をかきながらいろんな制作会社の面接に行った。調子はすこぶる良かった。やっぱり、自分の
目指している業界の人達とは話も弾む。
CM制作会社の面接に行くと、たいていその会社で製作しているCMを待ち合い室で流している。とある中堅のCM制作会社の面接に行った時、何となくそれをながめていると、次から次に画面から飛び出すCMがいつも私がTVで見ていていいな~と思っていたものばかりだった。「ここだ!ここしかない!!」画面をみながら一人で興奮した。やがて私の名が呼ばれ鼻息も荒く面接室に入って行った。どんな事を話したのか、ほとんど覚えていない。ただずーっと頭の中がかーっと熱くなっていた事だけは覚えている。
思いは伝わった。その後の筆記試験、最終面接をパスし、8月上旬ようやくその会社から内定をいただいた。就職活動を始めて10ヶ月、長く辛い時間だったが、振り返れば、一生に一度、これ位の苦労はしておいた方がいい
のかも知れないと思った。社会に出る事はやはり簡単な事ではない。
かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さった方々(がもしいらしたら)どうもありがとうございました。そして、もし、その中に新卒で就職活動中の方がいらっしゃいましたら、是非、がんばって下さい。「やりたい!なりたい!」が就職活動の原動力だと思います。
後日談ですが、その会社に就職したあと、私を面接した上司に「どうして私を採用したのですか?」と聞いたところ、「お前の声がいちばんでかかったんだよ」と吐き捨てるように言われた。こんなもんである。 おしまい