2012-05-15
アジアンスタイルのスパルタ教育ぶりを描いて話題になったAmy Chuaの著作Battle Hymn of the Tiger Motherがまだ記憶に新しい今日この頃ですが、先日アジアン・アメリカンが選ぶキャリアに変化が見られるという記事がありました。
従来の高収入・安定したプロフェッショナル・キャリア(会計士、医師、エンジニアなど)ではなく、起業するアジアンアメリカンが増えているらしいのです。
ではここで突然ですがクイズです。
下記のカテゴリーと、正しいアジアン・アメリカンの人口比率をマッチしてください。
1.NYの公立高校
2.Stuyvesant High School (NYCにある理数系に強い名門高校)
3. Fortune 500企業における重役の数
A. 72%
B. 13.7%
C. 2.1%
答えは
1-B、2-A、3-Cです。
数字を見て明らかに分かるように、名門高校の70%以上をアジア人が占めているのにも関わらず、企業の重役を占める割合は2%というなんとも寂しい数字です。
ちなみに、アイビーリーグに在籍するアジアン・アメリカンは15-20%といわれており、やはり企業の重役の比率と比例していません。
何故でしょうか?
「Bamboo Ceiling」という言葉があります。アメリカの企業の中に存在する見えないバリアーにより、アジア人が名門大学を卒業し、高収入の仕事に就けたとしても、その後会社の中で重役まで上っていけない現象を譬えています。よって、「lots of Asians at junior levels, quite a few in middle management, and virtually none in the higher reaches of leadership.」(Paper Tigers, Wesley Yang, New York Magazine, May 2011)という図式が出来上がるのです。
じゃあこれは何故なのでしょうか?
文化、価値観の違いが挙げられることが多いようです。
アジアの文化として、「自分がどれだけ優秀で、できるかということは自分自身で言いふらすものではない。真面目に勉強や仕事をしていれば、才能や能力というものは、言いふらさなくても、気づかれて評価されるもの」という価値観があります。
「You shouldn’t mouth off how smart you are or how good you are at something…You should let others speak for you, and your talent will shine through (“Goodbye, ‘bamboo ceiling,’ Emily Laermer, Crain’s New York Business, April 2012)」とは上手に言ったものだなぁと思いますが、このような謙虚な姿勢はアメリカの企業では評価されません。
黙々と与えられた仕事をこなしてしまうアジア人には否応なく厳しい仕事が回ってき、逆に主張することを心得ている白人は「自分は重要な仕事だけをするんだ」という印象を与えるのが非常に上手だと、Tim Wuというコロンビア大学法学部の教授(父親がアジア人、母親が白人)が、自身が弁護士として働いていたときの経験から語っていました。
多くのアジア人にとって、「重要な仕事だけするんだ」と主張する姿勢は傲慢に映り、抵抗がありますが、このような抵抗をかなぐり捨て、どんどん主張していかないと、アメリカの企業では見過ごされてしまい、リーダーシップをとる役職にはつけないのです。
つまり、Bamboo Ceilingを突き破るためには、アジア人としての価値観を曲げないといけない→ いやぁそれは・・・ということで、自ら起業して、価値観と成功の両立を目指す世代になったとういうことです。
You Tubeや、Yahooの創業者はもちろん、Rickshaw Dumplingsを始めた NYU SternのKenny Laoやゴールドマンサックスを辞めて女性のライフスタイルマガジンを刊行したDanielle Changなどこれからも、アジア人が牽引するビジネスを目にする機会が多くなるかもしれません。
(武田)