私は3歳からバレエを始め、小さい時から舞台に立っていたせいか、今でもステージに立つのが好きですし、また逆に舞台を見に行くのも大好きです。でも田舎で貧乏育ちの私は、小さい頃はそれこそNHKの教育テレビでしか海外バレエ団公演なども見たことがありませんでした。それでも大学生の頃には何かしら海外からの引越し公演などがあると、それこそ当時の私にとっては大枚をはたいてよく観に行ったものです。日頃はジーンズにスニーカーのくせに、そんな時だけは慣れないおしゃれをして出かけるのも楽しみだったかな?バレエ団としては、モスクワのボリショイ、ウクライナのキエフ、フランスのパリ・オペラ座、日本の松山バレエ団など、アメリカからは、バレエよりもブロードウェイの方が多かったですね。
もちろんNew Yorkに来てからもよく観に行きます。当然ですが、日本で観るよりも安い!!日本で海外からのオペラ引越し公演なんかを観に行くと、4,5万払わないとまともな席では観れませんから、それを考えると破格ですね。そのせいか、基本的にはバレエが好きな私も、New Yorkに来てからはオーケストラやオペラをよく観に行くようになりました。オーケストラは、カーネギーかエイブリーフィッシャーホールですが、私はカーネギー派。オペラも、メトロポリタンオペラとニューヨークシティオペラがありますが、劇場としては、やはりメット派。でもこれはただ単に、「ゴージャス」なものが好きだという個人的趣味からくるだけですので、あしからず。
バレエ、オーケストラ、オペラはそれぞれ楽しみ方、観方が違いますね。面白いと思ったのは、ある人が私に教えてくれたのは、「オーケストラは見て楽しむものだ。」ということ。オーケストラを「見て」楽しむためには、遠く離れた席ではだめ。近く、しかもSecond Tierのステージ寄りボックス席で、席の上に屋根がかかっていない席がお勧めなのです。ということは、そのボックス席の1列目。一度そこでオーケストラを見ると感動するのですが、そこからだと指揮者の表情(横顔)が見えるんですね。普通の席からだと、指揮者というのは背中しか見えないですから、どんな表情で指揮をしているのか全く分からない。でも指揮者の横顔や汗、厳しい顔つきやたまに演奏者への愛情のこもったような表情を見ると、純粋に、「ほぉ~っ!」と思うんです。また、指揮を待つ演奏者の引き締まった表情、演奏者の細かい指の動き、それぞれ音を出す寸前に大きく息を吸う姿、あるいは自分のソロパートが終わってほっとしている様子、見たことも名前も分からないような奇妙な形をした楽器で一瞬だけ音が出されるもの、そういった微小なものも含め、音を聞きながら毎回色んな発見が出来るのがとても嬉しくなるのです。
屋根がかかっていない席がいいのは、屋根があると音が屋根の上に逃げて半減してしまうからです。これはどこでもそうですが、例えば1階奥の席で2階の屋根がかかっている席よりも2階で屋根がかかっていない前方の席の方がいい音が聞けますし、2階以上も同じ。音は上に上がるのですね。それに、実は1階オーケストラ席や2階前方の席よりも、Second Tierのステージ寄りボックス席の方が料金も安いのです:)。椅子も固定されていないので自分の好きなように動かせますし、目の前に邪魔な頭が目に入ることもないので、まるで自分のためだけに演奏されているかのような、それこそ(勘違い)ゴージャスな気分で楽しめます(笑)。ただしオペラもそうですが、オーケストラの規模や配置、演出によっては少し見難い部分がある場合もありますのでご了承下さい。
また特にオペラの場合は、建物の1階と2階部分、或いは地下と地上など、ステージ上を上下2段に設定して演じたり、その上下で2つの世界を同時に表す演出をすることが多いので、そういった演目の場合はやはり1階オーケストラ席か2階から観る方が、その演出を十分に楽しめると思います。
これに反してバレエの場合は、何があってもベストは2階中央の最前列ですね。ただしこの席を手に入れるのはかなり難しいので、なるべくそれに近い席をとる努力が必要になります。ここでも大切なのは、やはり屋根が席にかかっていないことでしょうか。あとは、群舞や舞台装置の多い演目はメトロポリタンの方が映えると思いますし、1ペアあるいは少人数のモダンや舞台装置の少ないものは、ニューヨークシティセンターの方で見るほうが集中できます。アメリカンバレエシアターが秋にシティセンターで上演する演目は、ほぼ翌年夏にメットでも上演しますので、演目によって見分けるのも一つですね。(シティセンターの方が安い!)
まぁ、色々と書きましたが、何よりも楽しむことが大切です。こんな小うるさい私でも、行ってしまえばどんな席でもやっぱり楽しいのです。特にメトロポリタンオペラでの開演とともに、あの美しいシャンデリアが天井にまですぅーっと上がり、徐々に劇場が暗くなる瞬間は、何とも表現できない幸せを感じます。
さぁ、今年の冬のオペラは何を観に行こうかな?楽しみな季節です。
参考:「Seats」-APPLAUSE
高橋