「アメリカでキャリアを築きたい」と考えたとき、まずはその方法を正しく理解することが重要です。
日本人がアメリカで働くためにはビザが必要で、その点を踏まえずに就職や転職準備を進めることはできません。
本記事では、アメリカで働くための主な方法を、ビザや求められる要件と併せて解説します。
また、現地就職で求められる専門性やスキル、転職活動を現実的に進めるための考え方についても紹介します。
アメリカでの就職・転職を考える上で、自分に合った進め方を見つけるためのヒントにしてください。
アメリカで働くための主な6つの方法
アメリカで働くためには、就労ビザの取得が必要です。
ビザを取得し、現地で働く方法には、主に以下の6つのパターンがあります。
- 海外赴任
- 現地採用
- 留学・OPT
- 企業研修
- 現地起業
- 永住権(グリーンカード)の取得
それぞれのパターンと主に必要なビザのタイプ、要件について、以下で詳しく解説します。
海外赴任
日本企業からの転勤により、アメリカ国内の親会社や子会社、支店などで働くケースです。
この場合に該当する代表的なビザとして、企業内転勤を目的とした「L‑1ビザ」があり、Eビザ(E‑1/E‑2)は条約貿易・投資関係者向けのビザです。
| L-1 | E | |
| 主な対象 | 役員・管理職・専門職 | 貿易・投資家 / 管理職・専門職 |
| 主な条件 | 直近3年間で、米国外の関連会社で1年の勤務経験がある | 条約締約国の国籍である (※日本は条約締約国で対象) |
| 滞在可能期間 | 管理職者:最長7年間 専門職者:最長5年間 | 最初に最長2年(以降、2年ごとの延長申請が可能) |
アメリカへの派遣となる場合、現地での住まいや保険、子どもの教育費、航空券代などについて、会社から補助や手当があるのが一般的です。
前任者がいれば、現地での情報を得やすく、手続きを進めやすいのもメリットでしょう。
一方で、滞在年数や勤務地は、派遣元の企業の方針や人事に依存します。
海外に関連会社を持つ企業への就職により、実現の可能性が高まる方法です。
現地採用
2つ目は、アメリカの企業またはアメリカに拠点を置く日系企業に直接採用されて、現地で働く方法です。
知り合いからの紹介や転職エージェントからの情報などを元に、現地企業の求人に応募し、就職につなげます。
この場合、主なビザの選択肢は「H-1Bビザ(特殊技能職ビザ)」です。日系企業で条件を満たす場合は「Eビザ」が選択肢となることもあります。
| ビザ | H-1B |
| 主な対象 | 専門職(特殊技能職) |
| 主な条件 | 専門職に直接関連する分野の学士号以上の学位、または同等と認められる学歴・職務経験、もしくは州のライセンスがある |
| 滞在可能期間 | 最大6年 |
H-1Bビザには、年度ごとに発給枠の上限(一般枠65,000件、米国での修士号以上取得者向けに特別枠20,000件)があり、申請は抽選制です。
申請のためには雇用主がビザのスポンサーとなり、手続きの手間や費用を負担します。そのため、雇用側にその負担に見合う価値があると判断してもらえるよう、専門性や実績を示すことが重要となります。
留学・OPT
アメリカの大学や大学院などに留学し、OPT(Optional Practical Training)を利用して現地で働くことも可能です。
OPTとは、F‑1学生ビザで学位プログラムに在学・卒業した後に最大12ヶ月(STEM分野の場合は追加24ヶ月延長可能)の就労許可が得られる制度で、実務経験を積む機会を提供します。
プログラムの利用には、学生ビザである「F-1ビザ」のまま、OPTへの申請が必要です。また、OPTで就ける職種は、専攻分野に関連している必要があります。
運よくインターン先での就職が決まれば、H-1Bビザにビザステータスを切り替えて、現地で働き続けることも可能です。
企業研修
「交流訪問者」として「J-1ビザ(交流訪問者ビザ)」を取得し、現地で有給インターンをする方法もあります。
米国国務省が認定するプログラムに申請し、許可を得ることでビザの申請が可能です。
J-1ビザには14のカテゴリーがあり、「Intern(インターン)」と「Trainee(トレイニー)」が主な対象となります。
それぞれのカテゴリーのビザ申請の条件は以下のようになります。
| インターン | トレイニー | |
| 申請資格 (いずれかを満たす必要あり) | ・米国外の高等教育機関(大学など)に在籍中である ・交換訪問者プログラムの開始日からさかのぼって12カ月以内に米国外の教育機関を卒業している | ・米国外の教育機関から学位または専門資格を取得し、職業分野に関連する実務を1年以上米国外で経験している ・研修を希望する職業分野について、米国外で5年間の実務経験がある |
| 滞在可能期間 | 最長12カ月 | 最長18カ月 |
J-1ビザは、就労可能でも、H-1BやL-1といった職務目的の就労ビザとは性質が異なります。
あくまで学習と研修を目的としており、プログラム終了後には帰国が前提です。
アメリカに住み続けるためのものではありませんが、現地で働いた経験を日本でのキャリアアップや年収アップにつなげることが可能でしょう。
現地で起業
アメリカで起業し、現地で働くのも一つの方法です。
必要なビザはケースによりますが、例えば「Eビザ」が選択肢の一つとなるでしょう。
会社の設立や人材確保など、アメリカの制度を理解した上で準備を進めていく必要があります。
OPT期間中に就く仕事は、大学での専攻分野と一致している必要があります。
永住権(グリーンカード)の取得
永住権を取得すると、無期限でアメリカに居住でき、一部の公職を除き、職種や雇用形態の制限なく働けます。
永住権の取得には、代表的なものとして以下の方法があります。
- アメリカ人との結婚
- 雇用先のサポート
- 特殊な才能
- 投資
- 抽選
いずれの場合も、発給枠の制限や厳格な条件などがあり、十分な準備と時間が必要になります。
アメリカで働くために求められる専門スキルと英語力

海外赴任の場合を除き、日本人がアメリカでビザを取得し、働くのは簡単なことではありません。
雇用主にビザのスポンサーとなってもらうためには、ビザが不要な候補者よりも自分こそが魅力的な人材であるとアピールする必要があります。
以下では、アピールの要となる、専門スキルと英語力について詳しく解説します。
アメリカで評価されやすい専門スキル例
アメリカでは即戦力が求められ、専門スキルや実務経験の有無が重視されます。
また、ビザの要件にも専門性を問うものがあり、主に以下の分野に関連するスキルは有利に働きやすいといえます。
- IT・テクノロジー
(ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ、データサイエンスなど)
- 金融・ファイナンス
(金融アナリスト、コーポレートファイナンスなど)
- 医療・ヘルスケア
(医師、看護師など)
- マーケティング
(マーケティングコンサルタント、データアナリストなど)
資格でのアピールではUSCPA(米国公認会計士)やMBA(経営学修士)も強みとなります。
英語力の目安と考え方
現地で成果を出すためには、業務に対応できる英語力も欠かせません。
ビジネス現場での円滑なコミュニケーションに必要とされる英語力の目安は以下のとおり。
- TOEFL iBT 100点以上
- IELTS 7.0以上
少なくとも、日常的な業務対応ができるレベルとして、TOEFL iBT 90点以上、またはIELTS 6.5以上は目指しておきたいところです。
ただし、英語力は試験のスコアそのものよりも、スムーズにコミュニケーションが取れ、業務を支障なく進められるかどうかが重視されます。
スコアを目標にするだけでなく、実際の業務で使える英語力を意識して準備しておくことが大切です。
アメリカで働く際に持っておくべき3つの視点
実際にアメリカで働き始めると、想像と現実のギャップに直面する人も少なくありません。
ここからは、現地就職・転職を進める際に持っておくべき視点として、次の3つについて解説します。
- 年収だけでなく居住エリアの生活コストも確認する
- 福利厚生の中身も含めて判断する
- 転職前に自分のビザステータスと制限を整理する
年収だけでなく居住エリアの生活コストも確認する
応募先企業や雇用先を選ぶ際には、年収額にだけ注目するのではなく、生活にかかる費用とのバランスを見る必要があります。
給与水準が高いとされるアメリカでは、物価や居住費も高めです。
特にニューヨークやカリフォルニアなどの都市部では、住宅費や医療費が高く、全体的な費用負担が大きくなりやすい傾向があります。
住むエリアによっては、生活費や税金が高いため、高年収に思えても、実際には手元に残るお金が少ないという場合があります。
求人を見る際や内定先の比較の際は、住むエリアの生活費事情をリサーチし、収支のバランスを見て判断することが重要です。
福利厚生の中身も含めて判断する
雇用先選びでは、給与だけでなく福利厚生の内容も確認が必要です。
アメリカでは、企業が従業員向けに健康保険を提供するのが一般的です。ただし、日本のような国民皆保険制度はなく、保険の補償範囲や企業の負担率は勤務先により異なります。
また、401(k)と呼ばれる確定拠出年金では、企業側が拠出額に上乗せする「マッチング拠出」の有無や、マッチングの割合も重要な確認ポイントになります。
年間祝日日数や有給休暇の条件も含め、ベースの給与と併せて総合的に判断することが大切です。
転職前に自分のビザステータスと制限を整理する
すでにアメリカの就労ビザで働いている場合は、転職活動をはじめる前に、自分のビザステータスとその制限を正しく把握しておきましょう。
例えば、H-1Bビザでは、転職の際に新たな雇用主による申請手続きが必要です。一定の条件を満たせば、申請提出後から新しい雇用主のもとで就労を開始できますが、承認されなければ、その雇用主のもとで就労を継続することはできません。
また、就労ビザのステータス変更を申請中は、再入国に制限がかかる可能性があるため、米国内にとどまる必要があります。 自分のビザについて理解しておくことで、転職活動の選択肢やタイムラインを現実的に設計でき、不要なリスクを避けることにつながります。
アメリカで働くための就職・転職活動の進め方

アメリカでの就職・転職活動は、次の4つのステップで進めましょう。
- Step 1:スキルと英語力の強化
- Step 2:求人探し
- Step 3:応募先に合わせた書類づくりと面接対策
- Step 4:内定とビザ手続き
それぞれのポイントを以下で詳しく解説します。
Step 1:スキルと英語力の強化
まずは自分のキャリア設計を明確にし、そこから逆算して必要なスキルや英語力を磨いておくことが大切です。
研修や社内プロジェクトへの参加で実務経験を積み、必要なら資格の取得にも励み、応募先企業に自分の価値を具体的に示せる状態にしておきましょう。
こうした準備が、応募可能な職種や企業の幅を広げることにつながります。
Step 2:求人探し
具体的に就職・転職活動を進めていく準備ができたら、次は求人のリサーチです。
求人サイトを見るのも有効ですが、アメリカでの転職に詳しいエージェントを積極的に活用しましょう。検索だけでは確認できない情報や企業のビザサポートの有無についても効率よくチェックしやすくなります。
また、日頃からビジネスのつながりを強化しておくと、紹介により自分に合う仕事に出会える可能性を高められます。
ビジネスに特化したSNS「LinkedIn」を活用して、つながりを増やしておくのも効果的です。
Step 3:応募先に合わせた書類づくりと面接対策
書類作成や面接対策では、アメリカのフォーマットややり方に合わせた準備が必要になります。
Step 4:レジュメ・カバーレター
レジュメは日本の履歴書や職務経歴書を英訳すればいいわけではなく、アメリカの形式に合わせて作成する必要があります。
例えば、アメリカでは雇用差別を避けるため、顔写真の添付や、国籍、年齢、性別の記載は不要です。
レイアウトやスペル、文法など、細部まで注意を払って準備を進めましょう。
また、書類選考で弾かれないためには、自分が求められる人材であることを、求人との合致度の高さを具体的に示すことが不可欠です。
求人情報を読み込み、求められるスキルや経験を整理しましょう。その上で、自分が提供できるスキルをキーワードとしてレジュメやカバーレターに反映しておくと、より効果的に強みを伝えられます。
面接
選考は、まず電話やオンラインで行われ、その後いくつかのステップを経て最終面接へ進むのが一般的です。
面接準備では、企業研究は欠かせず、英語での面接に慣れておくことも重要です。
アメリカの採用面接では、人柄を知るよりも、スキルや対処能力を確認する質問が多くなります。
採用担当者からの逆質問でも、うまく自分のアピールにつなげられるよう練習しておきましょう。
面接後には、感謝の気持ちを伝えるメールを送るのも大切なポイントです。意欲を簡潔に伝えるとともに、追加の質問にも対応できることを添えて、できるだけ早めに送りましょう。
Step 4:内定とビザの手続き
採用が決まったら、ビザの申請準備に進みます。
ビザの手続きは、ビザの種類や個人の状況によって進め方が異なるため、雇用主や弁護士と必要な手続きを確認しながら準備を進めましょう。
アメリカでの就職・転職なら専門家に相談するという選択肢も
アメリカでの就職や転職は自力で進めることも可能ですが、現地の事情に詳しい転職エージェントを利用すれば、効率よく進めやすくなります。
ビザの取得を前提に就職・転職活動を進めるには、職務内容のチェックだけでなく、企業がビザサポートをしているかの確認も欠かせません。
また、ビザスポンサーとなる企業の手続きやコスト面での負担を踏まえ「それでも採用したい」と思ってもらえるアピールが必要です。
業界や職種に精通したプロのアドバイスを活用すれば、こうしたポイントを押さえた対応が可能になります。
Actusは、日本人のアメリカでの転職を20年以上にわたり支援してきました。
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まとめ
日本人がアメリカで働く方法はいくつかありますが、ビザの要件も踏まえると決して簡単ではありません。
それでも、ポイントを押さえた入念な準備と戦略的な行動により、実現の可能性は高まります。
スキルアップやネットワーキングに加えて、自分のビザステータスに合った求人のリサーチ、レジュメのブラッシュアップ、面接準備など、取り組めることは多くあります。
効率よく就職・転職活動を進めるなら、転職エージェントもうまく活用し、将来のキャリアにつなげていきましょう。
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