アメリカの就労ビザの一つに、H-1Bビザがあります。これは、高度な専門知識を持つ外国人が、現地で働く際に発給されるビザです。

アメリカでの転職を考える際には、このビザの特性や要件を理解しておくことが大切です。

この記事では、H-1Bビザの概要から、取得要件や申請手続き、注意点までを紹介します。

また、2025年以降に発表・検討されている制度変更を踏まえ、スポンサー企業の負担増加や抽選制度の見直しについても解説します。

新制度を踏まえた転職活動の考え方についても紹介していますので、アメリカでのキャリアを考える際の参考にしてください。

H-1B(特殊技能職ビザ)とは?

H-1Bとは、高度な専門知識を要する職種に就く外国人が、一定期間アメリカで就労するための非移民ビザ(査証)です。

主に米国内の企業が、現地で働く外国人を雇用する際に利用されます。個人では申請できず、雇用主がスポンサーとなることで手続きが可能です。

ビザ申請者には、職務内容に直接関連する分野の学士号以上の学位、または同等の実務経験を有していることが求められます。

ビザの期間は条件を満たせば延長が可能で、最長6年間の現地滞在と就労が認められます。

H-1Bビザの要件と取得手続き

H-1Bビザの特性についてさらに詳しく見るため、取得条件や申請手順など、以下の5つの項目に分けて解説します。

  • 申請要件
  • 滞在期間と制限
  • 申請手続きとスケジュール
  • 必要書類と準備のポイント
  • 同行家族向けのビザ|H-4

申請要件

H-1Bビザの申請のためには、専門職(specialty occupation)に該当する職種に就くことが前提となります。

具体的には、次のような職業が含まれます。

  • 建築家
  • 会計士
  • マーケティング・アナリスト
  • 医療技術者
  • 弁護士
  • エンジニア

このほかにも、自然科学や社会科学、教育、神学、芸術分野の職業が該当します。

また、ビザの要件として、以下のいずれかを満たしていなければなりません。

  • 専門職の分野に関連する学士号以上の学位を保有している
  • 専門職に従事するために必要な州のライセンスや登録、認定を受けている
  • 学士号相当と認められる学歴や実務経験がある

申請にあたっては、専門職の仕事のオファーがあり、スポンサーとなる雇用主が決まっていることも条件となります。

併せて、雇用主側は、そのポジションに見合った水準の給与を支払う義務を負います。

滞在期間と制限

H-1Bビザでは、最初に3年間の滞在が認められます。通常は、さらに3年の延長ができ、最長6年間現地に滞在可能です。

滞在期間を終えた後、新たにH-1Bビザの申請をする場合は、期間終了後1年以上は米国外に居住することが求められます。

また、H-1Bビザはスポンサーとなった雇用主のもとでのみ有効です。雇用主が変わる場合は、新しい雇用主が移民局に申請書を提出します。

申請手続きとスケジュール

アメリカの移民年度は10月1日始まりとなっており、10月から就業を開始するには、その年の3月から申請準備を進める必要があります。

新規でH-1Bビザを申請するには、以下のような3つのステップがあります。

① 3月|電子登録手続きと抽選

雇用主(または代理人)が候補者情報をオンラインで登録し、それをもとに抽選が行われます。

H-1Bビザには、年度ごとに発給件数の上限があります。一般枠は65,000件。加えて、アメリカ国内で修士号以上を取得した人向けに、特別枠として20,000件が用意されています。

年々H-1Bビザの申請者数は増えており、抽選に選ばれた場合のみ、ビザの申請手続きに進めます。

② 4月以降|移民局への請願

当選通知を受けたら、雇用主(または代理人)が移民局へ請願書を提出します。

③ 許可通知とビザ申請

移民局から許可が下りたら、就労希望者は米国外の大使館または領事館でビザの申請をします。

ビザが下りると、移民局の書類に記載されている就業開始許可日の10日前から入国が可能となります。

なお、F-1ビザをはじめ、条件を満たす一部の非移民ビザからH-1Bへ切り替える「ステータス変更」の場合は、アメリカ国内で手続きを完了させることが可能です。

新規申請の場合も、ステータス変更の場合も、抽選制度や申請のタイミングを踏まえ、早めに準備を始めることが大切です。

必要書類と準備のポイント

電子登録を含む申請手続きでは、スポンサー企業側で準備する書類があります。

これに加えて、就労希望者側では、主に以下のような書類の準備が必要です。

  • パスポート
  • 証明写真
  • 英文履歴書
  • 英文卒業証明書・成績証明書

パスポートは有効期限を確認し、必要であれば更新手続きをしましょう。

卒業証明書や成績証明書は、パスポートと氏名表記が一致しているかも重要な確認ポイントです。大学によっては、現姓での英文書類発行に対応している場合がありますが、旧姓のみでの発行の場合は戸籍謄本とその英訳も併せて用意する必要があります。

すでにアメリカにいるのかや、過去に申請経験があるのかにより必要書類は変わります。ご自身のステータスに照らして、必要なものを確認するようにしてください。

同行家族向けのビザ|H-4

H-1Bビザ保持者に同行する配偶者と未婚の子ども(21歳未満)は、「H-4」と呼ばれる同行家族向けのビザの取得が可能です。

申請では、H-1Bビザ保持者との関係を証明する必要があり、婚姻証明書や出生証明書、戸籍謄本などに英訳を添えて提出します。発給されるビザの期間は、H-1Bビザ保持者の滞在期間と同じです。

なお、H-4ビザ保持者は原則として現地での就労ができませんが、就学は認められます。

H-1Bビザはどう変わる?2025年以降の制度変更

2025年9月19日に発令された大統領令により、H-1Bビザの申請プロセスについて「10万ドルの支払い」と「抽選規則の変更」が決定しています。

申請全体の流れはこれまでと変わりませんが、ルール上の細かな変更を確認しておくことは、今後転職活動をしていく上で欠かせません。

ここからは、これらの新ルールについて詳しく解説します。

2025年9月21日以降、H-1Bビザを新規で申請する場合に、スポンサー企業に10万ドル(約1,580万円)の支払いが求められるようになりました。

※2026年1月時点のレートを参考に、1ドル=158円として日本円換算しています。

このルールは主にアメリカ国外からの申請者が対象ですが、米国内での申請であっても注意が必要です。

例えば、米国内でのステータス変更が認められなかった場合や、審査の結果が出る前にアメリカから出国してしまった場合などは、支払い義務が生じます。

この制度変更により、H-1Bビザの取得を前提とした国外からの人材採用では、企業側に大きな負担がかかることになります。今後、採用に慎重になる動きが増える可能性も考えられます。

現状、この新ルールの適用は、延長がない限り、発効日から12カ月間とされています。今後は、このルールが延長されるのか、動向を注視していく必要があります。

【参考】米国国土安全保障省「H-1B Specialty Occupations – Presidential Proclamation on Restriction on Entry of Certain Nonimmigrant Workers」

抽選制度の見直し

新規申請者の抽選制度については、新規則が2026年2月27日に発効すると発表されています。

これまで、ビザの発給枠を超える申請があった場合は、賃金水準に関係なくランダムで抽選が行われてきました。

新方式では、賃金水準を重視した抽選制度が採用され、高賃金の申請者ほど有利になるとされています。

具体的には、申請者を賃金水準に応じて4つのレベルに分け、レベルの高いグループほど、当選確率が高くなるように抽選のエントリー回数(口数)が増える仕組みです。

10万ドルの費用負担が申請者数に影響を及ぼすことも考えられますが、抽選に備える場合、企業側には「より高い給与設定」が求められる可能性が高まります。

抽選制度も含め、ビザの申請プロセスについては、今後も内容の見直しや調整が行われる可能性があるため、最新情報をよく確認しておきましょう。

【参考】Federal Register「Weighted Selection Process for Registrants and Petitioners Seeking To File Cap-Subject H-1B Petitions」

H-1Bビザを考慮した転職の進め方

アメリカでのキャリアを考える際は、ビザのことを分けて考えることはできません。

特に、H-1Bビザの取得やステータス変更を目指す転職では、次の2つのポイントを意識しましょう。

  • 自分のステータスと採用者視点を理解する
  • 専門家に相談する

以下でそれぞれ詳しく解説します。

自分のステータスと採用者視点を理解する

アメリカでの転職活動では、自分の状況を正しく把握し、採用者視点を理解した戦略的なアプローチをとることが重要です。

まずは、現在のビザの種類や転職の可否を確認し、残りの滞在期間や適用される猶予期間(グレースピリオド)についても整理しましょう。

自分のビザでできることを把握することで、応募先の幅を広げ、転職のタイミングをうまく見極められるようになります。

また、ビザの取得を前提に転職先を探す場合は、スポンサー企業に費用や手間がかかることを忘れてはいけません。

転職希望者は、自身がそれらの負担を上回る価値を持つ人材であることを示す必要があります。

応募書類や面接では、自身の強みを具体的に伝えられるよう、アピールの仕方を最適化しましょう。

応募先企業がビザのスポンサーになることに積極的かどうかを早めに確認することも大切なアプローチの一つです。

専門家に相談する

制度の厳格化が進む中、ビザに関する最新の情報を把握し、必要な準備を進めていくには、ビザや転職市場に精通した専門家のサポートを活用するのが有効です。

ビザに関する情報は複雑で変更も多いため、自分だけの力では限界を感じることもあるでしょう。誤った理解のまま転職活動を進めてしまうと、遠回りになる可能性もあります。

特に、すでにアメリカにいる場合は、個別のビザステータスに応じた動き方が必要になり、専門家のサポートがあると安心です。

Actusは、ニューヨーク本社を中心に、ロサンゼルス、シカゴ、ダラスなどの主要都市から現地就職・転職をサポートしています。

業界や分野に詳しいリクルーターが、現在の状況やキャリアプランを丁寧にヒアリングし、ビザのステータスやスキル・実績に合った求人をご紹介します。

H-1Bビザを視野に入れた転職なら、まずはご登録、またはお気軽にお問い合わせください。

まとめ

H-1Bビザは専門性に特化したビザで、取得には高度な知識や実績が求められます。しかし、十分なスキルや知識があれば、専門職としての経験を積み、アメリカでのキャリアアップにつなげられる魅力的なビザです。

ビザを前提に転職活動を進める場合は、自分のビザステータスを正しく理解しておくことが大切です。自分の状況を把握した上で準備を進め、効果的に自分の価値をアピールできるようにしておきましょう。

特にH-1Bビザは抽選の時期が決まっているため、ステータス変更を意識する場合は、全体像をつかみ、転職スケジュールを立てておくことがポイントになります。

転職エージェントのサポートもうまく活用し、自身の専門性や経験を最大限にアピールすることで、アメリカでのキャリア形成につなげましょう。