アメリカで働くことを考えるとき、税制度の理解は避けては通れないポイントです。

アメリカの制度では、連邦や州、地方それぞれで課される税金があるため、全体像が分かりにくいと感じる方も多いでしょう。

この記事では、アメリカの税金の種類や仕組み、確定申告の基礎知識を詳しく解説します。

日本とは異なるアメリカの税制度を理解し、必要な手続きを進めるとともに、税金のことも踏まえた賢いキャリア選択に役立ててください。

アメリカの主な税金の種類一覧

まずは、アメリカの主要な税金を一覧で確認してみましょう。

税金の種類詳細
所得税(Income Tax)個人や法人の所得に対してかかる税金
社会保障税・メディケア税
(Social Security Tax・Medicare Tax)
年金や高齢者医療を支えるための税金 給与税(Payroll Tax)とも呼ばれ、従業員の給与から差し引かれる
売上税(Sales Tax)商品を購入する際にかかる税金
物品税(Excise Tax)ガソリンやアルコール、タバコなど特定の商品にかかる税金
固定資産税(Property Tax)土地や家屋などにかかる税金
遺産税・相続税(Estate Tax・Inheritance Tax)遺産やその相続にかかる税金

これらの税金の中でも、アメリカで働く上で理解が欠かせないのが「所得税」です。

所得税は、連邦、州、地方といった複数のレベルで課されるため、仕組みを正しく理解しておく必要があります。

以下で所得税について詳しく見ていきましょう。

アメリカの所得税の種類

アメリカで働く個人に課せられる所得税には、次の3つの種類があります。

  • 連邦所得税
  • 州所得税
  • 地方所得税

それぞれについて詳しく解説します。

連邦所得税

連邦所得税(Federal Income Tax)はアメリカ連邦政府が全国一律に課す税です。

連邦税をはじめ、多くの州や地方では、所得が高くなるほど高い税率が適用される「累進課税」を採用しています。

2025年度の所得(控除差し引き後)に対する連邦所得税の税率は、次のとおりです。

税率単身者の場合夫婦合算の場合世帯主の場合
10%$0~11,925$0~23,850$0~17,000
12%$11,926~48,475$23,851~96,950$17,001~64,850
22%$48,476~103,350$96,951~206,700$64,851~103,350
24%$103,351~197,300$206,701~394,600$103,351~197,300
32%$197,301~250,525$394,601~501,050$197,301~250,500
35%$250,526~626,350$501,051~751,600$250,501~626,350
37%$626,351~$751,601~$626,351~

Internal Revenue Service (IRS)「Federal income tax rates and brackets」をもとに作成

所得税は、一つの税率が所得全体にかかるわけではありません。所得を上記のように複数のブロックに分け、それぞれの範囲にあてはまる額にだけ10%や12%といった税率がかかります。

税率は毎年調整されるため、最新情報は米国内国歳入庁(IRS)のウェブサイトでご確認ください。

連邦所得税に加えて、州が課す州所得税(State Income Tax)や一部の都市が課す地方所得税(Local Income Tax)があります。

税率は州や市ごとに設定され、なかには所得税を課さない地域もあります。

いくつかの州の2025年度の所得税率を抜き出すと、以下のとおりです。

  • カリフォルニア州:1~13.30%(※課税所得100万ドル超分の追加1%の税を含む)
  • ニュージャージー州:1.4~10.75%
  • ニューヨーク州:4~10.9%
  • テキサス州:0%(州所得税なし)
  • フロリダ州:0%(州所得税なし)

ニューヨーク州の中でも、ニューヨーク市では3.078~3.876%の地方所得税があり、州所得税に上乗せされる形になります。

アメリカで税金を払う必要がある人は?

アメリカで所得税を払う義務があるのは、一定以上の収入があり、税法上「居住者」または「非居住者」に該当する人です。

課税される所得の範囲は、税法上の区分(居住者か非居住者か)によって異なります。主な違いは以下のとおりです。

税法上の区分該当する人納税の範囲
居住者・米国市民 ・米国永住者(グリーンカード保持者) ・実質滞在テストの判定条件にあてはまる人米国内に限らず、国外で発生した所得も課税の対象
非居住者・実質滞在テストの判定条件にあてはまらない人米国内で発生した所得のみが課税対象

「居住者」か「非居住者」かを判断する際に使われるのが、「実質滞在テスト(Substantial Presence Test)」です。アメリカにどれくらい滞在しているかで判定され、主に以下の2点が見られます。

  • 該当年に31日以上米国に滞在
  • 過去3年間の滞在日数のカウントが183日以上
    (計算方法:該当年の滞在日数 + 前年の滞在日数の3分の1 + 前々年の滞在日数の6分の1)

なお、実質滞在テストでのカウントは、学生ビザ(Fビザ)などでの一時滞在者については、一定期間の免除措置があります。

居住者または非居住者として納税義務がある場合、アメリカでは雇用主による年末調整がないため、個人での確定申告が必要になります。

アメリカの確定申告の基礎知識

アメリカでは、確定申告は「Tax Return」と呼ばれます。

ここでは、Tax Returnの申告期限や提出方法、対象所得などの詳細を押さえて、全体像を把握しましょう。

確定申告が必要な人

確定申告が必要なのは、先に解説した「居住者」と「非居住者」にあたる人で、年間所得が一定の基準を超えた人です。

2025年度(2026年申告分)の主な基準額は以下でした。(※65歳未満の場合)

  • 単身者:$15,750以上
  • 夫婦合算:$31,500以上(※夫婦ともに65歳未満の場合)
  • 世帯主:$23,625以上

また、副業収入や個人事業主としての事業所得が$400を超える場合も申告が必要です。

基準額は毎年調整されるため、詳しくはIRSのページを確認してください。

なお、法律上は基準額を超えた場合に申告義務があるとされていますが、実際には所得があれば申告するのが推奨されます。

先述のとおり、アメリカでは、日本のように雇用主が年末調整をすることはなく、自分で申告しないと、税金の過不足が調整されません。払いすぎた税金の還付や控除を受けられるよう、申告を検討するとよいでしょう。

確定申告の時期・申告方法

連邦税の確定申告の期限は、原則4月15日です。締切日が土日や祝日に重なる場合は、翌営業日まで延長されます。

また、米国外にいる納税者に対しては自動で期間が延長され、6月15日が期限となります。

申告書にはいくつか種類があり、居住者の場合は「Form 1040」、非居住者の場合は「Form 1040-NR」が主な申請書類です。

税務ソフトなども使いながら自分で書類を作成して提出するか、専門家に依頼して提出する方法があります。

確定申告が必要な所得一覧

アメリカの連邦税については、原則として以下の所得が申告と課税の対象です。(※一部は条件付き課税)

所得の種類具体例
給与所得給与、賞与、成果報酬、各種手当
事業所得自営業の利益、副業の所得、フリーランス収入
利子所得銀行預金の利子、公社債の利子
配当所得株の配当金
譲渡所得(キャピタルゲイン)株式・仮想通貨・不動産などの売却益
不動産・ロイヤリティ所得家賃収入、著作権料、特許権の使用料
農業所得農産物や家畜の売却益
退職年金企業年金・個人年金の受取分(※拠出方法により課税対象)
社会保障給付金公的年金(※所得額に応じて課税)
失業保険給付失業保険金
雑所得賞金、宝くじの当選金、債務免除益など
その他損益ビジネス用資産の売却による損益など

IRS「Publication 525 (2025), Taxable and Nontaxable Income」をもとに作成

非課税の所得一覧

一方で、原則として連邦税が非課税となる所得には、以下のものがあります。

  • 生命保険金
  • 災害救援給付金
  • 傷害・医療給付金
  • 損害賠償金
  • 奨学金
  • 相続財産
  • 贈与財産  など

ただし、これらは受け取り方や使われ方によっては、一部が課税対象となる場合があります。該当の所得がある場合は、必ず詳細を確認するようにしてください。

控除の種類

アメリカの税制では、大きく分けて「標準控除(Standard Deduction)」と「項目別控除(Itemized Deduction)」の2種類の控除があります。

控除額が大きくなるどちらか一方の控除を選択して適用します。

標準控除国が定めた額を差し引く方式。多くの納税者が利用。(※非居住者の場合は原則適用なし)
項目別控除項目ごとに支払った額を合算し、差し引く方式。合計額が「標準控除」を上回る場合に選択。   対象項目: 医療費州・地方税住宅ローン金利寄付金災害・盗難損失

標準控除の差し引き額は毎年調整されるため、詳しくはIRSの情報を確認してください。

なお、標準控除と項目別控除の選択の前に、教育ローン利息や個人年金拠出金に対しての所得調整があります。

また、計算された税金額から直接控除分を差し引く「児童税額控除」や「低額所得者税額控除」などもあります。

所得の計算方法

課税対象となる所得の計算方法は以下の3ステップです。

  1. すべての収入源から総所得(Gross Income)を出す
    給与や賞与、利子などの所得をすべて合計します。
  2. 総所得から調整項目の額を引き、調整後総所得(AGI)を出す
    教育ローン利息や個人年金拠出金などの特定の調整項目の額を差し引きます。
  3. AGIから標準控除または項目別控除分を引く
    どちらか控除額が大きいほうの控除分を差し引きます。

これで算出される「課税所得」に税率を掛けて税額を計算します。

算出された税額から、児童税額控除などの「税額控除」や、源泉徴収などの額を差し引いたものが、納税額または還付額となります。

確定申告での注意点

確定申告の際には、申告と納税の期限に注意しましょう。期限を過ぎると、ペナルティや利息が発生します。 また、申告期限は所定のフォームを提出することで延長が可能ですが、納税期限は延長ができない点にも注意しましょう。

日米租税条約による二重課税の防止とは?

日米間では「日米租税条約」が締結されており、同じ所得に対して両国の税金が課される「二重課税」を防いでいます。

アメリカのルールでは「居住者」に分類される場合、日本を含む全世界での所得が課税対象です。しかし、条約があることで、日本で納めた税額分の控除や、特定の所得に対する税率軽減や免除を受けられるようになっています。

この条約の適用を受けるには、アメリカでの確定申告の際に専用のフォーム(Form 8833)の提出が必要になる場合があります。

アメリカ転職で失敗しないための税金の考え方

これまで見てきたとおり、アメリカの税金は州や市によって制度が異なります。これはつまり、同じ給与額でも、どこで働くかによって実際の手取り額に差が出ることを意味します。

転職にあたって居住地を変える場合は、転職先の給与だけでなく、その州や市の税制や生活コストも踏まえて総合的に判断することが重要です。

とはいえ、税金面も含めて各地域や企業の情報を自分でリサーチするのは、時間も手間もかかります。

アメリカの就職・転職を専門とするActusでは、現地の税制や雇用事情に詳しいリクルーターが、あなたの希望に合わせた実践的なアドバイスを提供します。 アメリカでの転職活動をより効率的に進めるなら、まずは履歴書の簡単登録、またはお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

アメリカの税金に関するFAQ

アメリカの税金に関して、よくある質問とその回答をご紹介します。

アメリカの税金に関するFAQ

アメリカの給与から差し引かれる税金には、以下のものがあります。

  • 連邦所得税
  • 社会保障税
  • メディケア税
  • 州所得税
  • 地方所得税

差し引かれる税金や税率は州や市によって異なり、州所得税や地方所得税の差し引きがない場合もあります。

また、州独自の保険料が税金と同様に給与から差し引かれる場合があります。

最後に、アメリカでの税金に関してよくある質問とその回答を紹介します。

Q
アメリカに住民税はありますか?
A

アメリカには、日本の住民税に相当する税金はありません。ただし、住む場所によっては、州や市が独自に課す税金があります。

例えば、ニューヨーク市に住む場合、4~10.9%の州所得税に加えて、約3%の地方所得税がかかります。一方で、マイアミ市(フロリダ州)に住む場合は州所得税や地方所得税は0%です。

アメリカでは、どこに住むかで最終的な納税額が大きく異なります。

Q
アメリカに消費税はありませんか?
A

アメリカには、日本のような全国一律の消費税はありません。その代わりに、州や地方が独自に課す「売上税(Sales Tax)」があります。

日本の消費税はあらゆる商取引に課税されるのに対し、アメリカの売上税は主に消費者が商品を購入する際に課せられるものです。

売上税の税率は州や市で設定され、購入する場所で支払う税金額に大きな違いが出る場合があります。

Q
アメリカで所得税がない州はありますか?
A

はい、2026年4月現在、以下の州では個人に州所得税を課していません。

  • アラスカ州
  • フロリダ州
  • ネバダ州
  • サウスダコタ州
  • テネシー州
  • テキサス州
  • ニューハンプシャー州
  • ワシントン州
  • ワイオミング州

※ワシントン州では給与に対する州所得税の課税はありませんが、高額な投資利益(キャピタルゲイン)には税金が課せられます。

所得税を課さない州では、売上税や固定資産税が高めに設定されている傾向があります。州ごとの税金を見る際は、トータルの税金負担額を確認しましょう。

まとめ

アメリカでは、連邦税に加えて、州や市ごとの税があり、住む場所によって異なる税制度が適用されます。

中でも所得税は、居住地や勤務地によって負担額に差が出るため、事前に確認しておくことが欠かせません。

また、日本のような年末調整の仕組みがないため、基本的に個人での確定申告が必要になります。

現地の税制を踏まえると、米国の転職活動では、給与額だけでなく、地域ごとの税負担や控除の適用を含めて比較することが重要です。

アメリカの税制を正しく理解し、キャリア選択の際にも役立てましょう。

※当ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務に関する助言を行うものではありません。

具体的な税務上の判断や手続きについては、税理士事務所などの専門家にご確認ください。


👉転職を考えている方はこちら

👉 新規登録はこちら