アメリカで働いたことがある場合、「年金はどうなるのか?」「受給のためにどのような手続きが必要なのか?」と疑問に感じることもあるのではないでしょうか。

日米では年金制度に違いがあり、内容を把握できていないと、本来受け取れる年金を受給できない可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、アメリカの年金制度の基礎から、受給条件や申請方法、注意点までを解説します。

将来の年金受給に影響する福利厚生の見方にも触れながら、キャリアを考える上で押さえておきたいポイントについてもお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。

アメリカの年金制度の基礎知識

アメリカの社会保障制度は「Social Security」と呼ばれ、年金制度は障害給付や遺族給付と併せて「Old-Age Survivors and Disability Insurance(OASDI)」といいます。

ここでは、アメリカの年金制度について理解を深めるため、日本の制度との違いや加入期間の見方について見ていきましょう。

日米の年金制度比較

日本とアメリカの年金制度は、現役世代が納めた保険料をそのまま今の年金受給者への給付に当てる「賦課方式」を採用しています。

それぞれの国の公的年金制度の詳細を比べると以下のようになります。

 アメリカ日本
年金の種類・老齢・遺族・障害保険(OASDI)・国民年金 ・厚生年金
被保険者就労者(自営業者含む)20歳以上60歳未満の全居住者
保険料率/12.4%(労使折半)  18.3%(労使折半) ※厚生年金加入の場合   ※国民年金加入の場合は年度ごとに定められた額
受給に必要な年数約10年 (クレジット制:40クレジット)10年
支給開始年齢66~67歳 ※生年月日による (62歳から繰り上げ可能)65歳 (繰り上げ・繰り下げ制度あり)

厚生労働省「主要国の年金制度の国際比較」を参考に作成

日本では「国民皆年金」を掲げ、自営業者や無業者を含むすべての居住者が被保険者となりますが、アメリカでは無業者は被保険者に含まれません。

保険料の支払いについては、会社員の場合、どちらの国でも勤務先と被保険者自身で折半する「労使折半」となっています。

アメリカの「クレジット」の仕組み

アメリカでは年金の受給資格の判断に「クレジット」という単位を採用しています。

クレジットは、収入額に応じて付与されるもので、1年間で獲得できるのは4クレジットまでです。そのため、受給資格を満たす40クレジットの獲得のためには、最低10年の就労期間が必要です。

なお、40クレジットを超えるクレジットを獲得しても、支給額に影響することはありません。給付額は就労期間中の収入履歴に基づいて決定されます。

アメリカと日本の間には2005年10月発効の「社会保障協定」があり、次の2つのことが定められています。

  • 保険料二重負担の防止:5年以内の派遣の場合、派遣元の年金制度加入を継続し、相手国の保険料支払いを免除される
  • 年金の受給資格の確保:両国での加入期間を合算できる

本来、それぞれの国での年金加入期間が10年を下回る場合、年金の受給資格は得られません。

例えば、アメリカで7年、日本で5年働いた場合は、どちらの国の受給資格も満たせないことになります。

しかし、協定により合算が可能となり、日米で通算10年の加入期間があれば、年金を受け取れるようになりました。

ただし、社会保障協定の適用を受けるためには申請が必要です。

アメリカの年金を受け取る方法は?

協定に基づく合算制度を利用し、アメリカの年金を受給するための条件や申請方法、注意点を確認しましょう。

アメリカの年金を受給するための条件

社会保障協定の適用を受けてアメリカの年金を受給するためには、申請にあたり、以下の条件があります。

  • 日米の年金加入期間が通算で10年(40クレジット相当)以上である
  • アメリカで最低6クレジット(1年6カ月以上の就労に相当)を獲得している
  • 62歳以上である(※満額受給の場合は66~67歳以上)

受給額や受給開始時期は個々の加入状況により異なるため、事前に詳細を確認することをおすすめします。

年金受給の申請方法

受給申請では、以下の書類を最寄りの年金事務所に提出します。

  • 合衆国年金の請求申出書(年金事務所の窓口、または日本年金機構のウェブサイトからダウンロード)
  • 米国年金申請書類(SSA-1、SSA-21など)
  • 戸籍謄本
  • 戸籍抄本またはパスポート
  • 基礎年金番号通知書または年金証書の写し
  • 組合員証の写し(加入がある場合)
  • 合衆国社会保障番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)を確認できるもの

提出された申請書類は、日本年金機構を通じて在日米国大使館に送付され、審査が行われます。

審査後に決定通知が届くまでは、数カ月かかるとされています。

なお、社会保障番号が不明な場合も申請は可能です。その場合、書類の提出後に大使館領事部と直接やりとりをして、個人情報をもとに番号を確認することになります。

【参考】

年金受給の注意点

ここまで見てきたとおり、アメリカの年金を受給するためには申請が必要です。申請と受給に際して、次の3つの点に注意しましょう。

「さかのぼり」の制限

受給申請が遅れた場合、さかのぼって受給できるのは、退職年金の場合は6カ月前の分まで、障害年金の場合は12カ月前の分までです。なお退職年金については、さかのぼり受給は満額受給開始年齢に達している場合に限られます。

受給申請は受給権発生の3カ月前から可能なので、計画的に手続きを進めましょう。

繰り上げ受給による減額

満額受給開始年齢(66~67歳)を前に、62歳から「繰り上げ受給」をする場合、生涯の受給額は減額されます。

就労による「支給停止」

繰り上げ受給する場合、アメリカ国外で月45時間を超えて働くと、年金は全額支給停止となります。

日本で仕事を続けている場合は、満額受給開始年齢(66~67歳)を待って申請することで支給停止を避けられます。

アメリカの年金手続きでは、日米の加入期間の確認や受給時期の判断などがあり、難しさを感じる場合もあるかもしれません。手続きに不安がある場合は、専門家に相談するようにしてください。

【参考】日本年金機構「協定相手国別の注意事項(アメリカ)」

年金まで考えたキャリア選びのポイント

ここまでアメリカの公的年金制度について見てきましたが、退職後の生活をより安定させるためには、企業年金の活用も重要です。

企業年金は企業ごとに内容が異なるため、アメリカで働く際は、給与額だけでなく、制度の仕組みや受給条件も確認するようにしましょう。

例えば、企業年金の一種である「401(k)」は、従業員が給与の一部を積み立てていく退職金制度です。企業がその積立額に対して、一定の割合で上乗せする「マッチング」が設けられている場合があります。

マッチングの有無や上乗せの割合なども、転職先を考える上で見ておくとよいポイントです。

とはいえ、実際の転職活動では、条件の詳細を把握したり、有利な条件を引き出したりするのにハードルを感じることもあるでしょう。

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アメリカの年金についてのFAQ

最後に、アメリカの年金についてよくある質問とその回答をご紹介します。

Q
アメリカで何年働いたら年金がもらえますか?
A

アメリカの年金を受給するには、目安として10年(40クレジット)の就労が必要です。

アメリカの制度では、年金の受給資格を「クレジット」という単位で判断します。

クレジットは収入額に応じて算出されるもので、年金の受給資格を得るには40クレジットが必要です。

1年間に獲得できるのは最大4クレジットとなるため、受給に必要な40クレジットを年数に換算すると、最短で「10年」となります。

なお、日米間には「社会保障協定」があり、両国での年金加入期間が合計10年を超えている場合、両国の年金を受給できる可能性があります。

Q
アメリカの年金を日本で受給すると減額されますか?
A

繰り上げ受給の場合を除き、日本での受給で減額の措置はありません。

以前は、日本の厚生年金などを受給している場合に、アメリカの年金額が一定額減らされる「WEP(Windfall Elimination Provision)」という制度がありました。

2025年1月にこの制度を廃止する法律が成立し、2024年1月分以降の年金については、減額措置が撤廃されました。

詳しくは日本年金機構の案内も確認してください。

Q
アメリカの年金を日本で受け取るにはどうすればいいですか?
A

アメリカの年金を受給するには、日本の年金事務所の窓口での申請が必要です。

「合衆国年金の請求申出書」と必要書類を提出してください。

米国大使館領事部年金課での審査通過後、米国社会保障局での審査を経て、決定通知が届きます。

全審査を終了し、結果が出るまでには数カ月かかります。

詳しくは在日米国大使館と領事館の案内をご確認ください。

まとめ

日本とアメリカの間には社会保障協定があり、両国の年金加入期間の合算による年金の受け取りが可能です。

合算ルールに基づき年金を受給するためには、加入期間の条件や申請方法などを把握しておく必要があります。

必要な手続きに関しては、制度変更が加わる場合もあるため、最新の公式情報を確認するようにしましょう。

また、今後アメリカで働く場合は、年金に関連して、企業でどのような退職プランを用意しているかも見ておくことが大切です。

本記事で制度上のポイントを押さえ、キャリア選択の際の条件確認にも生かしてください。

※本内容はアメリカ年金に関する一般的な情報として記載しております。正確性や最新の制度については保証いたしかねます。

また、本内容に関する個別のご質問やお問い合わせには対応いたしかねますので、詳細につきましては専門機関へ直接お問い合わせくださいますようお願いいたします。


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