アメリカでの働き方に興味を持ったとき、現地の休暇制度について気になる方も多いのではないでしょうか。
アメリカで就職・転職を考えるとき、「日本のような退職金はもらえるのだろうか」と気になる方は多いのではないでしょうか。日本では、退職一時金や企業年金といった退職給付を受け取るケースがありますが、アメリカでは退職時にまとまった金額を受け取れる制度が一般的に整備されているわけではありません。
その代わり、老後資金を準備する制度として401(k)などの退職プランがあり、会社都合の退職やレイオフ時には、会社によってセベランスパッケージ(severance package)と呼ばれる補償が提示されることがあります。このように、退職時に会社から提供されるものは様々あり、会社によって大きく異なっています。
そこで、この記事では、転職前に主に待遇面で何について考えればよいのか悩んでいる方の疑問に答えるべく、アメリカの退職金にあたる制度の考え方と、具体的な制度としての401(k)の扱い方やセベランスパッケージの確認・交渉ポイントについて解説します。
アメリカに退職金はある?日本との違いを整理
日本の退職金とアメリカの退職時補償は何が違う?
結論から言えば、アメリカでは日本の退職金制度と同じように、退職時に必ずまとまったお金が支払われる仕組みは一般的ではありません。連邦法上、退職時に必ず退職金を支払わなければならないというルールがあるわけではなく、退職時の支払いは会社の制度や契約内容によって決まります。
そのため、同じアメリカで働く場合でも、401(k)のマッチング拠出、株式報酬、セベランスパッケージの有無などは企業によって大きく異なります。日本の感覚で「長く勤めれば退職金があるはず」と考えていると、転職時の判断を誤る可能性があります。
退職時に確認すべきお金・ベネフィットとは?
アメリカで退職時・転職時に確認すべきものは、退職金という一つの項目だけではありません。アメリカの退職時に得られるお金やベネフィットとしては以下のものが代表的です。
- 老後資金としての401(k)と会社によるマッチング拠出
- 株式報酬の権利確定
- 未消化PTO(Paid Time Off:有給休暇制度)の取り扱い
- 健康保険の継続
- ボーナスやコミッション
- ビザサポート
- 退職後の競業避止義務や守秘義務
このように、退職時・転職時に考えるべき項目が多岐にわたるため、目先の年収が高く見えても、退職プランや健康保険、株式報酬の条件などによって、実質的な待遇は大きく変わります。そのため、アメリカで転職先を比較する際は、給与だけでなく、退職時に自分の資産として残るもの、会社都合退職時に受けられる可能性がある補償、退職後も続く義務まで含めて見ることが大切です。この中でも特に長期的な資産形成という意味で従業員にインパクトを持ちやすいのが401(k)です。そのため、ここでは401(k)についてより詳しく解説をすることにしましょう。
401(k)とは?転職時に確認したいアメリカの退職プラン

アメリカで老後資金づくりの中心となる制度の一つが401(k)です。401(k)は、日本の退職一時金のように退職時に会社からまとまった金額が支払われる制度ではなく、従業員が給与の一部を積み立て、運用成果に応じて将来の受取額が変わる退職プランです。
会社によっては、従業員の拠出額に応じて会社が上乗せ拠出を行うマッチング制度があります。たとえば、従業員が給与の5%を拠出した場合、会社も一定割合を追加で拠出してくれることがあります。ただし、会社負担分には権利確定スケジュールが設定されている場合があり、転職のタイミングによっては未確定分を受け取れない可能性があります。
拠出限度額は年によって見直されるため、実際の手続きでは勤務先のプラン資料やIRSの最新情報を確認しましょう。
転職時の401(k)はどうする?残す・移す・IRAに移す・現金化する
アメリカで転職する場合、現在の勤務先で積み立てた401(k)をどう扱うかも重要な判断になります。一般的には、転職時の401(k)の選択肢としては以下の4つがあります。
- 以前の会社のプランに残す
- 新しい会社の401(k)に移す
- IRA(Individual Retirement Account:個人退職口座)に移す
- 現金化する
以前の会社のプランに残す方法は、投資商品や手数料が有利な場合には選択肢になりますが、複数口座の管理が煩雑になることがあります。
新しい会社の401(k)に移す方法は一元管理しやすい一方、新しい会社のプランが受け入れ可能か、手数料や投資商品を確認する必要があります。
IRAに移す方法は選択肢が広がりやすい反面、必ずしも有利とは限らないため、手数料や管理のしやすさを比較しましょう。
ただし、401(k)やIRAに移す場合は、できるだけDirect Rollover(直接ロールオーバー)を選ぶと安心です。本人宛てに支払われる形にすると、通常20%の源泉徴収が行われ、60日以内に手続きを完了しない場合には課税や追加税の対象になる可能性があります。
現金化も税金や早期引き出しの追加税につながる場合があるため、慎重に判断しましょう。
セベランスパッケージとは?交渉と退職前の確認ポイント
セベランスパッケージは会社都合退職時の補償条件
セベランスパッケージとは、主にレイオフや会社都合の退職時に会社から提示される退職条件のことです。日本語では「退職手当」「退職補償」「解雇手当」のように訳されることがありますが、日本の退職金とは性格が異なります。
例えば、FacebookやInstagramを運営するMeta社が2022年に約1万人の従業員の解雇を発表した際には、基本給の一定期間分だけでなく、移民向けにビザに関する専門家によるアドバイスや、6ヶ月分の健康保険の継続、3ヶ月分のキャリアサポートなど様々な補償を提供しました。
このように、アメリカでは給与相当額だけでなく、退職後の生活や次の就職活動を支える複数の条件を含んだ補償がセベランスパッケージとして提供されることがあります。
このセベランスパッケージの一般的な内容としては下記の項目が挙げられます。
- 数週間分から数ヶ月分の給与相当額
- 未払いのボーナスやコミッション
- 未消化PTO(有給休暇)
- 健康保険の継続、再就職支援
- 会社貸与品の扱い
- NDA(秘密保持契約)
- 競業避止義務
- 会社に対する請求権を放棄する条項
このセベランスパッケージに含まれる内容は会社や職位、勤続年数、退職理由によって異なります。
重要なのは、セベランスパッケージは必ず支払われるものではないという点です。アメリカの公正労働基準法ではセベランスの支払いは義務づけられておらず、雇用主と従業員の合意事項とされています。そのため、雇用契約の内容やオファーレター、会社の過去の運用を確認することが大切です。
セベランスパッケージは交渉できる?確認すべき項目
セベランスパッケージは、状況によっては交渉できることがあります。レイオフ時には動揺しているかもしれませんが、会社から提示された書面にその場で署名するのではなく、まずは先述したセベランスパッケージに含まれる各項目について内容を落ち着いて確認しましょう。
レイオフ時には退職金がいくらもらえるのかという額面上の金額に目が行きがちですが、健康保険の継続について確認することも重要です。アメリカでは健康保険の空白期間に怪我や病気をしてしまうと、数百万円の請求が来ることも少なくありません。こうした事態を避けるため、COBRAによって退職後もこれまでの健康保険を一時的に継続できるかを確認しましょう。ただし、退職後は会社負担分も含めた保険料を自分で負担することになり、通常の在職中よりも大きな負担になる場合があります。そのため、セベランスパッケージを確認する際は、COBRAを利用できるかだけでなく、会社がCOBRA保険料を数か月分補助してくれるかも重要な交渉項目になります。
H-1BやL-1など、雇用主に紐づく就労ビザで働いている方は、雇用終了日について慎重な確認が必要です。一定の就労ビザでは、雇用終了後に最大60日のGrace Period(猶予期間)が認められる場合がありますが、この期間はセベランスの支払いが続いているかどうかではなく、原則として雇用終了日や就労終了日を基準に考える必要があります。セベランスが給与の分割払いのような形で支払われていても、公式な雇用終了日がすでに過ぎていれば、猶予期間が始まっている可能性があります。そのため、退職日、最終勤務日、給与支払いの終了日、移民局上の雇用終了日を人事に確認し、必要に応じて移民法の専門家に相談しましょう。
転職前は年収だけでなく退職後に残る条件を確認する
アメリカで転職を検討する際は、年収だけでなく、退職時に何が残るかまで確認しておくことが大切です。ここまで説明してきたような以下のポイントは後から差が出やすい項目です。
- 401(k)のマッチング拠出や権利確定スケジュール
- 未消化PTO
- ボーナスやコミッション
- 株式報酬
- 健康保険
- ビザサポート
- セベランスパッケージの有無
内定前にはオファーレターやベネフィット資料を確認し、退職前には401(k)や未消化休暇、ボーナス、株式報酬の条件を整理しておきましょう。目先の年収だけでなく、退職プランや将来の資産形成まで含めて比較することが、賢い転職判断につながります。
まとめ:アメリカでは「退職金」だけでなく退職後の条件まで確認しよう

アメリカには、日本のように退職時に一律でまとまったお金が支払われる退職金制度は一般的ではありません。そのため、転職を考える際は、401(k)、会社のマッチング拠出、権利確定スケジュール、セベランスパッケージ、未消化PTO、健康保険、株式報酬、ビザサポートなどを総合的に確認することが大切です。
目先の年収が高く見えても、401(k)の会社負担が少ない、健康保険の自己負担が大きい、株式報酬の権利確定まで時間がかかるといった場合、実質的な待遇は想像より低くなることがあります。内定前にはオファーレターやベネフィット資料を確認し、退職前には401(k)や未消化休暇、ボーナス、株式報酬の条件を整理しておきましょう。
Actusでは、アメリカでの就職・転職を考える方に向けて、求人探しだけでなく、待遇条件の確認やキャリア相談もサポートしています。退職金、401(k)、セベランスパッケージまで含めて自分に合った転職先を検討したい方は、Actusの新規登録やお問い合わせフォームから相談してみてください。
よくある質問(FAQ)
- Qアメリカには退職金がありますか?
- A
日本の退職金と同じような一律の制度は一般的ではありません。会社によって401(k)、セベランスパッケージ、株式報酬などの制度内容が大きく異なります。入社前や転職前に、ベネフィット資料や雇用契約を確認しましょう。
- Q401(k)は退職したらどうなりますか?
- A
退職後も、権利確定している401(k)残高は原則として自分の資産です。以前の会社のプランに残す、新しい会社の401(k)に移す、IRAにロールオーバーするなどの選択肢があります。現金化は税金や追加税の負担につながる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
- Qセベランスパッケージは必ずもらえますか?
- A
必ずもらえるものではありません。会社の制度、雇用契約、退職理由、個別の合意によって異なります。提示された場合は、支払い額だけでなく、健康保険、未消化PTO、ボーナス、株式報酬、守秘義務なども確認することが大切です。
- Qセベランスパッケージは交渉できますか?
- A
状況によっては交渉できることがあります。勤続年数、業務への貢献、引き継ぎへの協力、健康保険の継続、退職日の調整などを根拠に、丁寧に相談するとよいでしょう。ただし、署名前に内容を確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
- Qアメリカで転職するとき、退職金以外に何を確認すべきですか?
- A
401(k)のマッチング拠出や権利確定スケジュール、未消化PTO、ボーナス、コミッション、ストックオプションやRSU、健康保険、ビザサポート、特にレイオフ時にはセベランスパッケージの内容を確認しましょう。給与だけでなく、総合的な待遇を比較することが重要です。
