アメリカで提示される年収は、そのまま受け取れる金額ではありません。給与からは連邦・州・市の所得税に加え、Social SecurityやMedicareのための税金、健康保険料、401(k)への拠出などが差し引かれます。

また、州や市によって所得税の有無や税率が異なるため、同じ年収でも勤務地によって手取りが大きく変わります。この記事では、アメリカの所得税の仕組みと確定申告について解説し、転職オファーを税引後の金額で比較する方法を紹介します。

オファー額と手取りに差が生じる理由

Gross PayとNet Payは異なる

転職オファーに記載される年収は、通常Gross Pay(税引前の額面給与)です。実際に銀行口座へ振り込まれるのは、税金や保険料などを差し引いたNet Pay(手取り)になります。

主な差引項目は、連邦所得税、州・市の所得税、FICA、健康保険料、401(k)への拠出などです。すべての地域で州税や市税がかかるわけではなく、福利厚生の自己負担も会社によって異なります。そのため、年収だけでは実際の待遇を判断できません。

FICAは所得税とは別に差し引かれる

所得税とは別に、給与からはFICAも差し引かれます。FICAは、退職後の年金や障害・遺族給付を支えるSocial Securityと、主に65歳以上を対象とする公的医療保険であるMedicareの財源となる税金です。

従業員の負担率は、Social Securityが6.2%、Medicareが1.45%です。2026年のSocial Security税は年収184,500ドルまでの部分にかかり、それを超える部分にはかかりません。Medicare税は給与全額にかかり、勤務先は年間賃金が200,000ドルを超えた部分から0.9%のAdditional Medicare Taxも源泉徴収します。

たとえば年収100,000ドルなら、Social Security税は6,200ドル、Medicare税は1,450ドルです。合計7,650ドルが、所得税とは別に給与から差し引かれます。

アメリカの所得税は連邦・州・市の三層構造

連邦所得税は所得の各部分に異なる税率がかかる

アメリカの連邦所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる累進課税です。ただし、最も高い税率が年収全体にかかるわけではありません。所得を複数の段階に分け、それぞれの部分に異なる税率を適用します。

2026年に単身者として申告する場合、課税所得に対する税率は次のとおりです。

課税所得税率
12,400ドル以下10%
12,400ドル超~50,400ドル12%
50,400ドル超~105,700ドル22%
105,700ドル超~201,775ドル24%
201,775ドル超~256,225ドル32%
256,225ドル超~640,600ドル35%
640,600ドル超37%

税率をかけるのは額面年収ではなく、控除後のTaxable Income(課税所得)です。2026年のStandard Deduction(標準控除)は、単身者の場合16,100ドルです。

たとえば単身者で年収100,000ドル、ほかに特別な控除がない場合、標準控除を差し引いた課税所得は83,900ドルになります。これに22%を一律でかけるのではなく、次のように計算します。

  • 最初の12,400ドルには10%
  • 次の38,000ドルには12%
  • 残りの33,500ドルには22%

連邦所得税は合計約13,170ドルです。最後の所得部分に適用される税率は22%ですが、額面年収に対する実際の負担割合は約13.2%となります。なお、この金額に州・市の所得税やFICAが加わります。

州・市の所得税によって手取りは大きく変わる

州・市の所得税は地域によって異なるため、手取りも大きく変わる点には注意が必要です。

一口に州・市の所得税といっても、累進税率を採用する州、一律税率の州、一般的な給与所得に個人所得税を課さない州があり、一部の自治体では市所得税もかかります。

たとえば、単身・扶養なしで年収100,000ドルを受け取り、ワシントン州に居住する場合と、ニューヨーク市に居住する場合を比較してみましょう。ワシントン州には個人所得税がありません。これに対し、ニューヨーク市の居住者には、ニューヨーク州所得税に加えて市所得税もかかります。

税額控除や健康保険料などを考慮せず、2026年の公式源泉徴収表を用いて簡易的に試算すると、次のようになります。

年間の負担ワシントン州ニューヨーク市
連邦所得税約13,170ドル約13,170ドル
Social Security・Medicare約7,650ドル約7,650ドル
州所得税0ドル約4,895ドル
市所得税0ドル約3,724ドル
税引後の概算額約79,180ドル約70,561ドル

この例では、同じ年収でも手取りに年間約8,600ドル、月額では約720ドルの差が生じます。あくまでも制度の違いを示すための概算ではありますが、年収が同じであっても州や市によって手取りが大きく変わることには注意が必要です。

転職オファーを比較するときは、提示年収だけでなく、勤務地や居住地に応じた州・市所得税を差し引いた後の金額まで確認しましょう。

州所得税がない地域が必ずしも有利とは限らない

州所得税がなければ、ほかの条件が同じ場合には手取りが多くなります。しかし、実際の暮らしやすさは税金だけでは決まりません。 家賃、売上税、医療保険料、通勤費なども地域によって異なるためです。転職先を比較するときは、税引後の手取りから生活費を差し引き、実際に自由に使える金額まで考える必要があります。

在米日本人が知っておきたい確定申告

ここまで、連邦・州・市の所得税によって給与の手取りが変わる仕組みを説明してきました。ただし、毎回の給与から差し引かれる所得税は、その年の最終的な税額ではありません。勤務先が見積額を源泉徴収し、翌年の確定申告で実際の年間税額との差を精算します。

そのため、アメリカで働く場合は、給与からどの程度の税金が差し引かれるかだけでなく、源泉徴収された税金を確定申告でどのように精算するのかも理解しておくことが重要です。

源泉徴収額と実際の税額の差は確定申告で精算される

勤務先は、入社時などに従業員が提出するForm W-4の内容をもとに、年間の税額を見積もってWithholding(源泉徴収)を行います。

結婚、出産、転職、昇給、副業の開始などで収入や家族構成が変わると、源泉徴収額と実際の年間税額に差が生じることがあります。この差は翌年のTax Return(確定申告)で精算され、多く差し引かれていれば還付を受け、不足していれば追加で納付します。

たとえば、年の途中で子どもが生まれ、税額控除の対象になったにもかかわらずW-4を変更しなかった場合、給与から税金が多めに差し引かれ、確定申告で還付を受ける可能性があります。反対に、副業などで収入が増えたのに源泉徴収額を調整しなければ、追加納付が必要になる場合があります。

W-4は年の途中でも変更できます。家族構成や収入が大きく変わったときは見直し、源泉徴収額を実際の税額に近づけることが重要です。

Form W-2を使って原則4月15日までに確定申告する

会社員が確定申告をするときは、勤務先から発行されるForm W-2を使用します。W-2は日本の源泉徴収票に近い書類で、前年に受け取った給与と、給与から差し引かれた所得税、Social Security税、Medicare税などが記載されています。

勤務先は原則として翌年1月31日までにW-2を従業員へ交付します。従業員はその内容をもとに、原則として4月15日までに確定申告を行います。年内に転職して複数の会社から給与を受け取った場合は、それぞれの勤務先から発行されたW-2が必要です。

在米日本人は、ビザの名称だけでなく、税務上の居住者に該当するかによって申告方法が変わる場合があります。日本にも所得や資産がある場合は、国際税務に詳しい専門家へ相談すると安心です。

転職オファーは税引後と総報酬で比較する

転職先を選ぶときは、Base Salary(基本給)だけでなく、税引後の手取りとTotal Compensation(総報酬)を比較しましょう。ボーナス、株式報酬、医療保険、401(k)への会社拠出、有給休暇などによって、基本給が同じでも実質的な待遇は変わります。

比較するときは、まず基本給、ボーナス、株式報酬を確認し、連邦・州・市の所得税とFICAを見積もります。そこから健康保険料や401(k)への拠出を差し引き、会社負担の福利厚生と勤務地の生活費まで確認すると、実際の条件を判断しやすくなります。

Actusでは、アメリカでの就職・転職を考える方に向けて、都市別・職種別の求人情報とキャリア相談を提供しています。給与レンジだけでなく、勤務地、福利厚生、職務内容、ビザサポートなどを含めて比較したい方は、Actusへの新規登録やお問い合わせフォームからのキャリア相談をぜひご活用ください。

まとめ

アメリカの給与からは、連邦・州・市の所得税に加え、Social SecurityやMedicareなどが差し引かれます。連邦所得税は累進課税で、州・市の税制は勤務地や居住地によって異なるため、同じ年収でも手取りは同じではありません。

転職オファーを比較するときは、提示年収だけでなく、税引後の手取り、福利厚生を含む総報酬、地域の生活費を確認しましょう。また、源泉徴収額は確定申告で精算されるため、収入や家族構成が変わったときはW-4を見直し、確定申告ではW-2を準備することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q
アメリカの所得税は何%ですか?
A

2026年の連邦所得税率は10~37%です。ただし、年収全体に一つの税率がかかるのではなく、控除後の課税所得を段階に分けて税率を適用します。州・市の所得税が加わる場合もあるため、実際の負担率は所得、申告区分、居住地などによって異なります。

Q
年収100,000ドルの手取りはいくらですか?
A

単身・扶養なしの簡易試算では、連邦所得税とFICAを差し引いた後は約79,180ドルです。州・市の所得税、健康保険料、401(k)への拠出などによって、実際の手取りはさらに変わります。

Q
アメリカでは確定申告を自分で行う必要がありますか?
A

勤務先が所得税を源泉徴収していても、それは年間税額の見積もりです。申告義務がある人は、W-2などを使って確定申告を行い、実際の年間税額との差を精算します

Q
州所得税がない州へ転職すれば手取りは増えますか?
A

州所得税だけを見れば、手取りが増える可能性があります。ただし、家賃、売上税、医療保険料、給与水準なども地域によって異なります。税引後の手取りから生活費を差し引いた金額で比較することが重要です。


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