米労働省が3日発表した4月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から17万5000人増えた。
24万人程度だった市場予想を下回った。新型コロナウイルス禍後の過熱感は緩やかに和らぎつつある。
レジャー関連や政府部門で前月までの高い伸びが一服した。
2月の伸びは27万人から23万6000人に、3月は30万3000人から31万5000人にそれぞれ修正された。
失業率は3.9%だった。エコノミストは3月から横ばいの3.8%を予想していた。低い水準だが基調が上向きつつある。
米債券市場では統計の公表後に金融政策の先行きを映す2年債利回りが4.86%から0.1%程度低下した。「雇用は弱まったが個人消費の伸びを維持できる程度に力強い」(PNCフィナンシャル・サービシズ)と歓迎する声が広がった。
「過熱」の象徴だった求人件数は3月に848万8000件と前月から3.7%減った。コロナ禍前より100万件程度多いが、ピークだった22年3月より3割少ない。米求人サイト「インディード」の求人広告は4月も前年より13%低い水準だ。
「仕事が見つからない」。インターネットの検索頻度を示す「グーグルトレンド」では、こんな言葉がコロナ禍前の水準近くまで戻ってきた。引く手あまたの状況が変わり、仕事探しのコツを紹介するサイトなどを探す人が増えたようだ。
賃上げの勢いも減速を続けている。4月の平均時給は前月比で0.2%上昇し、伸びは市場予想の0.3%を下回った。前年同月比の伸びも3.9%と3月の4.1%から縮まった。
23年から急増した移民の流入が、人手不足を和らげている。米議会予算局(CBO)は24年も通常の3倍となる300万人超の移民が米国内に入ると予測した。
アトランタ連銀の賃金トラッカーの前年比上昇率は3月に4.7%と、ピークだった22年8月の6.7%から大幅に低下した。
4月から大手ファストフード店従業員の最低賃金を20ドル(3000円相当)まで25%引き上げたカリフォルニア州では、賃上げコストを価格に転嫁しきれないとして雇用を絞るチェーンも出た。
米国の物価上昇率が1〜3月に想定を上回る強さを示し、利下げシナリオの修正を迫られる米連邦準備理事会(FRB)にとって雇用の動向は重要だ。
1日の記者会見で追加利上げの可能性を聞かれたパウエル議長は、いまの金利水準でも景気の減速効果を生み出せているという証拠として求人件数の減少を挙げた。
物価が高止まりしても、雇用情勢が減速傾向を保っている限りは、金利をさらに引き上げるより、今の高金利政策をより長く維持すればよいという考えだ。
もっとも米国の労働市場が落ち着くペースは1年前の予想よりも緩やかだ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者は23年3月に示した経済予測で、23年末までに失業率が4.5%まで上昇するとみていた。実際は4%を下回る期間が2年以上続いた。
雇用がさらに底堅さを示したり、賃上げの勢いが想定より根強くなったりすれば、FRBの利下げはさらに遠のく。
Original Article from 日本経済新聞 (click here)