ニュースレター

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Newsletter 2014年11月号 企業不祥事対応では、とにかくウソをつくな
((正直者はバカを見るのか?))

不祥事に巻き込まれたとき、関係者のアタマを過るのは「正直者はバカを見るのかなぁ?」という疑問。 「正直に事実関係を話したら自分に不利になるんじゃないか?」「その証拠を正直に出したら会社も困るんじゃないのか?」というような想いだ。 

つまり、バカ正直では、自分が困るだけでなく、会社の迷惑にもなるのではないのか?

ならば、会社の仲間や家族のことを考えて、それなりに上手くウソをついた方がいいのではないか? 具体的には、「とにかく話を否定すればいいんじゃないか」「会社に有利な話にすればいいんだろう」「空気を読んで証拠のメールはさっさと削除すればいいのでは」等々、ということでは?

このような想いは、不祥事に巻き込まれた関係者は、必ず抱くと言ってよい。 

((安心して正直に対応する; 道徳的に正しいからではなく))

では、どうすればよいのか?

答えはシンプルだ。 安心して正直に対応すればよい。 弁護士に正直に事実関係を説明し、証拠は正直に保全に努めればよい。 それが企業不祥事対応を20数年してきた私のアドバイスである。

そう言うと「弁護士の先生はやっぱり世間を知らない」「正義の味方になりたがるから」という声が聞こえてくるが、それは違う。 道徳的に倫理的にどうこう言っているのではない。 戦略的・戦術的に、正直に対応したほうが有利だと言っているのだ。

((ウソはばれるのが、アメリカのシステム))

刑事事件でも民事事件でも、ウソはばれるのが、アメリカのシステムである。 

まず、データの捜査・開示範囲が非常に広範であるので、一人でウソをつき通そうとして、証拠データからばれてしまう。 刑事事件での証拠の捜査範囲は電子データを含めて非常に広範かつ詳細であるし、民事事件では電子データを含めた非常に広範で詳しいディスカバリー(証拠開示)手続きが行われる。 企業絡みの案件で数百万ページのデータなどは当たり前である。

また、企業不祥事では関係者が多数であることが多いので、これらの誰かの口かデータから結局はばれてしまうことが多い。

なお、一昔前までの日本では、証拠開示も限られていたので、ウソをついてもばれないシステムだった、とも見ることも出来るが、日本でもそれはその昔の話のようである。

((ウソがばれると会社は破産、個人は牢屋へのリスク))

企業不祥事対応を長年やっていると、一つ分かることがある。 大体のことは対応が可能だということ。 もう一つ分かるのは、ウソや証拠隠滅がばれた場合、対応が非常に苦しくなるということだ。

民事でも刑事でも、ウソがばれた時点で、「この人・会社はウソつきである」「証拠を隠した」ということが中心になってしまう。 

今年にも、証拠の保全の不備によって「証拠を隠した」として日本の製薬会社に対して60億ドルの賠償金が課せられたばかりである。 世界5大会計事務所の一翼を担っていたアーサーアンダーセンが連邦当局に起訴されて潰れたのも、会計粉飾事件の対応で慌てて「証拠を隠滅した」とされたためである。 

元祖カリスマ主婦のマーサ・スチュアートが懲役に科せられたのも、インサイダー取引に関する捜査のなかで「事実関係について連邦当局に対してウソをついた」との理由であった。 インサイダー取引に関しては有罪となっていない。

ウソや証拠隠滅がばれた段階で、防御の体制は総崩れとなってしまい、会社の起訴や破産、個人が刑事訴追されるリスクが大幅に増えることになる。

((正直に対応すれば、大体のケースは何とかなるもの上記したように、大体の不祥事対応のケースは、落ち着いて対応すれば何とかなるものだ。))

非常に不利な証拠があったり、あってはならない事実関係がある場合はどうなのか? その場合も、まずは何とかなるのが普通である。

逆に言うと、「マズイ!」と思う証拠や事実があるのが不祥事というもので、それが普通なのである。 そのマズイ状況で何とか一緒に対応して行くのが、不祥事対応というものだ。

焦らずに「ウソをつかず」「正直に」対応して、どのような大不祥事も乗り切りたいものである。

齋藤康弘
Partner
Saito Sorenson Lurie LLP
Tel: 212-880-9559
SAITO@SAITOSORENSON.COM
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Newsletter 2014年12月号 大統領命令による移民法
長年にわたって議論されている米国の移民法改革。米国の移民システムは崩壊していると多くの人が考えており、現状のままでは問題は解決されません。既存のシステムにおける問題が、更に山積みになるだけです。移民法改革の是非、改革変更を巧みに操作する為の大統領命令の発令に賛成か反対に関わらず、全ての変更における影響について理解することは重要です。

最近の移民法改革に関する議論において、不法入国した人々への労働許可の提供、超過滞在した人々への大統領命令の発令に焦点が当てられている中、移民雇用に関する変更も議論されています。移民雇用に関しても、外国人が米国労働者から仕事を略奪するとの誤解もあり、センシティブな話題で、変更が必要とされています。

移民雇用に必要な主な改革の一つは、専門家就労ビザ枠の増加です。 H-1Bビザのカテゴリーは、専門職業において、米国博士号(外国で取得した場合、専門業者による学歴評価の手紙が必要)、又はそれ以上の学歴保持者の枠に入る候補者は、20,000人のみとされ、米国学士号(外国の学士号の場合も学歴評価が必要)を取得した候補者は、65,000人のみと定められています(年度によってビザ取得定員数が変更されるので要注意)。H-1Bビザの需要は、2007年のリセッション時に実証されたように、米国経済の状況に基づいています。米国経済低迷の際には、H-1Bビザの需要は極端に下がります。米国経済の回復と同時に、専門職の需要が増加し、H-1Bビザ候補者の必要性が高くなります。現在のH-1Bビザにおける定員数は、雇用者側には不十分です。さらに重要なことは、現在の抽選のようなH-1Bビザのシステムは、米国の雇用者に支持されておらず、外国人にとって、特に米国の大学で学び、米国内における少ない就職先を考えると、公正な方法ではありません。H-1Bビザの大幅な増加は、年間を通じて雇用者が需要の変化に応じ、H-1Bビザ候補者が必要な際に、H-1Bビザを取得させる事を可能にするでしょう。

移民雇用に関して、もう一つの側面が農業です。殆どのアメリカ人は、スーパーマーケットで購入する果物や野菜の生産現状について余り考慮する事がありませんが、全米の多くの農家は、議会が出稼ぎ労働者の流れを維持するために、移民法改革の執行を要求してきました。出稼ぎ労働者なしで生鮮食品が新鮮なまま店舗に到着するとはまず考えられないでしょう。近年、農業で働く出稼ぎ労働者の数を確保することがますます困難になってきています。野菜や果物を植え、育てあげ、農作物を収穫する為に多くの労働者を確保できないという事は、農作物の値段の高騰、若しくは農家の方々は、少数の労働者によって育てられる農作物を選択する事になるでしょう。

最後に、現在の未処理のままのグリーンカード案件の保証に関する考慮事項です。米国にて恒久的に従業員を就労できるようにする為、雇用者がスポンサーとなって永住権を申請した場合、永住権のカテゴリー(EB-1, EB-2, EB-3等)と国籍によりますが、従業員が永住権を取得するまでに、現在2年から12年間かかります。今の所、グリーンカードのカテゴリーに割り当てられたビザ番号は、家族の人数に基づいています。移民法改革の提案には、扶養家族に与えられたグリーンカードは、主な申請者の付加として考慮され、グリーンカード発行限定数にあたる特定のカテゴリーの定員数として数えない事にするという案が含まれています。この様にしてグリーンカードを発行すれば、未処理の案件が減少されると同時に、政府、雇用者、候補者が負担している関連費用削減に繋がります。