2011-08-01
はじめに
夏と言えば、ピクニックやバーベキューなど屋外でのイベントも多く、人々の服装もカラフルに且つ薄着になる時期である。職場での服装規程としてビジネスカジュアルを採用している雇用主が比較的多いように見受けられるが、職場での従業員の服装がカジュアル過ぎる事で様々な問題が発生する可能性が考えられる。服装に関して適切か不適切かを判断する基準は人によって異なるので、雇用主は職場における服装に関する客観的な基準、つまりは服装規程を明確にしておくことが肝要となる。
不適切な服装の従業員への注意の必要性
露出の多い服装の従業員に対して注意をすることで、逆に従業員から「セクシャルハラスメントだ!」と言われないかと心配するマネージャーから相談を受けることがしばしばある。しかし、注意せぬまま放置してしまうと、露出の多い服装の従業員が職場にいることで不快な思いをする他の従業員から逆に苦情が出されることに繋がるだけでなく、セクシャルハラスメント問題に発展する危険性も孕んでいるので、管理職者による迅速且つ的確な対応が求められる。仮に会社で服装規程を備えていないか不確かな場合は、マネージャーの主観に基づき従業員へ注意が為されることになるが、会社としての明確な服装規程が存在していれば、ある程度はマネージャーも客観的に注意し易くなると言えよう。雇用主は、不適切な服装で出社した従業員を一旦帰宅させ、適切な服装に着替えてから出社しなおすよう指示することができるが、従業員への注意が公平に為されているかについては重々気をつけるべきであろう。また、特に宗教的信仰に基づき、特定の服装の着用が必要な従業員に対しては、雇用主は職場にて何らかの調整を図るべきかどうかを確認する必要もでてくるであろう。
服装規程と既存の安全基準規程との関係
雇用主は、人種・肌の色・民族・年齢・性別・宗教或いは障害などへ差別的影響がなく、一様に適用される条件においては、職場にて標準とされる服装や身だしなみを定め、それを適用させることが可能であり、とりわけ健康や安全を理由とする服装や身だしなみに関する規程は義務付けて然るべきである。例えば、工場で機械を操作する従業員に対し、危険な目に遭い易いジュエリーやヘアスタイルを禁止することは、それがたとえ従業員の性別・人種の背景あるいは宗教の慣習に対立するとしても、従業員の健康と安全を保護する目的での規程であれば行使は可能となる。
また、例えば通常はオフィス勤務の従業員がオフィスに隣接する工場や倉庫へ立ち入る場合、彼らにも工場や倉庫での安全な服装規程が適用されなければいけない。一般的には、工場や倉庫へ立ち入る際はつま先が覆われていない靴では安全と言えないので、オフィス内勤務では許容範囲となっているそれらを着用する事は不適切とすべきだからだ。雇用主は、工場や倉庫へ立ち入る可能性のある全従業員が規程を理解し実行しているかどうかを確実にしておく必要がある。
服装規程を見直し・作成する際の注意点
以下は服装規程を作成するに当たっての主な注意点である:
-従業員の遂行する職務に合致した適切な服装の基準を定めること(例えば、大半を倉庫で働く従業員とオフィス内勤務の従業員とでは要求される服装基準に違いがあって然るべきである。)
-どのような服装が職場において適切か不適切かを可能な限り明確にすること(人の受け取り方は様々ゆえ、適切・不適切とみなされる服装の例を表にすると分かり易い。)
-或る特定のグループに対して差別的とみなされるような内容になっていないかを確認し、必要に応じて修正すること
-既存の安全基準規定に沿った内容であること
-従業員を監督・管理する立場にある管理職者の服装が模範例となっていることを確実にすること
-管理職者に対して、必要に応じて会社の定める適切な服装について解説しておくこと
まとめ
貴社のEmployee Handbook内に既に服装規程が存在する場合は必要に応じてその内容を見直し、存在しない場合はEmployee Handbook内に項目を追記することをお薦めする。例えば、「ビジネスカジュアル」と言えば、ジーンズの着用を許可する雇用主が多いが、禁止しないのであれば、穴が開いていたり破れているジーンズの着用はオフィスでは不適切ゆえ許可されないことがきちんと従業員に伝わっている必要があるだろう。つまり、雇用主は職場における服装や身だしなみを明確に定義し、従業員がその内容を認知しているか、また特に従業員へ不適切な服装を注意する立場にある管理職者がその内容をしっかりと把握・理解し、一貫性をもった対応を心がけているかどうかを確認されることをお薦めする。
記事提供: HRM Partners, Inc.