ニュースレター

2016-09-30
Newsletter 2016年10月号: FLSAステータス(Exempt/Non-Exempt)を見直す絶好のタイミング?!
FLSAステータス(Exempt/Non-Exempt)を見直す絶好のタイミング?!

FLSA改正と今後の流れ

皆さまも何度も耳にされている通り、今年の12月1日からFLSA (Fair Labor Standard Act)が改正されます。これは主にExemptに区分されている従業員の最低賃金を上げる内容で、今までの約倍近くになるというものです。

この最終決定*は、内容の変更を経て今年の5月18日に発表されましたが、あまりにインパクトが大きいため、実は今年の7月にKurt Schrader下院議員が決定内容の段階的導入を議会に提案しています。これは、2019年12月1日に$47,476/年(週給$913)に到達させる形で、今年は$35,984/年(週給$692)、来年は$39,780/年(週給$765)といった具合に最低賃金を上げていく案となっています。

この段階的導入案が議会に認められる事になれば**非常に助かる会社が多いと思われる一方で、あまり期待できないのが実情かもしれません。なぜなら、このFLSA改正案が昨年7月に発表された際は、更に内容の厳しいもの***でしたが、中小企業の負担増の声が多かったため、最終案では内容が緩和されるとともに改正案導入までの猶予期間を6ヶ月という、異例の長さに設定したという経緯があるからです。

つまり、現段階では12月1日までにExemptの従業員の給与を必要に応じて見直す必要があります。場合によっては基本給アップ、あるいは給与は据え置きで残業代を付ける様にする事などが見込まれるため、人件費予算の確保にも着手しなくてはならないケースも考えられます。そのため、皆さまは自社のExemptの従業員の給与の確認が必要なのは言うまでもありませんが、他にも確認する点がいくつかあるため、それらのポイントをご紹介します。


* 最終決定の内容詳細は、SALON内の”FREE REPORT -FLSA改正案に関して”を参照してください。
** 状況はhttps://www.congress.gov/bill/114th-congress/house-bill/5813から確認できます。
*** 当初の構想では最低賃金が$50,440/年(週給$970)、毎年一定の割合による昇給が求められていました。


意外と多いMisclassification

多くの日系企業の皆さまにご訪問をしている中で気になるのが、Misclassificationです。これは、本来Non-Exemptであるはずの従業員がExemptに区分されている、あるいは本来正社員として扱わなければならない対象がIndependent Contractorとして働いているという状況を指しています。

例えば、従業員をExemptと区分する際は、最低賃金だけではなく職務内容や責任範囲を基に判断されますが、その定義は各企業の基準ではなく、FLSAによって定められています*。そのため、社内にいるExemptの従業員の人数は限られてくるはずなので、「Non-Exemptの従業員がいない」という状況は基本的に考えられません。

特に多く見られる例としては、自身の権限で物事を決定できないあるいは部下がいないのにAdministrative Exemptionに区分されているものや、コールドコールや企業訪問以外の業務が大半を占めているのにOutside Sales Exemptionに区分されているものが挙げられます。

ちなみに、社内にNon-Exemptの従業員がいる場合は、勤怠記録 (Time Card)が必要となる事と、Payrollの支払い頻度**をSemi-MonthlyやBiweeklyにする必要があります。(頻度は州によって異なります)
また、Misclassificationが発覚した場合は、罰金や税金の追加徴収とともにBack Wage*** (未払いの残業代)の支払いが求められている他、監査結果によって”Intentional (故意)”と判断された場合は、1年の懲役が科される事もあるため注意が必要です。

さらに、H1Bビザなどを発行している場合はビザの取り消しや、今後のビザ入手が困難になってしまう事も考えられます。


* 詳細はSALON内の” REPORT -FLSA ステータス_TRIAL EDITION”を参照してください。
**詳細はSALON内の” REPORT -Payroll Frequency_TRIAL EDITION”を参照してください。
***詳細はSALON内の” REPORT -残業代とBack Wage(未払い残業代)_TRIAL EDITION”を参照してください。


原因とこれからの対応

なぜ各企業でMisclassificationが存在してしまっているのでしょうか。

それは、以前からその様になっているため気に留めていなかったケースや、気付いているものの突然変える事もできずそのままにしているケースがほとんどかと思います。後者の場合、本来Non-Exemptであるはずの人がExemptになってはいるものの、何も無いタイミングでNon-Exemptに変更する事にしてしまうと、会社に対する不信感が生じてしまう、あるいは今までの未払残業代に関して言及される事などを避けたいという意図がある様に見受けられます。

今回のFLSA改正はオバマケア同様、会社のマネジメントだけで無く一般の人も耳にする可能性がある話題です。その状況をポジティブに捉えると、FLSAステータスを変えたくても変えられなかった企業にとっては、「最低賃金の変更に伴うステータス変更」という理由で、従業員区分の是正が行える機会にもなりえます。当然、今までの区分が間違っていた場合はBack Wageの支払いも必要になるかとは思いますが、その話題を出しソフトランディングさせるタイミングとしては、今後訪れる事の無い最適なタイミングとも言えるかと思います。

いずれにしろ、すぐに何らかのアクションを起こすかどうかはさておき、まずは今の組織がどういった状況でどの様な”リスク”が潜んでいるのかを知る事が重要です。その際は、従業員のFLSAステータスの確認を行い、Exemptとされている従業員がいた場合は、給与が12月に最低賃金に届くかどうか、またExemptionの判断がFLSAの基準に合致しているかどうかを見て行きましょう。その次のステップとして、Misclassificationとなってしまった従業員への対応や、基本給や残業代に関して考えていく流れが良いのかと思います。

今回のFLSA改正は、世間でも騒がれている通り、中小規模の会社にとってはかなり大きな影響を及ぼすものかと存じます。しかし、これを悲観ばかりせずチャンスと捉え、放っておくと肥大して行く”リスク”をつぶしていく機会に変えてみてはいかがでしょうか。 (文責: SolPortum 小楠)