ニュースレター

2012-05-01
Newsletter 2012年5月号 新入社員の受け入れとオリエンテーション
企業にとり新しく従業員を雇用することは時間や資金を要する業務だ。働き始める個人にとっても、初めて職場で過ごす何日かは、さまざまな雇用経験を積んでいく過程で一番リスクの高い時期に当たる。誰もが適切な知識に基づいて職場の人間関係作りに取り組めるようにするため、新入社員に一連の「受け入れ・オリエンテーション手続き」を実施していくことが、関係者全員の成功へ導く可能性を高めてくれる。

日本の大手企業の事情に詳しい人なら周知の事実だが、大勢の新規採用者を一括雇用し、企業の掲げる中心的価値や正規採用者に求められる基本的なスキルを指導するなど広範囲にわたる同一内容の研修を実施するのが一般的だ。新入従業員が最初の職場に配属される際までには、対応していける基礎知識が備わっているものとされる。

日本の教育体系の中では、望まれる水準に到達するため標準化された方式で一連の中心的価値が植え込まれことになっており、企業の新人研修はそれを前提に実施される。

しかし在米日系企業はほとんどの場合、特定の緊急な必要性に応じて、個別に新規従業員を雇う。職場配置の前にオリエンテーションや訓練を与えられる時間的余裕は非常に少ない。しかも、新規従業員の採用前の教育水準、業務経験、受けた訓練は個人ごとに非常にばら付きがあり、会社側としては職場で期待される行動について全員が共通認識を持っているとはなかなか期待はできない。

このような環境から、新規従業員に対する受け入れ・オリエンテーションを効果的に実施することが、企業の投資に見合う成功を収めるため非常に重要になるわけだが、同時に研修実施にはさまざまな困難が伴うことになる。

新規従業員の受け入れ・オリエンテーション研修手続きの一部を見てみよう。採用直後に実施されるはずのものもあれば、実施まで時間的余裕のあるものもある。貴社の研修計画をどのように組み立てていくにせよ、あらかじめ次段階が何なのか分かるような日程表と、各部分の担当責任者が誰なのかを明白にした、意図的なものであるべきだ。

書類整備
基本に属すことだが、新規に従業員を雇用したらすぐに総ての必要書類を整えるべきである。
―緊急時の連絡先など従業員に関する情報
―法律などで定められている従業員関連の書類整備。I―9(72時間以内)、W-4など
―特定の州(CA、NY)の場合は、従業員の賃金についての書面による通知
―福利厚生関係の書類
―企業の内規や従業員規定
―職務内容説明書
―電話番号一覧表、休業日、その他の必要情報の入手先

採用に伴うメリットの説明
採用面接の際に大部分は言及しているかもしれないが、新規従業員にはこの際にさらに完全な形でこの企業で働くことのメリットを説明すべきだ。以下のような内容が考えられる。

―ボーナス支給の可能性を含めた報酬
―企業が提供する福利厚生手段(有給休暇、保険、自己啓発の可能性など)。新規従業員が参照できるような簡潔な手引き文書を用意する
―企業のブランド、提供しているサービスや製品を説明し、それらがいかに他の人々や産業に貢献しているかを知らせる

企業側が期待している水準
従業員の新規採用時は、企業が従業員にどのような期待を寄せているかを説明するには格好の機会だ。新規採用者とすぐに、企業が従業員にどん期待水準を抱いているかについて、話し合わなければならない。以下のような分野についての期待水準がどうあるべきかなどが対象となる。

―就業中の私用電話の使い方
―企業のコンピューター、eメール、インターネットの個人的使用
―欠勤と遅刻
―服装規則、個人的な身だしなみ
―対応で求められる迅速さ(社内もしくは社外からのeメールやボイスメールに対応する速さ
―電話対応で求められるマナー
―休憩の取り方(ランチ、喫煙、その他)

考課制度
新規従業員にはなるべく早く、従業員の業績に対する評価がどう実施されるかの考課制度を知らせなければならない。また企業が「目標設定」人事計画を導入している場合には、新規従業員と目標についての話し合いにすぐに着手してほしい。

―業績評価の進め方。どのような時期に、どのような方法で、何を評価するのか
―目標設定。適切と思われる目標の例をいくつか挙げる。どのような時期に、どうやって設定した目標との照合・評価が実施されるのか

採用に伴うメリットの説明
採用面接の際に大部分は言及しているかもしれないが、新規従業員にはこの際にさらに完全な形でこの企業で働くことのメリットを説明すべきだ。以下のような内容が考えられる。

―ボーナス支給の可能性を含めた報酬
―企業が提供する福利厚生手段(有給休暇、保険、自己啓発の可能性など)。新規従業員が参照できるような簡潔な手引き文書を用意する
―企業のブランド、提供しているサービスや製品を説明し、それらがいかに他の人々や産業に貢献しているかを知らせる

スキルの評価
新規従業員が将来さらに効果的に社内で業務を実施していけるようにするため、一定の能力育成計画の必要が出てくるかもしれない。従業員が配属先職場に落ち着いた段階で、本務以外の分野で持っているスキルについて時間をかけて評価していくように。

―コンピューター使用能力。エクセル、ワード、パワーポイント、アウトルック
―書類作成能力。きちんと書かれた書類やeメールを作成できるかどうか
―企画・提案能力。その企業で求められる様式で企画・提案書をまとめ上げ、提案して承認を取り付ける組織力
―口頭で、あるいはプレゼンテーションでの発表能力。必要情報を簡潔に言語としてまとめ同僚に口頭で発表できるプレゼンテーション能力
―企業会計の基本的な知識能力。損益や貸方と借方の対比などの理解

新規雇用の従業員は、さまざまなスキルや職務経験を身に付けた人間として企業へやってくる。企業としてできる最善策は、各新規従業員に対して企業に関する十分で完全な情報を提供し、それぞれが持っている能力が何なのかを最大限に知り、全員が企業として求めている基本的なビジネス上での適格性水準に到達していけるようにすることだ。

ダンカン・エルダー
副社長 
GlobalBridgeHR

記事提供:GlobalBridgeHRは、米国で事業を展開する外資系企業に焦点を当てた人事コンサルティング会社です。流暢な日本語、そして在米日系企業と働いた幅広い経験を生かして、ダンカン・エルダーは人事に関する様々な課題について、日系企業にコンサルティングと顧問サービスを提供しています。

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