2009-09-01
米国の数多くの雇用主は、多くのコンプライアンスの義務やコストを伴うフルタイム従業員を雇用するよりも、雇用主に義務付けられる納税やその他の条件が極めて少ない委託契約社員を用いてきた。しかしIRS (国税庁) をはじめ多くの州の関連機関は、労働者の分類や誰を「慣習法上の従業員」とみなすかについて議論を交わしてきている。
その労働者が「委託契約社員」なのか、または「従業員」なのかの判断は、具体的な事象を考慮すること、および「慣習法」として知られる労働者分類の法令と規定を適用することにより決定される。一般的には、従業員と雇用主の関係は、雇用主が職務を遂行する個人に対して(遂行されるべき職務の内容のみならず、その職務がいかに遂行されるかについて)管理や監督の権利がある際に成り立つ。
労働者が「慣習法上の従業員」として分類された場合、雇用主は労働者の給与から社会保障及び医療保険の税金、ならびに所得税を差し引く必要がある。また雇用主は、雇用主の社会保険と医療保険の税金及び連邦失業保険税を支払い、すべての連邦と州の給与関係税申告書を申請しなければいけない。そして雇用主は州と地方の失業保険税、労災補償やコンプライアンスのための保険料も支払わねばならない場合もあり得る。更に慣習上の従業員は、健康保険や年金のような、他の従業員に提供されているベネフィットを享受する権利が与えられている。
一方、「慣習法上の従業員」ではなく「委託契約社員」を用いる雇用主は、雇用税やコンプライアンス問題、もしくは従業員のベネフィットなどに煩わされることはない。もし1年間に雇用主が600ドルもしくはそれ以上を委託契約社員に支払う場合、雇用主に義務付けられているのは、どれだけの報酬を支払ったのかを報告する為の「Form 1099-MISC」を発行するだけである。
雇用主にとって問題が発生するのは、本来は「慣習法上の従業員」である労働者を「委託契約社員」として取り扱った (或いは取り扱ってしまっている) 時である。仮にこれに該当した場合、雇用主は税金や利子の未払い及び罰金が生じることになる。加えて、雇用主はその従業員が享受するべきベネフィットが提供されていなかった事も苦慮しなければならない。そして、何よりも大きな問題は、とりわけ雇用主を悩ませるのが、慣習法上の従業員が職務遂行中に負傷し労災を申請し、そのクレームがファイルされた場合である。このようなケースは雇用主の責任問題が問われ、非常に深刻なケースとなってしまうであろう。
では委託契約社員が慣習法上の従業員として誤って分類されていないことを確実にする為どうすべきかと雇用主は抱くはずであるが、先ず、労働者に職場もしくは指定した場所での勤務を強要し、勤務時間の管理を行い且つ日々監督することを為した場合、その労働者はおそらく慣習法上の従業員であると言える。対して、雇用主が労働者の職務の進め方について限られたもしくはまったく指図しない場合、その労働者は委託契約社員である可能性が高くなる。ではこの例のように雇用主が労働者に対し、たんに仕事内容と納期を伝えるだけに留めれば委託契約社員としての関係が成り立つといえるのだろうか? 残念ながら事はそう単純ではなく、労働者が他の顧客のために仕事をしておらず、フルタイムで特定の雇用主 (一社) のためだけに労働し、且つ雇用主が広範囲に亘る日報の提示を義務付けたり、仕事単位ではなく時間単位、或いは日毎に、週毎に、月毎に支払いをしている場合は慣習法上の従業員となり得る可能性がまだ残ることになる。また職場には出社させずに他の場所で職務を遂行させていたとしても委託契約社員と定義づけるのにはこれも十分とは言えないだろう。
加えて、雇用主にとっては曖昧な状況を出来るだけ明確にしておくためにも委託契約社員用に書面での契約書を作り、その対象者と交わしておくべきである。契約書には労働者は委託契約社員として働き、給与ではなく契約に対して支払いが為されるということが記載されるべきである。契約書はその他 (別の会社) のプロジェクトの遂行を妨げるべきものであってはならず、フルタイムでの仕事を要求せず、翻って雇用主の職場にて毎日勤務すると言う事が記載されていてはならない。そして支払いはプロジェクト完了時もしくは指定された進行段階毎に為されるべきである。また契約書には必ずや期限を設け、且つ雇用主は指定された例以外の経費の支払いをしない云々と言うことも述べられているべきである。一般に、雇用主がこれらのガイドラインに沿って委託契約社員を用いた場合、IRSや関連する州の機関からの横槍に対しては、高い確率を以って回避できるはずである。