2019-01-23
Happy employee, happy company
新年明けましておめでとうございます。
昨年中は私どものサービスをご利用いただき誠にありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
年が明けて、早速2018年度の雇用に関連するデータが発表されています。4月に会計新年度を迎えられる日系企業の皆様も数多くいらっしゃると思いますが、皆様がこの時期気になるデータは給与上昇率ではないでしょうか。
米国の景気を示唆する一つの指標が失業率ですが、昨年度末までに全米失業率は4%を切り、1969年以来の最低のレベルを達したことは既にお聞き及びのことと思います。失業率が低下すると当然、求職者マーケット事情は売り手側のゲームとなることから従業員のリテンションや新規採用においての競争が激化が予想され、3月末の人事考課ミーティングに向けて新年度の給与上昇率を設定するためにも全米のトレンドが気になるところですね。歴史的な失業率の低さとアメリカの好景気に押されて、2019年度はどのくらいの給与上昇が見込まれているのか、世間の給与上昇率についていけるだろうかと戦々恐々とした思いをされておられる企業の方々もいらっしゃるかと思いますが、実は意外に、昇給に関する雇用主の財布のひもは堅い数字が出ています。
このところ発表されたFRBの調査書によると、失業率の低下率と昇給率はほぼ同じ動きを見せるものなのだそうです。従って、歴史的に低い失業率と言っても、急激な動向でない限り、給与上昇率も急激な動きがあることはなく、現在のタイトな求職者マーケットを考えると2019年度の全米レベルの給与上昇率が劇的な上昇を見せることはないだろうと同調査書は予測しています。大手の人事コンサルティング会社数社も2018年度に行ったサーベイの結果から2018年度の給与上昇率は平均3%強、2019年度の昇級の見込みもこの数年の数字と同様に3%強という数字を発表しています。2019年度のインフレ率は2.4%と予測されていることから、この昇給率は労働者にとっては1%を切る昇給、つまり事実上ほぼ横ばい状態にしかすぎません。昨年度の実質的な昇給率が1%だったことを考えると、実際の昇給率は低下することが予測されています。積極的にテクノロジーが職場に導入されつつある傾向は、更にこの傾向に拍車をかけていると言えます。人がテクノロジーに仕事を奪われる時代が到来しつつあるためです。
もちろん、業界やサンフランシスコなどのテクノロジーベースの労働市場エリアによって、状況は異なりますが、平均の米国の就労者は2019年度に実質的な昇給を手にしないだろう、というのが大方の予測です。
では、売り手市場なはずの労働者市場でも「相当のスキルや新しい雇用主にとってのメリットを持っているような求職者」でない限り、または「中小企業から大手企業への転職に成功」しない限り転職することで大した昇給は望めない、という現状にあって、従業員の転職意欲は低下するものでしょうか。
以前のコラムで、従業員の離職の原因は決して金銭的な条件が突出したものではないことをご紹介したことがありますが、この給与上昇率の現状においてリテンションでも新規採用でも、雇用主の人材確保において雇用主の従業員に対する理解と姿勢が求められていると言っても過言ではありません。
従業員の雇用主への満足度は適切な報酬、と言われています。特にミレニアル世代の労働者、1970年代から1980年代に生まれた世代の労働者、つまり、働き盛りの労働者層ですが、このミレニアル世代の労働者は、給与や出世を最大のプライオリティーに考えない傾向にあります。適切な報酬を、これまで同様の考え方で、突出した成績に対して見合った報酬を支払う、という単純な方程式だけを適用させることが正しい適切な報酬とは言えないかもしれません。生活のクォリティーが大切な従業員にはワークライフバランスを確保できる就労環境が適切な報酬と言えるでしょう。また、突出した成績の認知及び表彰も、全ての従業員がプロフィットに関わる職責を持っているわけではありません。いかに従業員のモチベーションを向上させリテインをしていくのか、というテーマにおいての従業員の表彰としては、在職年数による表彰が多くの雇用主が導入してきた一般的な方法だと思いますが、これまではあまり脚光を浴びてこなかった以下のような内容で従業員を表彰する企業がこのところ増えてきているそうです。
• “変化”に積極的に挑戦し、マネージし、更に変化をうまく利用して成長することができる。
• “改革”を積極的に提案し取り組む姿勢。
• システムの改善に積極的に取り組む姿勢。
• 顧客のリテンション率
• 職場の士気向上への貢献度の高い従業員
• テクノロジーの積極的な導入に貢献する従業員
• 劇的な個人的成長
• 組織のコアバリューを実体化するアクションでコーポレートカルチャーの成長や確率に貢献した従業員
従業員のこれらのアチーブメントの表彰の方法は、感謝状から単発のキャッシュボーナス、ギフトカードやギフトサーティフィケート、中にはバケーションパッケージがプレゼントされるなど、かなりの工夫をこらした表彰の方法が使われているそうです。これも、カンパニーカルチャーをアピールする一つの方法でしょう。いずれにしても、いかに、従業員が、自分の仕事を上司が、そして会社が認識してくれているのかを感じられるかどうかが、従業員の離職に歯止めをかけられる有効な方法だと言え、また、現状に不満を持つ就労者が、そのような職場環境を求めて離職を考る可能性があることを考えれば、新規採用活動における企業の取り組みも、給与額や企業のブランドのみが有効なツールではない、と言えるものと思います。
これも、以前のコラムで書きましたが、多くの離職者が、離職理由に関してのアンケートに「会社を離れたかったのではありません。上司から離れたかったのです。」と回答しているように、人事担当者がプログラムを如何に整えても、実際に現場でそれぞれの従業員と向かい合う管理職者の知識と理解、従業員マネージメントスキルの習得が、これからの時代、人材確保において何よりも重要な鍵だと言えるのではないでしょうか。
アメリカでは結婚生活の秘訣を、 “Happy wife, happy life” という言葉で表現されることがよくありますが、職場では”Happy employee, happy company”。2019年度はまさに、雇用主の従業員のHappy度が問われる1年となり、その鍵を握るのは管理職の管理職者としての成長だと言えるのではないかと思います。
今年は、私どもで人事マネージメント基礎コースとして、10回シリーズのセミナーを行うことになりました。ニューヨークが中心のセミナーですが、内容によってはニューヨーク州外での開催も検討しております。是非、この機会をご利用ください。セミナーでみな様とお目にかかれますことを楽しみにしております。
大矢まどか
人事アウトソーシング担当
Actus Consulting Group, Inc.