ニュースレター

2010-06-01
Newsletter 10年6月
ここ数ヶ月間のBP社深海油井からの原油流出のニュースは、安全基準・緊急時の対応・就業規則などの書面化されたプランが本棚に並べられた単なるお飾り以上になぜ大切なのかを、強烈なる例として目の当たりにさせた。
2010年6月15日、米国にて大規模石油会社を経営する五社のうち四社の重役達が、米国議会の下院小委員会およびBP社米国責任者の面前でBP社の深海油井からの原油流出と同じ過ちを防ぐ予防策を含めた工学や経営慣習の説明と証言の為に出頭を命じられた。その場で重役たちは、憤慨し執拗な小委員会に対して悲惨なメキシコ湾の原油流出に対するregional response plans(影響する地域への対策要綱)が、推定一日に35,000 から60,000バレルが噴出する原油を食い止めるには現在では不十分であると広く認識されているBP社のプランとなぜ類似しているのかについて釈明するのに苦労した。
小委員会の代表者Edward Markeyは各主要ニュース局団体の生放送中継を前に、安全基準および緊急時の対応策は全社ほぼ同一だとして公然と非難、彼曰く「五社のプランは異なる色で作成されただけで内容の9割は同じである。」「BP社のものと同様に他の三社のプランには、ここ300万年間メキシコ湾には生息しない(主に北極圏に生息する)セイウチを保護する為の対処法が引用されており、また別の二つのプランには随分前に死亡した同一人物である専門家の電話番号が掲載されており、これらはBP社のプランの丸写しである。」 次いで民主党員代表Henry Waxmanは、大規模石油会社のプラン全てがBP社の油井から原油流出を堰き止めることに失敗した手法を含んだ、ほぼ同一の「cookie cutter :クッキーの抜き型の様に大量生産された」な戦略を提出したと述べ、続けてMarkey は「我々が信頼する唯一のテクノロジーはプランをまとめたゼロックスマシンだけだ。」と短評した。
この例はあらゆるレベルの従業員達に十分に理解されるべき有効で書面化されたプランの所持の重要性について、全ての雇用主に対し緊急に注意を促すwake-up call になったと思われる。特に安全基準や緊急時の対応プランは深刻な職場での損傷や死亡リスク軽減の為には重要である。
全ての雇用主は職場の安全や緊急時の対応プランに積極的な関心を持つべきである。また安全プログラムは製造・倉庫や実験室のような施設を持つ雇用主の為だけのものではない。例えば今日では雇用主の大半が従業員にビジネス目的で日々車の運転を要求している。もし雇用主が明確な安全基準を未だ確立していないならば、従業員側は結果オーライの勝手な基準を作ってしまうだろう。雇用主は、従業員と会社の将来の成功のためにも書面化されたプランが注意深く作られていること、並びに全てのレベルの従業員により十分に理解されていること、そして適切な保持を確実にしておく必要がある。