2015-08-19
2010年に成立された米国医療保険制度改革法 (The Patient Protection and Affordable Care Act、 通称 オバマケア、またはACA)。
2016年に行われる大統領選挙へ向け選挙活動が盛り上がる中、オバマケアの話題が挙がることも少なくありません。まだ中には「オバマケアを廃止する」という声も聞きますが、政権が変わった場合、それは本当に可能でしょうか?
2015年6月25日に連邦最高裁において、6対3でオバマケアは合憲とする裁決が下されました。この裁決により今後政権が変わったとしてもオバマケア自体を廃止することは、ほぼ不可能となりました。今後、数ある報告義務、課税義務またはオバマケアの内容の詳細などに変化はあるかもしれませんが、アメリカで会社を運営、また生活する際にオバマケアは避けることの出来ない制度となりました。
では、日系企業が米国で人を雇い会社として運営していく場合、どのような報告・課税義務、また留意点が考えられるでしょうか?
健康保険提供義務:
2015年より、正社員(およびそれに順ずる従業員)の数が100名以上の企業に対し、ある一定の基準を満たす健康保険を従業員に提供を義務付け。同保険を提供しない雇用主に対しては課徴金を適用する。(いわゆる「Pay or Play 条項」)。また、正社員数50~99名の雇用主は、2016年より同条項が適用される。
報告義務:
米国国税庁(IRS) に対する各種報告は2015年から義務化される。報告内容は主に保険加入状況と給付内容である。
正社員数が50名以上の企業は、1094-C/1095-C を提出する義務あり。
なお、今現在、正社員数50名以下の会社は各種レポーティング義務は無い。
違反した場合の罰金は一件あたり$100。最大課徴金は年間150万ドル。
課税義務:
特に大企業が気にする新たな課税制度が「キャデラック税」。2018年より高額医療保険プランに対し40%の高額課税を実施。
以下基準を超えるプランが高額医療保険とみなされ、超過額に対して課税される。
個人: 年間医療コスト(企業負担 + 従業員負担) $10,200 以上。
家族:年間医療コスト(企業負担 + 従業員負担) $27,500 以上。
その他費用:
オバマケアにおいて無保険の国民を対象とした保険システム「Exchange」の設立と運営にあたり、「Insurer Fee」というものが保険会社に課せられている。
これは直接雇用主が当局に収めている費用ではないものの、保険会社に支払っている保険料に加算されているため、結果的には企業側が負担している。
現在は全保険料の2~3%であるが、2018年までに徐々に増額する見込み。
以上、オバマケア関連で日系企業が留意すべく点を抜粋しましたが、実務レベルを超えた部分においても、在米日系企業として問題意識を持ち、対策を考える必要があるのではないでしょうか?例えば、各種報告義務はコンプライアンス問題に絡みますし、上昇する費用は企業のボトムライン、予算にも関係してきます。また、従業員に提供する保険内容のあり方など、人事方針、更には会社の経営方針に関わる点も出てくるのではないでしょうか?
オバマケア関連の規制や各種義務だけでなく、そこから波及する在米日系企業への課題に関しても10月14日のセミナーにおいて取り上げます。
Mamiko Fujita
Vice President, Japan Global Practice Group
Willis North America