2016-07-28
米国連邦法Fair Labor Standards Act (「FLSA」)上、残業代の支給義務の対象から除外される従業員(exempt従業員)について定められていますが、2016年12月1日よりそのexempt従業員へ支払わなくてはいけない最低賃金がほぼ2倍に増額されることになりました。これにより、米国全体の就業者の約60パーセントが残業代の支給対象となることになり、雇用主のコストが大幅に上昇することが見込まれています。FLSAは、最低賃金、最長労働時間、残業代および子供の労働等を含む、従業員の賃金に関する事項を規制すべく、1938年6月15日に制定された法律であります。FLSAは事実上、ほぼすべての企業、すべての従業員に適用されます(FLSAの適用を受ける企業の最低従業員数は定められていません)。もっとも、従業員ではないindependent contractorsには適用されません。
FLSAは原則として一週間中の労働時間が40時間を超えた場合に、その超えた時間分の時間外労働に対してregular rateの1.5倍のレートで残業代を支払うことを義務付けています。「regular rate」には、従業員に対する全ての報酬が含まれますが、雇用主が従業員のために第三者に支払う対価(例えば、保険のpremium)、stock option planに基づく支払い、立替費用の払い戻し等は含まれません。
残業代は、雇用主が、従業員が実際に時間外労働を行っていると実際に知っている場合はもちろん、推定的に認識している場合にも支払わなくてはいけません。雇用主が、従業員が時間外労働を行ったと実際に知っているか、または推定的に認識しているならば、従業員がたとえ時間外労働を行うことについて雇用主から許可を得ていなくても、残業代を支払う必要があります。従業員が雇用主の許可なく残業をした場合に、雇用主がとりうる手段として、従業員が(許可なく)時間外労働を行ったことに対して懲戒を与えることができます。
FLSA上、executive、administrative、professional、computer、outside sales、highly compensated employeeといった特定のexemptionの対象に該当する従業員、つまりexempt従業員は、FLSAに定める残業代の支払い義務の適用対象外となります。Exempt従業員になるためには、その従業員は複数の条件(一定金額以上の給与を得ること、(原則的に)固定給またはフィーベースにて支給されること、特定の責務を履行すること、自己裁量と権限の行使すること等)を満たす必要があり、肩書と給与額のみでexempt従業員となりうるかどうかを判断すべきではありません。ちなみにnon-exempt従業員に対する給料を一定金額のsalaryベースにて支給することも可能です。
2004年来、exempt従業員に該当する従業員には、最低でも週給455ドル(年収23,660ドル)を支払わなくてはいけない旨定められていましたが、この基準金額が、2016年12月1日から、週給913ドル(年収47,476ドル)と倍増することになりました。また2020年1月1日から、さらにその後3年ごとに、U.S. Department of Laborはこの基準金額をアップデートすることになっています。この基準金額以上の給与を受け取らない従業員をFLSA上のexempt従業員とすることはできません。また「highly compensated」のexempt従業員の給料の基準金額は、2016年12月1日から、年収100,000ドルから年収134,004ドルへと倍増することになりました。
雇用主としては、exempt従業員として扱っている従業員の中に、週給913ドル(年収47,476ドル)未満の給与を受け取っている従業員がいる場合、以下の対応策をとることが必要になります:
•週給913ドル(年収47,476ドル)以上に給与金額を上げる。
•現在の給与を支払い続け、従業員が一週間に40時間働いたあと、その後の労働時間分については、一時間あたりの給与金額を算出し、残業代を1.5倍のレートを支払う(non-exempt の従業員に一定金額のsalaryベースにて給与を支払い続けることは可能ですが、週40時間を超過した労働時間分に対しては1.5倍のレートにて残業代を支払う必要があります)。
•従業員の作業量を変え、勤務スケジュールを調整し、または勤務時間を調整し、従業員が一週間に40時間以上働かないようにする。
FLSAに違反すると、雇用主はback wages(未払い賃金)、liquidated damages(未払い賃金と同額の損害賠償金)、利息、違反行為一件につき1,000ドル以下のcivil penalty(民事上の罰則)、弁護士報酬等の支払いを命じられることになりえます。したがって雇用主は各従業員のexempt・non-exemptステイタスをレビューし、FLSAの要件にしたがっているか確認すべきであります。FLSAについてご質問等あれば、大橋弘昌(ohashi@ohashiandhorn.com)、ジェフホーン(horn@ohashiandhorn.com)またはコーディカチェル(ckachel@ohashiandhorn.com)までご連絡ください。