2012-08-01
雇用主にとってソーシャルメディアは避けられない存在だ。雇用主がソーシャルメディアと職場を切り離そうとした時代もあったが、それは今や困難なこととなった。職場でのソーシャルメディアへのアクセスは、セキュリティの方針やファイアウォールに規制されているかもしれない。しかしながら、携帯電話などのワイアレス機器を通して職場に侵入してくるソーシャルメディアを規制することは、果たして可能だろうか?
従業員は職場での対人関係を、職場外でのオンライン活動を通じてソーシャルメディアに持ち込んでいるかもしれない。ソーシャルメディアと職場の交差を避けることがもはや不可能ならば、ソーシャルネットワーキングがもたらすチャンスとは何であろうか?そして、それはどんな課題を生み出すのだろうか?
チャンス
適切に使われれば、ソーシャルメディアは次のような利益を会社にもたらすことが出来る:
•的を絞った人材採用—2011年にSociety for Human Resources Management (SHRM)が行った調査によると、対象企業のうち56%は、SNSサイトを人材採用に活用していると答えた。ちなみに2008年にそのように答えた企業は34%のみであった。SNSを人材活用に使っている企業のうち95%は、LinkedInを使用していると答えた。
また2012年にJobviteが行った調査では、さらに高い数値が報告されている。それによると、雇用主の92%が優秀な人材を見つけるのにSNSを使っていると言う。前出の調査同様、LinkedInが最も多く使われているSNSであった。多くのリクルーターは、積極的に仕事探しをしていない「消極的」な、しかし会社が必要とする経験と知識を持った、候補者を発掘するためにSNSを使用している。そのような候補者のプールは、採用活動にSNSの使用を許さない企業には知られることも無かった人材である。
•従業員の価値増大—益々多くの企業が、ソーシャルメディアツールを従業員のために活用するようになってきている。これらのツールは知識の共有、インフォーマルな学習、コラボレーション、コミュニケーション、そしてエンゲージメントなどに使われている。テクノロジーの発達により、従業員は違う拠点から同じプロジェクトに着手するようになり、テレコミューティングは益々一般化した。
そのような動向につれて、ネットワーキングツールを従業員に提供する企業が、競争における優位性を示すようになってきた。例えば、Deloitte Consulting LLPの報告によると、製薬業界では企業専用ソーシャルネットワーキングツールを通じた共同作業によって、開発サイクルのスピードが速まったという。
IT企業のEMCは似たようなツールを使って、従業員からコスト削減のアイディアを集めることに成功した。同社のコスト削減キャンペーンが従業員に不評だったことをきっかけに、ある社員がSNSにコスト削減に関する従業員のアイディアを募集するフォーラムを作った。
このフォーラムから生まれたアイディアは、コスト削減目標の達成を実現させただけではなく、コスト削減に対する従業員一人一人の理解を深め、協力する姿勢を作り上げることに一役買った。同社は、SNSによってより積極的にコスト削減を達成することが出来たと話している。このような例は、ソーシャルメディアツールを活用することによって、企業が従業員の価値を上げることが出来る可能性を示している。
チャレンジ
ソーシャルメディアは同時に、見逃すことの出来ない課題を企業に突きつける可能性もある:
•価値観—ソーシャルメディアはその名の通り、一般的に「社会的」なものとして知られており、プライベートな活動のイメージがある。例えソーシャルメディアが仕事に関係していたとしても、それに職場でアクセスすることを許容すると、周囲の従業員は個人的な使用と見なすかもしれない。
このような見方の違いの原因のひとつには、世代的ギャップが挙げられる。若い従業員はソーシャルメディアに使い慣れているだけではなく、彼らの職場やプライベートでの人間関係は、テクノロジーによって構築され、維持されるようになってきているからだ。
また、アメリカ人の従業員が日系企業で働くとき、さらに新たな違いが影響することになる。アメリカ人の従業員は日本人に比べて頻繁に仕事を変え、それゆえ仕事関係の人間関係を保つためにソーシャルメディアに依存する度合いも高いかもしれない。
一方日本人の駐在員管理職は、そのようなニーズやソーシャルメディアにアクセスすることが一部の従業員にもたらす効率性を、理解しがたいものだと見なすかもしれない。もしソーシャルメディアの価値が明確に理解されていなければ、これらの要素は職場における敵対意識を生むことに繋がる可能性がある。
•会社の評判—ソーシャルネットワークが人気の高い理由の一つに個人に、もしかしたら有力な、声を与えるからだ(他人が聞いている限り)。雇用主は次のような質問を自問するべきだ。「我社はどのように言われているだろうか?」現従業員又は元従業員が、企業価値を誤り伝えていることは無いだろうか?SNSで会社の機密情報が話されていることは無いだろうか?ソーシャルメディアに関する企業方針に関わらず、雇用主は自分の企業が、SNSでどのように言われているのかを知っておいた方が良いだろう。
従業員が自分の会社の良いところと悪いところについてネットで意見を交わすためのサイトだって存在する。しかしながら、従業員が自分の会社について色々とネットで話したとしても、そのような活動は米国の労働法で保護されていることもある。もし、自分の従業員がSNSに書き込んでいる内容について懸念があるならば、行動を起こす前に弁護士と相談した方が良いだろう。
ソーシャルメディアと職場の問題は、十分注意を払って調査すべき事項である。ソーシャルメディアがもたらすチャンスとチャレンジの両方を理解することを努め、自分の会社に合った戦略を立てるのが重要である。
ダンカン・エルダー
duncan.elder@globalbridgehr.com
記事提供:GlobalBridgeHR