ニュースレター

2013-09-01
Newsletter 2013年9月号 連載 『第2回 Reference Interview』
以前、外資系企業の役員を勤めていたこともあって毎年結構な数のリファレンスインタビューの依頼を元上司、同僚、部下からいただく。毎月平均にすれば1~2件だが、対象がSVPからC-Suite、カントリーマネージャークラスなので1件あたり30分から場合によっては1時間近くとそれなりに時間を割いている。

もう延べ100人近くのインタビューを受けているのではないだろうか。英語でのインタビューが8割、日本語でのインタビューが2割。通常のビジネスの打ち合わせと違って対象者個々人の微妙な資質や特性についてのニュアンスを英語で話すのはまだまだかなり骨が折れる。責任感と緊張からか、終わるとぐったりするが、その後に無事転職が決まったという知らせがくると心の底からよかったと思う。

インタビューを受けていて興味深いのはエージェントによって質問のテイストが結構違うということだ。「あー、これは決まった質問をリストの上から聞いているなあ」と思うこともあれば、ライブ感あふれる質問を縦横に繰り出して様々な角度から対象者のキャラクターを浮き彫りにしようと意欲的なケースもある。

正直な話、今はエグゼクティブコーチの仕事をしていることもあって、センスのいい質問をクリエイトするエージェントはこっちの業界に引き抜きたくなるくらいだ。特に対象者のリーダーシップについてはこっちがコーチでありリーダー開発のプロであることからエージェントの意識次第で様々なコメントを取ることが可能なのだが、人によっては通り一遍の質問で終わるケースもあるのでもったいないと感じている。こうしたインタビューは確かに手間を取られて大変な反面、改めて自分が普段どこに注目して人を見ているのかが再認識され発見も多い。ポピュラーな質問の一つに「対象者のどういうところにリーダーシップを感じるか?」「対象者のリーダーシップスタイルはどういうものだと表現できるか?」というものがあるが、印象を感じたシーンは結構様々だ。

営業部門のリーダーの場合だと四半期ごとの営業チームキックオフに招かれた時に対象者がリーダーとしてチームにビジョン・戦略を説明して鼓舞している姿を見た時、チームの営業クオータ(割り当て・ノルマ)の達成が厳しい時にクロージングの段取りを指揮して見事に〆に数字を合わせてきたときなどと言うのはわかりやすい例だ。一方で、打ち上げでチームメンバーを労いながら話を聞いてあげている時、トラブル対応の際に関係各部門に手配をしながらワークアラウンド(応急措置)の提案をまとめ、顧客側と折衝しているところにリーダーシップを感じたこともある。

経験から言うと「業務を遅滞なく遂行するリーダーシップ」を発揮する人はそれなりにいるが、「チームビルディングからモチベーションを維持しながら全体で高いパフォーマンスを出すリーダー」は結構少ないと思っている。パフォーマンスは出すがチームの中は死屍累々でメンタルヘルスを患うメンバーが続出していたり、パワハラまがいの高圧的なマネージメントでスクイーズし続けるリーダーも営業部門だとまだまだ少なくはない。

一連のインタビューを通じて私は「自分が人を見る際に、結果以上に対象者と周囲との関わり方に常に注目している」ことに気付かされた。また、私はリファレンスインタビューを受ける際には可能な限りエピソードベースで自分が見聞きした事実を伝えるようにしているのだが、それは可能な限り客観性を保つためという理由以上に、とりもなおさず私自身がエピソードと絡めて物事を記憶するタイプだからだということにも気が付いた。こういう発見がとても自分では面白いと思っている。気を付けるということで言えば、「当時と今の時差」についても必ず触れるようにしている。

私と接していた時と今では様々なことを経験して対象者のコミュニケーションやマネージメントのスタイルが変化しているかもしれない。私の経験からも3年あればスタイルは変化し成長する人が多い。だから「当時はそうだったが、今はわからない」ということをきちんと伝えるようにしている。当たり前のことだが、こういうインタビューでは「エピソードから自分にはこう見えた。こう感じた」という事実をできるだけ客観的に語り、「対象者はこういう人だと思う」と勝手にジャッジしないことを心がけている。

最近のインタビューから伺える傾向としては「完成品」よりも「伸びしろ」に期待するケースが増えているのではないか?そうしたケースでは「入社した後にどんなディベロップメントプランが必要だと思うか?」「どんな経験をするともっと優れたリーダーになると思うか?」「どんな失敗をしてどう立て直したのか?」という質問がかなり多い。昨今の事業環境の変化の激しさを考えると強い成功体験を持った人よりも変化への柔軟性やレジリエンス(精神的回復力、復元力)が重要視されているのかもしれない。

LinkedInその他のSNS経由でエージェントからのコンタクトが増えていることもまた最近の傾向だ。ここまで身近なリファレンスインタビューだが、私自身は4社目の会社で働いているにも関わらず、エージェントの方にお世話になったことも誰かにリファレンスインタビューをお願いしたこともまだないというのが不思議な感じがしている。

COACH A Co., Ltd. (USA)
CEO 吉川 剛史

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