ニュースレター

2013-04-01
Newsletter 2013年4月号 発展的解雇
貴社では雇用主または経営者の立場から、従業員を解雇するための万全なシステムを整えていますか。

ところで解雇する前に従業員に自ら辞めるよう一旦は促してみたことは誰もが持つ経験です。そして大半の経営者は、従業員が自主的に辞めたくれるならば会社を去る事に違いはなく、しかもこちらから解雇するよりも訴訟されるリスクが少ないだろうと考え、そのように示唆してしまいがちです。ここに発展的解雇と呼ばれる典型的な過ちが生じます。

一般的に自主退社は、個人に発生した何らかの事情により、従業員本人が自ら決定して退職を願い出るものですが、近年になってからは、自主的に辞めていった退職者が発展的解雇を受けた事実を理由に、会社を訴えることが多くなっています。これらクレームの意図するところは、従業員の退職が本意ではなく、ある種の厳しい、好ましくない支配力、または耐えられない職場環境により、自分の意思に反しながらも退職に追いやられたというものです。

それらと同調するように米国の裁判所が出す見解にも、大概のケースにおいて、男女問わず従業員が解雇されたことを立証する「君はクビだ!」と言う言葉に我慢する必要はないとあります。しかし以上の理由のみで、従業員が訴訟に勝つことは難しく、同時に彼らは、職場環境がとても支配的で、普通の人であれば退職せざるを得ないような、否定的かつ異常性のあったことを証明出来なければなりません。但し、その支配的な職場環境もしくは自主退職理由が「保護されたカテゴリー(すなわち、血統、性別、年齢、人種、宗教、国籍、身体障害等を前提とした従業員)」への差別行為に因ると判断された場合は、それを自主退職とは見なしません。

以下に列記した発展的解雇は、クレームに発展し得る細心の注意が必要な人事アクションです。

・降職、減給または、任務の縮小。特に理由が功績の悪さや経済的なこと以外の場合。
・ポジションの降格、または仕事の降質
・自分より若いスーパーバイザーのもとでの再職務
・いやがらせや屈辱を与える
・もし承諾しなければ、最終アクションがいつか訪れることを伝えた上での条件付き早期退職の提供 

問題行為 (1)
あなたは、55歳になる男性経理職員の上司です。その男性が数ヶ月に渡り、数多くの間違いを重ねた為、あなたは怒って警告文書も出さずに、いきなり口頭で、降格と30%の減給を、その男性に言い渡した。

忠告 (1)
この状況では、その社員が自主的に辞職し、年齢差別を伴った発展的解雇だとして、クレームを提出することが出来ます。社員の降格と減給は非常にデリケートな決定で、発展的解雇を証明するための明確な証拠となり得ます。これは、働きが悪い社員の降格、解雇、減給を行う前に、書面で警告することが如何に重要かを物語っています。

問題行為 (2)
あなたは、20人いるカスタマーサービスの部長です。ある朝、あなたは60歳の女性スーパーバイザーと大きな言い争いになった。彼女は「辞める!」と捨て台詞を吐いてオフィスを出ていきました。翌日彼女から電話が入り、昨日は言い過ぎたと申し出たにも関わらず、あなたは「もう戻ってくるな!」と言ってしまった。

忠告 (2)
このシナリオには、彼女からの書面による自主退職届けが存在しないため、敗訴する高い危険性が含まれています。訴訟の一環として必ず書面による辞職届けを得ておくことが重要であるにもかかわらず、それがない為に訴訟に勝てるという保証はありません。

問題行為 (3)
あなたは、IT部門に新しく就任した女性管理者です。数ヶ月の任務を経て、48歳の男性で10年も勤続しているにも関わらず全く仕事をこなせない社員がいることがわかった。そこである日の午後、その彼とミーティングを行い、辞職するよう頼んだ。彼は2週間ノーティスを提出し、職場を去っていったが、その後、発展的解雇だとして、訴えてきた。

忠告 (3)
これは、非常に一般的な間違ったマネージメントです。多くの管理者達は、本人に辞職願を出すよう話せば、自分で辞めるのだから、訴訟はされないだろうと安易に考えますが、それは大きな間違いです。辞職願提出の依頼などは、もってのほかであり、反発をかうだけです。これこそ発展的解雇の典型的な例と言えます。

問題行為 (4)
一人の女性が、州警察機関のコミュニケーション・オペレーターとして採用された。彼女は、絶えず彼女の男性上司によって性的ジョーク等、セクハラの標的にされた。 三ヶ月後、彼女は辞職し、警察をセクハラで告訴してきた。

忠告 (4)
これは実例です。雇用関係が成立ち難い職場環境下で、発展的解雇へのクレーム (PA State Police vs. Suders)としてファイルされ、米国最高裁の手前まで争われました。耐えがたい職場環境下での自主退職は、辞めさせたのも同然とみなされます。従って何か事が起こるごとに、雇用主は強力な反ハラスメントポリシーの構築や、従業員が問題を抱えた際にその苦情を汲み易いシステムに改善する努力が必要となります。