2008-01-01
<EEOCの注目を浴びる介護者に対する偏見>
雇用機会均等委員会(EEOC)発表のガイダンスによると、雇用主が従業員あるいは求職者に対し家族事情を原因に不利な雇用行動を取ることは連邦の差別禁止法に反する事になる。従い、雇用者は差別的行為となり得る様々な状況に熟知せねばならないのだが、特に子供の養育や高齢者の介護などで仕事と家庭両方に生じる責務のバランスを取るため必死になっている従業員がますます増えている今日の状況を考慮する事もその一つである。
新たなEEOC のガイダンスの中では家族介護の責任がある従業員または求職者に対する雇用主の行為が職場での偏見を禁止している連邦法に違反する可能性があることが強調されている。この家族の責務に対する差別の中で、EEOC は近年、米国の二つのトレンドに注目している。一つ目は30 年前に比べて多くの女性が仕事に従事しているにも関わらず、ほとんどの家庭で今だに女性が主な介護者となっていること。
そして二つ目のトレンドはベビーブーム世代が退職時期にさしかかり、これまで以上に長い人生を楽しむようになるに連れ、老人介護の責任が従業員にとってより重要なものになってきていることである。
ガイドラインの中で強調されている不法な雇用慣行には以下のものが含まれる。
女性介護者に対する性差別・不利な待遇-女性求職者が面接後に子供の養育を理由に入社拒否された場合、性及び妊娠での差別を禁じている連邦法
違反となる。同様に、その行為が健康や精神的回復のために取られた措置であったとしても、出産休暇から戻った母親である従業員の職務を軽減することも性の偏見による法律違反となる。
男性介護者に対する性差別・不利な待遇-女性従業員には通常許可される申請内容とは同種であっても、雇用主の中には子供の世話を理由にした男性からの休暇申請を拒否する者がいる。その場合男性ではなく特に女性に対して提供されるあらゆる休暇は、妊娠や出産により女性が実際に職務を遂行できないなどの期間のみに限定されるべきである、さもなければ子供の養育に関する休暇申請に関して男性と女性で異なった対応をすることは性差別に基づく法律違反と見なされる。
妊娠・出産に伴う女性に対する差別・不利な待遇-ある特定の職務を行うことができない妊娠した従業員は、妊娠以外の原因で同様の制限を設けた他従業員と同等に扱われなければならない。例えば妊娠に伴う病気で仕事を休んだり、物を持ち上げる際の一時的な重量制限が必要となった妊娠中の従業員はそれ以外の理由により同様の制限を設けた従業員達と同等に扱われなければならない。
障害者に対する差別・不利な待遇-米国障害者法は障害者と関わる従業員を差別的に扱う事を禁止している。例えば求職者が父子家庭で障害ある子供の全面的な養育権があるからという理由で入社を拒否した場合、或いは介護責任が彼の出勤や職務態度にマイナスの影響を与えると結論付けた場合、この規定に違反していることになる。
報復-近年の最高裁判所の決定では、従業員が報復行為に関してAdverse Actionの申し立てをした場合、勝訴し易い傾向にある。従って、仮に従業
員が差別行為を受けたと告発しようとするのを雇用者が妨げるような行為をすれば、雇用者は法的な責任を問われることになる。新たなガイダンス
の中でのEEOCの見解は「部分的な弱者」と見なされる家族介護中の従業員のこのような基準に焦点が当てられている。例えば、スーパーバイザーの
部分的弱者に対する「このことは黙っていた方がいいと思う」などの言明は、職務に就いているシングルマザーを、深刻な介護責任のない同僚達と
比して、EEOCへ申し立てることを躊躇させてしまうことに繋がる。
EEOCのガイダンスでは、「家庭内責務に関する偏見は、今後より一層一般化する分野であり、従業員の介護責任に対し、どのように便宜を図るかという対処方法が求められる。」と雇用者に対し注意を促している。