ニュースレター

2014-07-01
Newsletter2014年7月号 連載 『第4回 なぜリーダーは不足しているのか?』
20世紀に大きく展開されたマネジメントに関する各種概念や理論はStatic(静的な)経営環境を前提に発展した。もちろん経営環境自体はいつの世も移り変わっているので、厳密にはStaticではない。

しかしながら、一つのビジネスモデルが30年くらいは通用し、企業の栄枯盛衰がそれなりの長期トレンドで推移していた環境と、今日の膨大な情報量と短いライフサイクルしか保てないテクノロジーによる入れ替わりの激しいDynamic(動的な)経営環境とを比較すると、少なくとも今の環境とは別物の感が強い。

このことは企業におけるリーダーにとって必要なスキルやリーダー開発の概念にも大きな影響を与えた。なぜなら現代においては、ある人がリーダーポジションについた時に、その人の経験や知識(ハードスキル)は最新の経営環境において判断を行うには不十分か時代遅れになっている可能性が高いからである。

一方で経験や知識のバックグラウンドで培われてきたソフトスキル(関係構築力、対人影響力、育成力、コーチング、メンタリング、プレゼンテーション)は適切な開発を行えば陳腐化することなく、むしろ経年的に向上することがわかっており、ハードとソフト両方のスキルを兼ね備えたリーダーを開発することが年々難しくなっている。

そうしたことを踏まえてか、「リーダー」という概念も従来の「一人の人材(個体)」を前提としたものから「複数によるチーム型・ネットワーク型」を前提としたものに変化してきている。例えば、ソフトスキルに長けた一人のリーダーが最新のスキル、専門性をもった他のリーダー達をつなぎ、プロデュースして優れたパフォーマンスを出していくといったケースのように。彼自身が傑出したカリスマリーダーであると世間から認知されていたスティーブ・ジョブズでさえもこう言っている。「クリエイティビティとは、いろんなものをつなげる、だけのことだ。(中略)自分の経験を『新しいもの』と『つなげ(connect)』、『組み合わせる(synthesize)』ことだ。」と。

つまり、ジョブズも含めてクリエイティブな人はその人個人がクリエイティブなのではなく、自分がリーダーとして自分と新しいものをつなぎ、組み合わせたところにクリエイティビティを産んでいるのだということである。

ハーバード大学内のジョイントベンチャーであるNPLIが行ったサーベイ結果によるとリーダーに求められる特性に今までと大きな変化があった。「欠くことのできない重要なリーダーシップの質」としてトップに上がったのは

第一位:「コラボレート(協働)する能力」第二位「組織の境界線を越えて人を率いる能力」第三位「行動を触媒させる能力」第四位「多種多様なステークホルダーを集める能力」であり、従来の「ビジョン」「責任感」「問題解決力」「カリスマ性」「品格」を上回ったのである。つまり、リーダーシップの要件も上下関係の中で個から個に向けて発揮されるものから、フラットな関係を前提に複数対複数の対話、コラボレーションという形で存在し始めているのだということが見て取れる。

以前、「団塊の世代が抜けた後、組織の中でのリーダーの数が不足するのではないか?」という懸念が議論された。これは昔の個体型リーダーとStaticな経営環境を前提にして、経験豊富な年齢層の絶対数が不足するからリーダーが足りなくなるという議論であり、現代の複数型・ネットワーク型リーダーとDynamicな経営環境にはそぐわない議論であることがわかる。

最新の議論は「チームでコラボしながら早くブレークスルーを起こしていくことができるリーダー『群』が自組織内の様々なレイヤ(階層)にどのくらい存在しているだろうか?」というものだ。シニアリーダーシップチームだけではない、ミドルにも、ジュニアにもこうした多様性に富んだコラボレーションが多数あり、それが新しいリーダーシップを持ったリーダー達によってドライブされているか?ということでもある。

ひとりの卓越したリーダーではなく、リーダー「群」なのである。こうした新しいタイプのリーダー群が、職場を離れた集合研修や学校の授業などでは開発されないことは容易に想像がつく。むしろ職場の人間関係の中でコラボしながらリアルな課題・ゴールを達成していくというライブな開発プログラム(Action Learning)でないと開発することはできないのだ。

まだまだ多くの企業がStaticな経営環境を前提にリーダーを「個」で開発しようとしている。だから多くの企業が新たなタイプのリーダー不在で勝てなくなっているか、どんどんリーダーが不足していき開発が追い付かないという事態に陥っているのだ。あなたは、新たな世代の「リーダー」たりえているだろうか?

COACH A Co., Ltd. (USA)
CEO 吉川 剛史

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