ニュースレター

2012-10-01
Newsletter 2012年10月号 人材確保が難しい職務の募集
今回のアメリカの大統領選では新しい雇用の創出に焦点が置かれている。皮肉なことに、高い失業率が続いている一方で、特定の職務の人材確保に苦戦している雇用主も少なくない。多くの人が職を探しているのに、なぜそれらのポジションを埋めるのが困難なのだろうか。また、どうすればそのような職務の人材をより効果的に獲得することができるだろうか。

専門家によると、最近の景気後退によって、求職者のスキルと雇用主が求めるスキルのギャップがより大きく広がったという。これには二つの理由が考えられる。まず一つに、求職者は労働力から外れている期間中、スキルを使ったり磨いたりする機会が無いため、それを鈍らせてしまう可能性があること。そのため、以前と同じような職務に復帰することが難しくなってしまう。2011年にラトガース大学が行った調査によると、失業者の60%は新しい仕事を見つけるまでに6ヶ月以上もかかり、44%は前の職務とは全く異なる仕事に就いている。

もう一つの理由は、景気後退によって仕事そのものの性質が変わっているということだ。経済的苦境を乗り越えるために、多くの雇用主は解雇や雇用凍結を行って従業員を削減した。そのため、解雇を免れた従業員たちは今まで以上の量と領域の任務や仕事を引き受けなければならなくなった。結果的に雇用主は、応募者を今までとは違う視点で見るようになった。今まで以上に沢山の仕事をこなせる人材を探すようになったのだ。このような変化に気づいていない応募者は、雇用主に「適切な人材」と思われない可能性がある。また、多くの応募者は雇用主の想定する以上の額の報酬を要求する傾向がある。そのため、応募者が雇用主の求める能力や特性を持っていたとしても、期待する報酬という点で両者にギャップが生じることも多い。

では、最も人材確保が難しい職務は何であろうか。ITは雇用主が人材獲得に苦戦する分野の一つである。ZoomInsightsが行ったアンケートによると、対象となったリクルーターの41%はITが最も人材確保が難しい職務であると答えた。続いて、エンジニアリングが28%、営業が19%、そして経理・財務が12%となっている。別の調査では、大工や配管工などの熟練を要する職業が一番確保しにくい職務と報告されているが、2位以降はIT、エンジニア、営業、会計と経理とほぼ同じである。

人材確保が難しいポジションを埋めるために雇用主は何が出来るだろうか。第一に、候補者を見つけるためのターゲット市場を知ることだ。実際、人材を探しにくい職務だから見つからないのではなく、雇用主が間違った市場を探しているから見つからないということも珍しくない。正しい市場で採用活動を行うためには、雇用主はまず募集する職務を注意深く吟味し、その職務を上手くこなすために必要な特質を考えてみなければならない。多くの採用責任者はこの作業を難しいと感じるので、それを行わずに従業員必要条件を記入する場合が多い。

募集する職務を吟味するためには、その職務に就いた者が定期的に行う任務、および必要に応じて行う任務をすべて特定しなければならない。直属の上下関係(上司や部下)も不明瞭ではならないし、学歴、スキル、経験に関する必要条件も明確に定義されていなければならない。理想的な候補者の特質を検討する際は、その職務においてどのような長所やコンピテンシー(高い業績を出す人の行動特性)が優先されるのかを理解しなければならない。それは組織能力だろうか。それともリーダーシップだろうか。あるいは戦略的思考や他の特性だろうか。これらの情報が正確に明記された文書は、リクルーターや人材紹介業者など募集活動を行う担当者にとって多いに役立つ。なぜなら、その職務に相応しい理想的な候補者を見つけるのに最も適した市場を特定するのに役立つからだ。

あなたが管理職に就いたばかりでも、最近アメリカに管理者として赴任して来たばかりでも、上記のように募集する職務に相応しい人物の特性を特定する作業を正しく行うことは難しいかもしれない。そのため、その職務について人事管理部と徹底的に話し合い、募集過程の最初の段階において上記で述べたプロセスを共同で取り組むことが重要である。そして職務について出来るだけ詳細情報を提供し、誰かに確認しておきたい事項があれば前もってすること。また、職務を候補者に合わせて後から調節しよう、と考えて面接まで待たないこと。その職務について、そしてそれに就く人物に期待されることについて明確かつ詳細に理解しておけば、例え人材確保が難しい職務であっても、出来るだけ短い期間に出来るだけ適切な人物を採用できる可能性が高くなるはずだ。

ダンカン・エルダー
duncan.elder@globalbridgehr.com

記事提供:GlobalBridgeHR