ニュースレター

2021-02-24
給与の支払いは必要でしょうか?
先週、全米各地を大寒波が襲いました。寒波で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますと共に、現在も水道管破裂などの影響で、元の生活に戻ることのできていない方もいらっしゃいますので、一刻も早い復旧を願っております。今回は、寒波に対する備えが十分ではない南部地域で、特に大きな被害が出ており、私が住んでいる地域も約2日半の停電が続き、弊社ダラスオフィスでも停電が発生している旨の連絡がありました。そして、お客様からこのようなご質問を頂きました。

「寒波でオフィスをクローズしたのですが、従業員への給与の支払いは必要でしょうか?」

毎年のように寒波の影響がある地域では、よく聞かれる質問で、以前に少しお話をさせて頂いたこともあるのですが、南部地域で寒波に関連してご質問を頂いたのは初めてでした。このご質問にお答えする時には、必ず、何点かお客様に確認をさせて頂くのですが、その大きな理由はエグゼンプト従業員かノンエグゼンプト従業員かで答えが全く違ってくるからです。

まず、エグゼンプト従業員の場合は、ほとんどのケースで、満額の給与の支払いが必要です。今回の寒波の場合は月曜日の早朝から停電になっていた地域が多いと思うのですが、万が一、月曜日に出勤してから、オフィスが停電になり、早めに帰宅させたケースはもちろんのこと、週5日勤務の予定が2日間になってしまった場合でも、満額の週給が支払われます。今回の寒波のケースでも、私の地域では、月曜日に始まった停電が水曜日の昼頃に完全に復旧しましたので、その週は木曜日と金曜日のほぼ2日の勤務になる訳ですが、エグゼンプト従業員であれば、満額の給与支払いとなります。但し、例外として、寒波でまる1週間会社が休業し、エグゼンプト従業員が当該の1週間、全く仕事を行わない場合は、エグゼンプト従業員に対して給与を支払う必要はありません。

次にノンエグゼンプト従業員についてですが、ノンエグゼンプト従業員はFLSA(The Fair Labor Standards Act) = 公正労働基準法の規定があり、雇用主がノンエグゼンプト従業員に対しての給与支払いが求められるのは、合計実働時間(Hours Worked)に対してです。ですので、今回のように寒波によって会社が数日休業した場合や、一時、勤務はできたものの、通常の営業時間よりも早く業務を終了した場合、勤務がない期間の給与の支払いを従業員が求めることはできません。ですが、州によってはReporting time payが定められており、ノンエグゼンプト従業員への給与支払いが必要になるケースもあります。

☆Reporting time pay: 別名Show-up time。雇用主がノンエグゼンプト従業員に対して休業などの案内を適切に行わなかったことにより、従業員が出勤。遂行できる業務がなかったり、帰宅を促され、勤務が発生しない場合にも給与の一部を支払うことが保証される。

注意点としまして、上述しましたのは一般的なルールですので、Collective Bargaining Agreement(雇用主と労働組合の間で締結される労働協約)の内容によっては、従業員に対して最低保証給与額の支払いが雇用主に求められるケースもあります。また、ルール上は従業員に対しての給与の支払い義務はないものの、従業員の生活面のことも考慮して、雇用主が給与を支払うケースもお聞きします。

私自身、南部地域でこのような災害が起きるとは想像しておりませんでした。メディアでは、今後このようなことが起きた場合の備えについての議論も見受けられますが、ほとんどがインフラメンテナンスや緊急用の備蓄についてです。雇用主にとっても、もちろん、そのような備えも大事なのですが、もはや万が一とも呼べなくなった寒波やその他の災害に対応するべく、雇用主・HR担当としての備えであるポリシー作成やノンエグゼンプト従業員・エグゼンプト従業員の区分についても議論しておくべきかもしれません。