ニュースレター

2011-01-01
Newsletter 2011年1,2月号 妊娠者に対する差別
Equal Employment Opportunity Commission (EEOC:雇用機会均等委員会 )の統計では、妊娠に絡む差別で雇用主が告発された件数は、2000年から2010年の間に50%近く上昇している。実際の妊娠差別に関する告発件数は、人種や性別に関する差別に比べるとはるかに少ないものの、雇用主はこういったクレームを避けるためにも、妊娠に関する規定をしっかりと理解しておくべきである。

職場での妊娠差別をカバーする主要連邦法にはPregnancy Discrimination Act (PDA:妊娠差別法)があるが、一方でTitle VII of the Civil Rights Act of 1964(公民権法第七条)への修正案は特に妊娠・出産或いはそれに関連する状況にある女性の保護に適用される。また妊娠した従業員は、Americans With Disabilities Act (ADA:米国障害者保護法)、Family and Medical Leave Act (FMLA:家族・医療休職法)、及び州法(存在する場合は)でも保護されている。

雇用主にとって特に重要なのは、州法が存在する場合、その法律が連邦法といかに相互に影響しあうのか、または連邦法に加えて追加のベネフィットがあるのかを理解することである。例えば、妊娠を保護するカリフォルニア州の規定にはPregnancy Disability Leave (PDL:妊娠障害休職)がある。このPDLは従業員に対してより寛大なベネフィットを提供し、従業員数が5名以上の雇用主に適用される。

カリフォルニア州のPDLに比べると、連邦のPDAは従業員数15名以上の雇用主に適用される。 これは雇用主が妊娠を理由にして従業員を解雇することを禁止している。またこの法律は、今まで通り勤務ができなくなった妊娠中の従業員を、身体的障害が理由で求職せざるを得ない他の従業員と同様に扱うよう雇用主に義務付けている。FMLAは、半径75マイル以内に少なくとも50名の社員がいる雇用主で、また妊娠中の従業員が少なくとも勤続1年で前年に最低1,250時間勤務している場合に適用される。この法律では雇用主に対して妊娠している従業員に出産に関連して最大で12週間無給で休職を許可することを義務付けている。

PDAのもとでは、雇用主は妊婦である事、妊娠に関連した状況、または同僚・顧客の偏見を理由に、妊娠中の女性の採用を拒否したり不利な雇用体系を執ることはできない。裁判所の判決は、胎児に悪影響を及ぼすであろうと思われるからという理由で、雇用主が妊娠している従業員の勤務の妨げを試みることができないことを証言している。多くの雇用主にとっては理解し難いことかもしれないが、雇用主が妊娠している従業員の安全のため、従業員が勤務しないで済むように配慮する事が訴訟の一歩になり得るのである。他の職場での便宜同様、雇用主は従業員からの申し出を待って対処するべきである。従業員が職務遂行可能かどうかを判断する適切なガイドラインは、マネージャーの解釈ではなく、(医師の診断書などの)医療関連書類を基にすることである。

下記は従業員の妊娠に関して雇用主が考慮するべき幾つかのガイドラインである:

1. 多くの州で追加の休職に関する規定が存在することから、雇用主は連邦法と州法がどのように影響を及ぼすのかについて知っておくべきである。

2. 雇用主は休職規程について明確に理解するべきであり、全てのマネージャーに対して、いかに従業員に便宜を図るかについてトレーニングをするべきである。法律では義務付けられていないが、雇用主が独自に持っている特別な休職規程が存在する場合は、妊娠している従業員がそのような休職を取る事ができる状況にあるかを確実にしておくべきである。

3. 雇用主は性的差別の無い“parenting” leave policy(育児休職規程)を持っておくべきである。男性と女性それぞれの規程を設け、女性が育児を担当するものという仮定はよくある誤りである。そのような規程は差別的だとみなされてしまう可能性がある。

4. 従業員がいかに“大きい”か、または出産予定日について質問することなど、雇用主は妊娠している従業員に対する不適切な発言に配慮するべきである。しかし、更に危険なことは、マネージャーが出産後に従業員は職場復帰をしないであろうと仮定してしまうことである。

記事提供:HRM Partners, Inc.