2007-02-20
「経済は女が回している」という話を聞いたのはいつだったでしょうか?
もう随分前で正確には忘れてしまいましたが、大学卒業後、入社した会社での会議の席で上司が訓示を垂れた時だと思います。その頃私は住設機器メーカーのマーケティング部にいて、「どうしたらキッチンやバスがもっと売れるか」、「購買決定権を持つのは誰か」という話の時だったと思いますが、その時上司が「最終購買決定者は主婦だ」と言った時、マーケティング部にいた男性社員(9割以上が男性でしたが)は驚いた様子で、その驚いた様子を見て逆に私は少し驚いたのを覚えています。
例えばバスルームのリフォームをする時など、大きさや商品のランクにもよりますが、大体200万~500万円ほどかかります。そんな時、最初の予算幅についてはご主人も意見を出しますが、最終的に色や柄、形を決め最終金額を取りまとめ、発注する段階になると、奥様が最終決定権を持つことが圧倒的に多いんですね。キッチンやトイレ、バスルームなどはおそらく日本の家庭ではまだまだ女性が使用、掃除することが圧倒的に多いと思いますし、そういった理由も関係しているとは思いますが、それにしてもそんな高額商品の購入決定権を主婦が持っているということにマーケ部の男性社員は驚き、その後は、「じゃあ商品開発にはもっと女性を投入しよう」とか、「ショールームでの接客には若いだけのアドバイザーでなく、実際の主婦のプロを採用しよう」とか、「いやそれよりも逆に若い男性ショールームスタッフを入れた方が受けがいいかも」とか、何かと「女性」を意識した話で盛り上がったのを覚えています。
もちろん「経済は女が回している」と言っても、全ての業界の全商品について言える訳ではありませんが、それでも日常的生活商品について言うとやはり「女性」によることが圧倒的に多いと思えます。例えば化粧品(メイク、ヘア、ネイル、基礎化粧品)、アクセサリー、小物、下着、洋服などはまず女性がマーケットのメインを占めますし、また飲食店についても、メニューや内装、テーマなど、まず基本的には女性が喜ぶように作ってあるものです。そういう店には女性が行きたがりますし、女性が集まるところには男性も集まります。女性にはNo Chargeにしておいて女性客を増やすことで、男性客の入りを増やす方法はその一つですが、その逆のパターンは見かけませんね。
また「経済は女が回している」という点で面白いのは、女性は自分のためによく消費しますが、男性は女性のための消費と、女性に「認可」を得てからの消費が多いという図式でしょうか。もちろん女性も男性に対して値の張るプレゼントを準備することもあるでしょうが、やはり日米関係なく、男性から女性へが多いですね。つまり男性は女性のためにお金を使う。それがモノであれ、食事であれ、観劇であれ、男性は女性のためにお金を消費することが多い。逆に女性は自分の身の回りや趣味のためにお金を使うことが多い、つまり自分に使う。ということは、男性は女性にお金を使い、女性は自分にお金を使う訳です。
また女性に「認可」を得てからの消費というのは、例えばご主人が痔を患っていてウォシュレットが欲しいと思っていたとします。でも奥様は「そんなもの勿体無い、贅沢品だわ!」と反対している間はなかなか買えない。でも例えばそのウォシュレットに便器の自動洗浄機能なんかがついていて「奥様の掃除の手間が省けます」なんてうたい文句が書いてあったりすると、「これいいわねぇ」ということになる。ご主人は自分ひとりの意見では購入し難い物でも、奥様の「認可」があるとそれが良い言い訳になって買いやすくなるんですね。そうやって女性を中心にお金が回り、経済が回る。だから実は「経済は女が中心なんだ」と。
話は少し変わって、先週はバレンタインでしたから、男性はお花を贈ったり、ジュエリーをプレゼントしたりしていたようですね。ただ皮肉なことにクリスマスやバレンタインの後は、返品の客が多くてデパートなどは大変忙しいそうです。そして返品に来るのはたいてい女性の客(笑)。男性諸君。大変だなぁ。。。と思いつつ、これはきっと大昔から変わらない図式なのだろうなとも思います。きっと大昔は、いかに大きな獲物を狩ってくるかが男性の評価だったのであって、女性はそれに惹かれたのであり、女性に気に入られるまで男性は頑張ったんだろうなと。
時々、電車に乗っている時、前に座った少し大きな年配の女性が足を大きく開いて座っている隣で、ご主人とおぼしき男性が女性の髪を撫でていたりして、ふと女性の手元を見ると「ビクトリアシークレット」の紙袋なんかを持っていたりすると、「あ~、きっとこの男性が買ってあげたんだろうな」と微笑ましくなります。まぁ、今時「男が」「女が」と言うこと自体が陳腐とされるご時世ではありますが、やはり経済は女が回しているというのは案外正しいのかなと思います。
高橋