2009-10-27
私は知らない人に道や場所を訊かれる事が多い、と思う。こんなものに統計などないだろうし他人と比較も出来ないが、まず少なくは無いはずだ。週に2-3回、多いときは1日に3回くらい訊かれる。(え少ないと思った方、多過ぎです。)
そして思う。「なぜ私に訊くのだろう」と。何か訊ねても拒否し無さそうな雰囲気を醸し出しているのだろうか。良く言えば優しそう、悪く言えばスキだらけ、そんな様子なのだろうか。嬉しくは無い。さらに思う。アメリカという地で100%外見がアジア人の私を、無数の候補者の中から何故選ぶのだろうか。私が日本で道に迷った時、外見が日本人っぽくない人に声を掛ける事はまず無い。何故私に?言うまでも無く答えは出ない。
約1ヶ月のご無沙汰です。ボストンオフィスの木村です。
オバマ大統領の支持率は、ノーベル賞受賞後もじりじり下がり、5割前後を推移しているようである。進まない健康保険問題やアフガンでの軍の進退などがその要因として挙げられることが多いが、ぶっちゃけたところ「私の生活は全然良くなってないんですけど」という人々の我慢が限界になってきたという事だろう。長い時間を掛けて改善されずに蓄積されていった諸問題が昨年後半に大爆発を起こし世界中に被害が広がったわけだが、長時間掛けて醸成された膿を、治療するだけでもやっぱりかなりの時間を要するだろうな、と思うのは聞き分けがよすぎるだろうか。
実際オバマ大統領も当選演説や就任演説において、「国民の忍耐が必要である」と何度も何度も繰り返していたと記憶しているが、国民の皆さんはそんな事すっかり忘れているのか、それとも元々耳に入っていないのか、とにかく忍耐できない状況になっている様子である。
ある日系メディアによる、今年1月の大統領就任演説レポートを思い出す。式終了後参加者達が帰路に着く際、公園などの立ち入り禁止場所も構わず侵入し、芝や木は荒らされ、式会場とその周辺はゴミで溢れていたそうである。レポートの記者は、「自分は何も変わらなくても、オバマというスーパーヒーローが助けてくれると支持者達は思っているのではないか」とその惨状を見ながら感じ、「この国の将来は明るくないかもしれない」と締めていた。
オバマ大統領は内政の他、アメリカドル体制を死守すべく日夜各国と死闘を繰り広げている。イラン核開発問題もロシアMD問題も普天間基地移転問題も、勿論中東石油問題も最終的にはドル体制が続くのか崩れるのかに行き着く。たとえ公的保険導入が見送られてたとしても、それが今すぐアメリカの崩壊に繋がる可能性は低い。しかしアメリカドル体制が崩壊したら、ある一国の通貨に成り下がったら、慢性的貿易赤字を誇るこの国は瀕死の状態となってしまうわけである。アメリカドル国債は紙屑となるし、世界中の工場は「世界の購買者」を失う事となる。
そんな事をつらつらだらだらと考えながら、天才的な頭脳も無く鋼の肉体を持つわけでもない私のような人間は、どうしたらいいのだろうかと途方に暮れたりする。ただ絶望するのか、それとも無為にポジティブであり続けるべきなのだろうか。そんな不安定な精神状態をふっと救ってくれたのが、吉田健一という英文学者・評論家による言葉だった。
戦争に反対する唯一の手段は
各自の生活を美しくして
それに執着することである
別の言葉で表現するなら、「素晴らしい」と発する機会を増やす事、かもしれない。
『王様のレストラン』必見です。