この絵、素敵じゃないですか?
これはプロの画家の作品ではありません。
Iris Graceちゃんという5歳の女の子が描いた絵です。
Irisちゃんは自閉症という世界に生きている女の子です。
自閉症-先天的な脳の発達障害で、先天的なものだそうですが、発症の原因はいまだに解明されていなく、症状の重度も人によって様々。コミュニケーションがうまくとれない、言葉を操ることが困難、まわりの世界に無関心、自分のやり方に異様なこだわりがある、といった症状。必ずしも知的障害が伴うわけではなく、そうそう、その昔、Rainmanという映画がありましたが、あのコミュニケーション障害を持つ主人公のRaymondが突出した記憶力を持っていたように、音楽や絵、数字、語学などで何か突出した才能を持つ場合もあり、サヴァン症候群と呼ばれている症状ですね。自閉症が必ずしもサヴァン症候群を併発するわけではありませんが、Irisちゃんはきっと、色を感じることに私たちの何万倍もの感度を持っているんだろうな、と彼女の絵を見て感じぜずにはいられません。
私たちは、言葉、というツールを使って、全ての行動を形にしていると思いませんか?声を発する、発しないとは関係なく、心の中でも常に言葉を使って物事を感じ、物事を判断し、自分ともまわりともコミュニケーションを取り、言葉を使って生きているのではないでしょうか。でも、言葉にならない感情もたくさんありますよね。私は、その言葉にならない感情が生まれる瞬間をとても愛しています。言葉では表現できない大きな感情で体中がいっぱいになると、時間が一瞬止まるような感じがします。音楽だったり、絵だったり、彫刻だったり、小説だったり、映画だったり、誰かと出会うことだったり、何かの景色や情景だったり、その瞬間を引きおこす要因は様々ですが、敢えて言葉で表現するとすると、私が超越した美を感じる瞬間なんだと思われ、背骨にそって一本のイマジナリーな弦があって、その瞬間に出会った時は、その弦がはじかれてとっても素敵な振動がとっても素敵な音と一緒に体中に広がる感じがするんです。その瞬間を探し続けて毎日を過ごしているようなものです。
言葉なくしては私たちの生活は成り立たないですが、言葉を持っているがために、何かが制限されることもあるのではないかと思うこともあります。だめ、NO、できない、っていうネガティブな言葉たちですね。もちろん、言葉が私たちを勇気づけ、背中を押して行動させ、思考を整理し形にし、技術、能力を発達させてくれるのですから、ナンダカトハサミは使いよう、ではないですが、使いかた次第ではあるものの、Irisちゃんの絵を見ると、自閉症、という言葉でこの子の世界を表現するのは大きな間違いなんじゃないかと思えてなりません。言葉をツールとしないIrisちゃんの世界は、私たちが知りえる以上に大きな大きな世界なんじゃないかと。
私も多少、コミュニケーション障害を持っているタイプです。障害とまではいきませんし、脳もある程度正常に機能していると思われ、シタガッテ心の方のことなんだと思いますが、まわりとのつながりを求めることにとてもたくさんの努力を必要とします。根本的に言葉を口にすることに恐怖心があります。だから、なんでもなく誰とでも楽しそうに会話ができる人たちがとてもうらやましくてたまりません。
その一方で言葉を持たない世界に住むIrisちゃんの一瞬一瞬はどんな世界なんだろう、とIrisちゃんの絵を見て心惹かれるのも確かです。こんな風に世界を見ることができるIrisちゃんが少しうらやましいです。多かれ少なかれ、みんなそうですよね。だから、芸術が世の中に存在するわけで。
Irisちゃんのお話しには、セラピーキャットが実は一役かっており、(冒頭の絵、Raining Catsというタイトルです。)このThulaという猫ちゃんとIrisちゃんの絆のお話しに心温まる思いをすること間違いありませんから(猫好きの方なら絶対!)、これ https://vimeo.com/117709009 、是非見てください。
当然私は猫好きで、2匹の猫と一緒に暮らしています。
そして、クリムトも、マチスもピカソも、クレーも、ウォーホールも、そしてフレディー・マーキュリーも猫が大好きでした。村上春樹も猫好きです。So what? 確かに。でも、猫は奥が深いんです。猫のお話しはまた今度。
((大矢))